2004年頭の挨拶などを聞くと、印刷会社の経営幹部の方で、需要がわからないとか、需要が見えないという話題が多い。これは印刷業界では、まだ前年比で売上や利益が下がっている会社が多いからだろう。一方で大企業はリストラで持ち直したところが多くなって、日本の景気回復かともいわれる。中小企業でも近年はパートさんやアルバイトの雇用が多くなり、正社員はリストラするほど人材がいなくなって、あとは管理者以上が出て行くしかないほどである。
国内の消費がそれほどなくなったわけではなく、例えば「漫画→ケイタイ」のような需要のシフトが起こっているので、変容する市場に合うように自分が変われないところは需要が減ったと感じざるを得ない。中小企業は需要の変化に応じて企業の入れ替わりが起こって、業界自身が新陳代謝するという構造なのであり、それが社会そのものを柔軟に変化できるようにしているという役目にもなっている。
つまり時代が変化しつづけるということは、それぞれの時代が、変わりゆく市場に対応できる中小企業経営者を求めていることでもあるのだ。これは経営者だけの問題ではない。次期に経営スタッフになる人も、これから管理者になろうとしている人も、皆同じことが求められているのである。自分の専門スキルの向上の目標とともに、併せて時代への適合を自分自身で訓練しておく必要がある。特に個人的に意識をもっておくことは重要だ。
今日のIT化というのも突然始まったものではない。1970年代末から1980年代初めのパソコンの創世記に、学生なり新入社員であったけれども、自力で夢中でパソコンに取り組んだ人が、今のIT関連企業の経営陣になっているし、ユーザー側の企業でも経営陣に加わっている。印刷会社でも近年そのような世代の人が新社長になる例が増えた結果、社内のIT化など今日的な課題に取り組むことが出来たところは、長年の努力は実ったといえる。
そして1990年代後半からのインターネットというところに多くのベンチャーが現われた。しかしパソコンの黎明期がそうであったように、新しく開ける世界でビジネスの成功は長続きできない。パソコン関係の企業で20年も継続した例はあまりないのだが、その世界で企業から企業に泳ぎわたりつつ技術動向をつかむコツを知り、業界人脈を築き、経営センスを磨いてきたことに、あるいはそういう人たちと親交を深められたことで、そこに自分の身をおいた意味が生まれる。
今のネット企業もそれ自身が金のなる木として確立していないから、興味を持って調べられないとか、付き合っても得がないと判断したら、将来淘汰される人になってしまうだろう。技術、人脈、経営センス、その他の総合的な知恵の源泉として、真剣に新たなビジネスに取り組んでいる人とその労苦を分かち合うことに意味があり、それは自分の将来の足しになるとは間違いがない。
もっともそういう苦労をする余裕はないという人もいるだろう。それは精神的な「老い」である。ITでビジネスが変わって、それが自分達にもよいことをもたらすのでは、というように未来に夢を持つ若い経営センスが必要なのだ。そういうセンスをもった経営陣が多い業界が伸びる業界であるともいえる。印刷業界も代替わりした新しい経営者・経営陣が多くいることは希望を持てる点である。また印刷の周囲には多くのメディアビジネスがあり、そこには共に将来を託して親交を持つべき人々が多くいることも幸運である。
PAGE2004の基調講演では、クロスメディア型ビジネスモデルのダイナミズムの渦中で活躍する当事者たちの語り合いがあり、彼らがどのようにメディアビジネスを考え、今後どのような変化があると見ているのかを知るよい機会である。またPAGE2004の展示やジョイントイベントにおいても、クロスメディア型ビジネスのチャレンジャーに接する機会は多くある。ぜひこの時代を新鮮な目で見直すために、PAGE2004のプログラムを利用していただきたい。
2004/01/20 00:00:00