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Eメールを利用したPDFリモートカンプでの校正業務改善と今後への期待


 雑誌『Mac Fan』(株式会社毎日コミュニケーションズ発行)では最新DTPワークフローの検証として,校正と赤入れの戻しをEメールベースのPDFリモートプリント(リモートカンプ)で行った。編集部では,2002年12月に当社のA3ノビ対応カラーレーザプリンタDocuPrint CG835(以下CG835)を導入し活用をいただいている。
 本レポートでは,このデザイン会社と出版社編集部の事例から得られた内容を,制作(受注側)と,クライアント(発注側)の校正に関わる日常的な課題に対する改善事例としてご紹介する。

CASE Review:雑誌『Mac Fan』編集部 ・編集部(ものづくり)の課題
 
編集部ではインターネットの普及の中,「誌面内容の充実と速報性の両立」を目指しながらさらなるコストダウンが求められていた。そして,フルデジタル化の流れの中で各工程において責任範囲が重要な課題となっていた。
・上流工程における外部とのワークフロー改善
 編集部では数社の外部デザイン会社と制作会社および複数のライターとの連携で出版を月2回のペースで行っていた(2004年より月刊化)。
 納期が短い中,校正はファックスで確認していた。その中で誌面デザインでは往々にして背景を高濃度にして白抜き文字,細線,パターンを載せることがある。ファックス送信による可読性の悪さは皆さんがご存じのとおりである。そのためデザイナーはわざわざ高濃度部を除いたデータを作成し,プリントした後,ファックス送信している。
 ファックスで送っているのでカラー紙面であっても色みの確認はできず,その確認は宅配便・バイク便・担当者持参となり,コスト(実質的な費用と人件費)と時間を掛けて補っていた。
・原稿責了による印刷入稿で得た色再現性とリモートプリントの実現性(図1参照)
 2段目のワークフローがファックスで行っていた改善前の流れであり,現在(2003年12月)は3段目のワークフローへ移行しつつある。
 この移行を一言で言うと「遠隔地へのカンプ自動プリントとカラーファックス感覚による赤入れ戻し」となるが,順を追って説明すると,
〔1〕Macからネットワークを介した遠隔拠点へのPDF自動プリント
〔2〕自動プリントによるカラーカンプの納品と紙面への直接の赤入れ
〔3〕スキャナによるカンプイメージのPDF化とこれを添付したEメールの自動送信
〔4〕カラー赤入れカンプイメージ(PDF)の自動プリント
である。検証時の懸念・期待事項は,
懸念事項
〔1〕設備投資はできず,従来資産の活用が前提
〔2〕担当者への操作変更は混乱を来し短納期での制作にはリスクが大きい
〔3〕未知数な技術の導入はリスクが伴う
期待事項
〔1〕原稿責了での入稿実績からカンプでの色み予見の実用性
〔2〕単純操作と従来手法の組み合わせで実現性・実用性の高さ
〔3〕A3見開きカラー紙面への赤入れで校正業務の可読性・視認性・効率の向上
〔4〕Eメールアドレス(赤入れ戻しには汎用推奨スキャナが必要)をCG835へ設定するだけですぐ試せる

PDFリモートカンプを成功させた要因
 編集部でのCG835は,2003年2月1日号MacWorld SanFrancisco2003速報記事では,8ページを8時間で制作し,デバイス・リンク・プロファイルによる色みの予見を行い,原稿責了の後,印刷会社への入稿,翌々日全国配本という実績を支援した(図1の1段から2段への移行)。
・ゼロックス製プリントサーバ
 当社,CG835のサーバおよび富士ゼロックス製プリントサーバは,国内開発の強みを生かし,開発者が市場のニーズやトレンドから新機能をサーバソフトウエアに追加し,数万円程度の価格で,およそ年1回程度バージョンアップキットをリリースしている。今回はその実績を基に,サーバソフトウエアのバージョンアップ(V4.0→5.0)で追加されたEメールによるPDFリモートプリントと赤入れ戻しを想定したスキャンto Eメール(PDF添付)機能を利用した。
〔1〕既存インフラと標準技術(Eメール,PDF)の組み合わせで技術的実現性を提供
〔2〕安価にサーバソフトのバージョンアップができ購入後も性能をアップすることが可能
〔3〕2色印刷シミュレーション機能に代表される市場ニーズを反映
・Eメールを使ったPDFリモートカンプの有効性
 生成したPDFデータ(A3見開き)は,校正用が8MB,スキャナから生成したイメージで4.5MB(解像度:200dpi)であった。現状のメールの添付ファイルサイズとしては突出したものではないが,運用制限にはファイルサイズ設定で自動分割送信も可能である。
 この事例にあるEメールでの運用が唯一絶対の方法ではない。Eメールがもっているぜい弱性や添付メールサイズなどの運用ルールとの整合性など課題もある。しかし,今後デファクトスタンダードになるであろうPDF入稿に対し,投資リスクを抑えながらも実践的に自らその可能性を判断しておく必要があり,今回の『Mac Fan』編集部の取り組みはそれを示唆するものであると考える。
 そして印刷・制作会社の経営戦略においては,ビジネス提案を一手進める可能性を秘めているのではないだろうか(有料取引先の囲い込み,営業生産性の加速度的な向上など)。
 今回の検証内容は,冊子(『Mac Fan』11月1日号から抜粋:帳票番号SOG-009)で報告しております。希望の方は最寄りのゼロックスまたは筆者までご連絡お願いします。

販売本部 マーケティングセンター
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■関連情報
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『プリンターズサークル 2月号より』

2004/02/15 00:00:00


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