本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

「郵便産業」の新たな展開へ

日本郵政公社は,JAGAT,日本ダイレクト・メール協会,日本メーリングサービス協会と協力し,DMビジネスショー「ポスタルフォーラム2004」を2月4〜6日,サンシャインシティコンベンションセンターTOKYOで,JAGAT主催の「PAGE2004」と同時開催する。
ポスタルフォーラムの開催に当たって,日本郵政公社(『JAGAT info』2003年11月号特別企画「郵便のフレキシビリティとDMの可能性」)と日本ダイレクト・メール協会(12月号経営情報「「DMは経費ではない,投資である」)に,DMの可能性などを伺った。今回は日本メーリングサービス協会の渡辺順彦会長に,メーリングサービスの現状と今後の課題などを伺った。

有限責任中間法人として新たにスタート
日本メーリングサービス協会(JMSA)は,1985年7月,メーリングサービス業に携わる専門業者の親睦団体として発足。1988年8月,郵便利用の急激な伸びと会員数の増加などによって現協会名に改称。2003年4月より有限責任中間法人として新たにスタートした。「郵便事業運営の円滑化・効率化に協力することで,郵便利用の量的な拡大をはかり,併せてメーリングサービス業界の健全な発展に寄与すること」を目的として,各委員会を中心に活発な活動を展開している。現在の会員数は223社,郵便発送代行会社,郵便物の輸送関連会社,メーリング機器製造・販売会社,DM作成会社,郵便発送用データを処理するソフト会社などで構成されている。会員扱いの郵便物数は約120億通で,日本全体の郵便物の約半数を扱っている。
JMSAの具体的な活動としては,総務委員会,広報委員会,郵便委員会,教育研修委員会,メーリングIT委員会,環境委員会などの8つの委員会をとおして情報提供を行っている。郵便利用の活性化・安定化への取り組み,メーリングアドバイザー資格制度の運営,環境問題への対応,機関誌「メーリングニュース」刊行などによる広報活動の展開,国際化への対応などを行っている。
日本郵政公社の設立と時を同じくして中間法人設立となったことで,今後,郵政公社,郵便局との協業や新たなアライアンス(連携)などの局面が増えることが予想される。また,中間法人という事業を進めやすい形態になったことで,業界の利益を追求する活動を一層活発に行い,収益事業にも積極的に取り組みたいという。
ポスタルフォーラムには従来から出展社として関わってきたが,今回初めて主催者側となってジョイントできることに大きな期待を寄せている。

「郵便産業」発展のためのパートナー
JMSAと同様の団体である,アメリカのMFSA(Mailing & Fulfillment Service Association)は,米国郵政庁(USPS)との緊密な連携の下,プリソート(郵便区分機)オペレーションを始め,郵便局内作業から郵便物のロジスティック,さらにNCOA(宛先住所移転情報)などデータベースの処理に至るまで受託するアウトソーシングが進んでいる。こうしたワークシェアリングの強化によって,郵便事業の効率化を図っている。さらに,メーリング産業特別部会を発足させ,IT化の進展に伴う郵便事業への影響や将来展望を検討,戦略策定を共同で行っている。
かねてよりMFSAをビジネスモデルとしてきたJMSAでは,日本郵政公社との間で同じような関係を築きたいと考えている。現状では郵便の差し出し協力や実務の情報交換程度にとどまっているが,今後は郵便局の局内作業のアウトソーシング,資材の共通化・共同購入,郵便局の空きスペースの運用など,多くの郵便事業の効率化施策に一体となって協力,成果を上げられることは数多くあるのではないか。
単に郵便物の処理という狭い枠にとらわれずに,アメリカのようにメーリングサービス事業から,マーケティング,DM作成,顧客データ管理などのトータルビジネスとしての「郵便産業」という広い視点から,いかに郵便利用を拡大・発展させていくかを,パートナーとしてともに考えていきたいという。

さらなる活動の活発化のために収益事業を準備
JMSAがこれまで行ってきた委員会活動は,関係業界や会員各社に高く評価されている。
郵便利用のシステムとメーリング業務の専門知識を修得した社員を有する会社は,顧客の信頼を一層高めることになる。JMSAとして,そうしたメーリングサービスビジネスのプロフェッショナルを育成し,資格の認定をするのが,メーリングアドバイザー資格制度である。30時間の講座で,郵便の効果的な利用方法,郵便のメリット,顧客のデータ処理,郵便需要の掘り起こしなどについてのアドバイスが行われる。2003年7月開講の第6期資格取得講座には過去最多の56名が参加した。なお,JMSAのホームページには1期生から6期生まで300名に及ぶ資格者のリストが掲載されている(http://www.jmsa.gr.jp/)。
郵便委員会のブロック部会による各地域別開催も,当局との郵便実務意見交換会として恒例化されている。さらに環境問題への地道なPR活動や,「メーリングサービス」の配布先が,50号より,会員だけでなく,日本郵政公社関係先と主要集配郵便局3500局に配布されることとなり,発行部数1万部という業界紙としては大きな媒体となった。また,海外研修から発展したMFSAとの交流,アメリカのメーリング産業特別部会の本格的な研究活動なども行っている。
さらに,2002年に渡辺新会長が就任して,郵政特別委員会を新たに発足させた。公社法に準拠し,業務提携および出資事項など,JMSAとどのような協業ができるか,公社側との折衝窓口として活動している。
協会活動をさらに活発に続けていくために,活動財源を確保すること,そのために収益活動を行うことが,今後の課題となっている。会員各社の業態整備やリスク管理,さらに労務,福利厚生などの就業環境対策にとってメリットを生むソリューション案件として,例えば個人情報保護法対策としてJMSAがガイドライン作成,コンサルタントのあっせんと派遣サービス,郵便関連商品開発と販売,メーリング産業廃棄物のJMSAを窓口とした回収など,共通する事業経営上必要な課題を取り上げたいと考えている。そこで,来年度には収益事業準備委員会を早急に発足させ,検討に入る予定である。

「郵便産業」の一翼を担って協業しよう
総務委員会の研究グループドメスティックチーム作成の「郵便関連産業の価値連鎖図」から,郵便物発信者がどのようなことを必要としているか見てみると,郵便物発信者(企業の顧客情報部門)の戦略は,(1)顧客獲得,(2)発送処理(メーリング),(3)顧客維持のサイクルを展開する。
(1)顧客獲得では,戦略開発からプロモーションマーケティングまで,(2)発送処理では,発注から返品交換処理まで,(3)顧客維持では,コールセンターからリストの更新までの作業がある。これらの作業を行っているのがメーリングサービス業者で,郵政公社を含めて一体的な機能を果たしている。その外側には数多くの関連業種が考えられる。
つまり,情報処理・物流・印刷・メーリングなどの多くの企業が,この価値連鎖のどこかで機能を発揮していることになる。郵便という紙ベースのメディアでは印刷業との関係は特に重要なものとなる。「郵便産業」の一翼を担う立場として,今後は業界挙げてさらに新たな協業やアライアンスが見込まれるだろう。(吉村マチ子)

JAGAT info 2004年1月号より

2004/02/02 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会