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印刷標準化への挑戦 (印刷OEM研究会がPAGE2004で成果展示)

印刷OEM研究会は、全国印刷工業組合連合会の2005計画から生まれた、印刷標準化を志す任意団体である。金羊社浅野社長の呼びかけにより、印刷会社22社と材料、機械メーカー、ベンダー18社が参加し、青森オフセット三上社長を座長として活動している。

印刷というものは、いままで基準となるモノサシなしで印刷物の製造をしてきた。出来上がった印刷物の良し悪しはお客様の目によって決められており、明確な基準があるわけではない。
印刷物の発注者、デザイナー、カメラマンなどは印刷会社の色再現に根強い不信感を抱いており、一方の印刷会社は度重なる修正や理不尽な刷り直しにいらだっている。このような事態を生んでいるのは、印刷物作成に関しての基準がないことが大きな要素となっている。
今回のOEM研究会の試みは、印刷標準化に対するソリューションのひとつである。

印刷OEM研究会の活動は2001年7月に開始した。印刷標準化に関する様々な議論があり、それでは実際に印刷テストをやってみよう、という話から印刷実験が始まった。第一回の印刷テストは14社が参加し、各社独自の基準で印刷した。その結果は、印刷会社の人間が見てもびっくりするほどで、同じデータでここまで色が違うのか、と愕然とした。各社のベタ濃度やドットゲインもバラバラで、この結果に参加企業は皆一様にショックを受けた。

この悲惨な現状を受け止め、プリンティングアカデミーの濱先生にお願いし、印刷OEM研究会専用のテストチャートを作成、本格的な実験に取り組む。用紙と刷版を固定し、同じ見本を参考にした二次テストでは色差僞が6前後とかなり近づいてきた。CTP出力による三次テストでは菊半サイズで10社、菊全サイズで18社が実験に参加。この三次テストでは色校正にあたる見本は存在せず、ハイライト、ミドル、シャドーの三つのグレーバランスを目標数値に合わせるという手法を採用した。結果は殆どの参加企業で僞<3を実現した。

このグレーバランスをあわせこむために各社では、次のような対応を実施した。
1. 印刷機を徹底的に整備
2. 湿し水、インキ、ブランケットなど材料の厳選
3. ニップ幅、仕立てなどの調整
4. オペレータへの教育
5. 測色器のキャリブレーション(測色条件の統一)
6. CIP3やハイパーなど自動化装置の活用
このように印刷の基本に戻った調整を実施した後、同一条件で出力したCTP版を用いて印刷する。色見本はなく、グレーのLab値のみをターゲットに印刷したところ、実に菊半サイズ10社中9社、菊全サイズ18社中16社の印刷物が僞<3という範囲に収束したのだ。印刷した機械(コモリ、ハイデル、三菱、アキヤマ、ローランドの5メーカー)も違えば、使用インキ(大日本、東洋、TOKA、サカタの4メーカー)も異なる。
この結果は、同じデータであれば、印刷会社が異なっても同じ印刷ができることを証明したことになる。やればできるのである。

プリプレスのデジタル化により、印刷の標準化は大きな課題となってきた。版下はデジタルデータに変わり、ポジがデジカメRGB入稿に変わる。出力もCTPとなり、印刷物作成のツールは全てデータに変わりつつある。カラーマネージメントもメーカー各社がそれぞれのソリューションを提供しており、プルーフも平台校正からプリンタプルーフにシフトしている。

このようなプリプレスの大きな変化に対し、インキを紙に転写する印刷技術は基本的に変わっていない。印刷もデジタルで制御し、明確な基準を設けることにより、印刷業界全体の標準化を図る時期に来ているといえよう。
雑誌広告の世界ではJMPAカラーの登場により、ワークフローの変革が始まろうとしている。日本最大の発注者、トヨタ自動車の採用によりこの流れは加速されると思われる。

一方、商業印刷の世界では、AdobeのAcrobat 6.0以降JAPAN COLOR 2001がプロファイルに標準装備され、今後普及していくことが考えられる。

今回の実験結果は、印刷会社側のアプローチから印刷の標準化は可能であることを示している。今後、JAPAN COLOR基準との整合性やPDF X、Open Typeフォントなどの組み合わせにより、一般商業印刷におけるスタンダード作りを目指していきたい。

参加企業名(順不同)
褐徳社、水上印刷梶A紫紅印刷梶A青森オフセット印刷梶A叶ッ野一誠堂、葛燉r社、互恵印刷梶A日本レーベル印刷梶A鰍黷「めい、ミズノプリテック梶A三美印刷梶A今野印刷梶A永井印刷工業梶A田宮印刷梶A渇。浜リテラ、川口印刷工業梶A潟ーメディア、三松堂印刷梶A潟Aートスキャナサービス、潟Wャパンスリーブ、丸山印刷梶A潟Oラフィカ大内、三菱重工業梶A菱栄機械梶A鰹ャ森コーポレーション、アキヤマインターナショナル梶Aリョービイマジクス梶Aハイデルベルグジャパン梶A大日本インキ化学工業、東洋インキ製造梶A大日精化工業梶A概&K TOKA、東京インキ梶A潟<fィアテクノロジージャパン、富士フィルムグラフィックシステムズ梶A鰍ォもと、泣eシコン、三菱製紙梶Aダイヤミック梶A劾TTデータ、(技術顧問)学校法人日本プリンティングアカデミー

成果発表:PAGE2004テーマZONE(センターホールA)

2004/02/01 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会