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第二世代インクジェットプレスプルーフ

 CTP導入などを中心に,プリプレス工程で扱われるデータがデジタル化するのに伴い,リモートプルーフのシステムが注目を集めている。
 第2世代インクジェットプレスプルーフについて,ソフトウェア・トゥー営業本部プリプレスソリューション課 マネージャー 金子栄一氏からお話を伺った。

従来のインクジェットプルーフ

 従来,インクジェットのプルーファは,プリンタのRIPにICCの仕組みを組み込んだものが一般的であった。制作のMacからPSやPDFのデータがプリンタの前にあるRIPに流され,その中でPostScript処理されるのと同時に,カラーマッチングの色変換をして出力される。印刷の校正というより,品質が高いカラーカンプというのが以前のインクジェットのカラープルーファである。

 制作データはインクジェットに出力される一方,最終的に印刷に掛ける時はイメージセッタなど,出力機の前にある高解像度RIPでPostScript処理される。RIPが違うものがそこに介在するので,必ずしも出力結果が一致しない環境も存在した。
 そこでRIP Once型という高解像度RIPで一度処理されたものを,インクジェットの出力にデータとして送出する仕組みも出てきた。この方式の最大のメリットは,最終的にフイルムやCTPの版を出すRIPと同じものを使用するので,そこで出てきたデータは,違うRIPで処理するよりも信頼性が高くなることである。

 インクジェットプルーフのシステムは,これまで大きく進化してきた。当初,イメージセッタの環境でかなり数多く使われていた。
 インクジェットの出力は,最終出力とはRIPが違うため,校正の位置付けとしては,取りあえず色を確認したり,全体の構成を確認することにとどまっていた。
 よってCTPを導入する際には,DDCPも同時に必要とされていた。DDCPだけではなく,ほかにもいろいろな商品が提供されている。しかし,従来のインクジェットの品質に加えて絶対必要なのは,刷版のデータとの校正結果の一致である。StarProofを始めとした,1bit TIFFを処理して網点表現する方法は,インクジェットとはいえデータと校正結果の一致が見られる数少ないソリューションである。

 最近のプリンタは,それ自体がいくつかの解像度をサポートしているので,場合によっては色の確認だけではなく,面付けなどの確認,刷版の検版でも,お金を掛けずに高速出力することも可能である。外校品質,内校検版など両面的に十分使えるということで,このような1bitの環境を処理するインクジェットは新しい付加価値を提供すると考えている。

rosetteStar Proofの構成と特長

 一般的なインクジェットプリンタと変わらないハードウエア構成であるが,ソフトは1bit TIFFの処理をするほか,8bit TIFF,サイテックスのCT,デルタリストなど,プリプレスのフォーマットも処理する。ただしRIPではないので,PDFやPostScriptのデータは処理しない。
 インクジェットのプルーファなので,求めるところは校正として良い物を出力するところになるが,印刷の現場においては刷版と製版の融合という意味で,ワークフローの環境もRIP Once Output Manyというような,より良い物を提供できるようになる。

 最大の特長は,CTPと同じ1bit TIFFを使用するため,最終の刷版データと校正結果の一致が見られるところである。そのような意味ではハイエンドのDDCPと品質的には変わらない。高信頼性と,低いランニングコスト,また専用機ではないため年間の保守費用も非常に安価で済むのである。
 また,1bit TIFFなのでオリジナルの網点シミュレーションができる。網点に関しては,例えば2400dpiのCTP向けのものとは解像度が違うので,全く同じことはないが,あるレベルの網点の問題を確認する場合,画像モアレなどは,今まで数多くの顧客テストを経ており,十分確認できる。ICCの環境を採用していないので,オリジナルの網点をリサンプリングしている。ICCの環境で色合わせするためには,1bitを一度8bitのデータに内部的に変換して,それから色の変換を掛けるが,Star Proofは8bit変換をしていないので,オリジナルの網点のシミュレーションになる。

 カラーマッチングはICCではなく,印刷のベタ濃度,ドットゲインコントロールという概念で編集することができる。一般的にプルーファソフトとしてはICCプロファイルを組み込むことが標準になっているが,それだけではなかなか色が合わないのも現実である。
 その結果として,プロファイルそのものを編集したり,別の方法を使用してデータを抽出し,ルックアップテーブルをベースに色を合わせることが追加で必要になり,別売ソフトも必要になる。Star Proofの場合は内部的に印刷の概念で色合わせできるユーザインタフェスを搭載しているので,それを使用すれば自分で色を合わせることができる。ICCを使わないので,高価な測色計や,プロファイルを作るためのソフトも必要ない。

 文字品質も,従来のプルーファの環境では文字が太ってしまう問題が存在した。PostScriptのデータを処理する際に,フォントのレンダリングで解像度が低いと太めにレンダリングしてしまうことと,最近はスミ版保持という機能も一般的になったが,ICCの環境では黒のハンドリングが非常に難しい点がある。黒という概念がなく,リッチブラックという概念の中で全部処理されてしまうので,インクジェットの黒のインクを使うのではなく,CMYの色を混合して黒的に表現する。結果的にインクをたくさん噴いてしまうので,にじみが出てしまうことも,文字の問題として存在した。
 このソリューションでは1bitのデータを処理するので,フォントのレンダリングという概念をもっていない。従って,高解像度データを処理することも手伝い,良好な文字品質を表現できる。

まとめ

 CTPの時代になると,刷版のコストや自動化というところでメリットがあるが,もう一つ,刷版工程,製版工程が一体化するので,それをどれだけ効率的に運用できるかという点が重要になる。そのような意味ではRIP Onceの環境は非常に有効である。
 また,カラーコミュニケーションツールというのは非常に大事なソフトウエアのフレームワークである。例えば,ターゲットプロファイルがあってそれを使用したとしても,デバイスプロファイルがずれていれば結果として出てくる色は違ってしまう。

 プリンタもいろいろ種類はあるが,最近はターゲットプロファイル,デバイスプロファイルだけではなく,キャリブレーションプロファイルというプリンタを常に標準的に運用するためのプロファイルも中に含まれて,より高度なカラーマネジメントができるようになってきているが,それを管理するのは容易なことではない。
 ソフトウェア・トゥーとしては,もう一方の考え方として,最終的に人間の目で色を確認できるものが出力物としてあるので,それと簡単に合わせられればよいのではないかと考えている。 信頼できる印刷会社の最終データを校正として送出できる環境を提供することにより,社内の拠点間や特定のビジネスパートナーの間で印刷物の校正を遠隔地で行うものである。これがリモートプルーフの本題ではないだろうか。

(テキスト&グラフィックス研究会)

2004/02/12 00:00:00


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