本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

変容する市場が、あなたを置き去りにする

将来にわたって、アナログの世界で、あるいはリアルワールドでビジネスをしていくことも、装置産業としてビジネスすることも、他社では代替出来ない独自の強ささえもっていれば可能である。しかし不変の強さをもった会社は希で、多くの会社は顧客の行動を自力でコントロールすることはできず、市場の振る舞いが変容すれば、それ合わせたビジネスにしないと退潮になってしまう。しかし自分のビジネスに関しては、このことは見え難いのである。

自社の営業マンが通っている世界に大きな変化が見えないとしても、実は営業マンに関係ないところで新たな市場が動き出している。文具店が会社の総務に注文を聞きにいくことは変わらなくても、総務の先のオフィスの人々がインターネットで文具を直接注文しているかもしれない。文具自体は昔からあるものでも、ビジネスモデルは全く変わったものとなった。特にOA関係の消耗品は、自分の使っているものの消耗品の型番が何かを調べることが最大の問題なので、そういったサポートにもインターネットは向いている。

また利用者の会社の総務を通して購買すると、意思疎通や時間のずれが生じるが、利用者自身が直接アクセスできることで、総務の負担や在庫が減るだけでなく、利用者の仕事とリンクして調達できるというところに新たな価値がある。アスクルは広くオフィスに浸透したが、当初は配達が「明日来る」をコンセプトにしていたのが、今では「今日来る」サービスもあるほどで、また扱い品目やサービスも進化している。
書籍のamazon、楽天、その他さまざまなビジネスがインターネット上で活躍し、大きな存在になっているが、リアルワールドのビジネスとの直接対決ではない。しかし長い目で見ると、市場を喰い合う関係になる。まだインターネットは影響ないと考えている間に、発注者の行動形態が変わっていき、それに合わせたビジネスが出来ないところは市場から置き去りにされる。

印刷はそのような電子調達にならないのだろうか? 過去に印刷のECモデルはいくつもあったが、それらは既存の印刷営業/印刷ブローカーがネット上で仕事をしようとして開設したもので、そもそも印刷物が必要な人の側から作られたものではなかった。つまり市場の変容とは関係なく試みられたものもある。
では市場はどう変容しているのだろうか? さまざまな事務処理やコミュニケーションがインターネットをインフラとして行われるので、電話よりもFAXよりも、ブラウザで調べられるものが優先的に人の目に映るようになっているのである。既にオンラインで販売や調達もしている会社はたくさんあり、増えていく。その人達に、営業マンレスでどのように営業するつもりですか?

ネットワークを使ってビジネスをする人たちが、ネットワーク上で印刷も含めた調達を、自分の仕事の流れにシンクロした形で求めている。営業マンの来訪によって自分の仕事の邪魔されたくないと考える人すらいる。総務や購買の人は営業マンに合うのが仕事であるが、オフィスの中心部で印刷物を必要としている当事者には、営業マンはなかなか会えないのである。
だから印刷のECとは、そのような印刷の真のユーザとどのように、どのような関係を築くかを解決する方法でなければならない。今後ともライバルの営業マンと得意先でバッティングすることはあるだろうが、それだけが競争なのではなく、もしこのことに注意を払わないと、あなたではない誰か別の人がそこにソリューションを提案して、市場の行動を変えてしまい、あなたは置き去りにされるかもしれないのである。

市場の変容を考えることを、PAGE2004では、【A1】セッション変容する市場とビジネスモデルの再定義でとりあげ、印刷発注者側の内部で起こっている変化については、【A3】セッション製品情報の統合活用とクロスメディアでとりあげる。また、印刷の受発注がどのようにネットワーク上で動いているかについては、【D6】セッション印刷ECの本番に備えてでとりあげる。ネットワークを前提にしたビジネスや、印刷の新規開拓をネットワークで行う戦略は、すでに差し迫った課題なのである。大企業の電子調達だけでなく、サービス業のオンライン取引という見え難いといころに、中小企業のこれからのヒントが数多くある。

関連記事 信頼を確立できるところで、ビジネスは成長する

2004/01/29 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会