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人に喜んでもらえるモノ作りをしたい

◆田中 宏美

DTPとの出合いは4年前,私が新入社員として某不動産会社に入社したことから始まります。
配属された課というのは,唯一Illustratorを使用し,複数の図面作成業者より上がってくる賃貸図面を統一の規格に補正して,全国の支店へ送付するといった業務を受け持っていました。
しかし,いざ賃貸図面が完成した段階で,支店からは「ここの配置図をもう少し詳しく記載してもらいたいなあ」「実際の物件と若干違うところがあるんだけど……」などと,修正を余儀なくされることが多々発生します。
当初はすべて図面作成業者へ再作成の依頼をお願いしていたのですが,やはりどうしても時間とコストが掛かるため,「よし,可能な限り自分でやってみよう!」と。そして,Illustratorのマニュアル本を片手に,賃貸図面と格闘する日々が続いていました。

そのような折,ふと書店のコーナーで目に留まったのが,「DTPエキスパート」という資格対策の本でした。いずれはきちんとした形で一からDTPについて勉強をしたいと考えていたため,決断してからは資格取得に向けて一気に時間が流れていった気がします。
通常の業務ではWindowsしか触れていなかったこともあり,専門学校に通学しMacの基礎的な操作方法から学んでいきました。まさしく悪戦苦闘といった言葉とは,このような状態!というほどでした。エラーが起こると強制終了も間々ならない状態でしたし,そして何より試験対策の参考書をめくってみると,異業種に勤めている私にとって聞いたことのない言葉のオンパレード……。「印刷のプロの方々も受験する資格に果たして合格できるのだろうか……」と不安の毎日でした。
そこで,逆にその不安を払拭(ふっしょく)するには自信がもてるように勉強するしかない!と逆転の発想です。会社の勤務を終了してから専門学校の授業のある日はそのまま直行し,それ以外の日は駅の近くのコーヒーショップで,筆記試験対策の参考書を繰り返し読むといった日々を続けました。学生時代の懐かしい感覚が頭の片隅をよぎります。
正直なところ会社での勤務を終了してから専門学校に通うことは,体力的につらい時もありました。しかし,勉強していく上で日々新たな発見があること,そして少しずつではありましたが,自分の技術が向上していると実感できたことに関しての喜びこそが,半年間という通学期間を乗り切れた一番の要因だと思います。
そして念願の「DTPエキスパート合格!」。震える手でHP上に自分の受験番号と名前を発見した時は,「感激」という二文字では片付けられないほどのうれしさでした。大きなハードルを越えたことに対する達成感,そしてご指導いただいた先生方にただひたすら感謝・感謝・感謝……。

「DTPエキスパート」を取得した後は,仕事で大きく変わることはありませんでしたが,実際の業務において,ほとんど賃貸図面修正が可能になったこと,そして何より間接的ではあるにしろ印刷物に関わっていることに対しての責任を重要に受け止めるようになったことがあります。また,資格の名前に恥じない印刷物を作りたいといった精神面での変化が,一番大きく変わったことだと思います。
現在は,昨年11月に勤めていた不動産会社を退職し,もう少しDTPに関して勉強するために奮闘しています。決して「DTPエキスパート」の取得で終了とするのではなく,「せっかく取得したのだから,学んだ技術・知識に今度は経験をプラスして何かを残したい!」という欲が生まれたからです。
今となっては,あくまで「DTPエキスパート」の取得は通過点と考えています。いずれ将来的には印刷・出版関係に携わることで,多くの人に喜んでいただけるようなモノ作りをしていきたいと考えています。まだ行く先もぼんやりとしか見えない状態で,まさしく手探りの状態なのですが,今まで行ってきたことの一つひとつを大切な土台にして,恐れることなく次の一歩を踏み出していきたいです。

最後に,現在の趣味としてストリートダンスを習っています。めまぐるしく進化し続けるDTPの分野に追いていかれないように技術だけではなく,日々創造力と感性を研ぎ澄ますことも,もちろん忘れずにということで……。

 

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2004年2月号


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2004/02/04 00:00:00


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