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あなどれないコンピュータ

よく言われることだが,「コンピュータは道具に過ぎない」は,半分当たっており,半分は考え方を変えなければならないほどになった。ビジネスにコンピュータを使う場合は,使う人間側のアイディアを越える結果にならないという点で正しい。これは,コンピュータ関連投資に期待し過ぎないとか,新技術の機能を見誤らないための言葉でもあった。

しかし例えばモノを買う側から考えると,あまり訓練されていない店員にモノを尋ねるよりもコンピュータの方がよっぽど役に立つことはある。すでに日常的に使われているカーナビも,交通機関の乗り換え案内も,凡庸な人間以上のものとなったように,人手が作業しない領域はどんどん広がっているのである。

近年,書店の店頭の平積みで,店員が書評などのオススメを書いた本がよく売れ,それが口コミで広がり,マス媒体を扱う大広告代理店以上の働きをしたことが何度か話題になった。こういう書店の日常の努力は基本的な事柄であって,出版社や書籍流通はマス広告の手は打てたが,書店とうまく連動できなかった。そのため書店側でよほど熱心な人がいない限り,店頭のオススメで読者の心を打つことはできず,一般的なビジネスを広げる手段としての有効性は疑問である。

しかしネット上のオンライン書店はこの口コミ機能を売り物にしつつある。ネット書店を探索していると,本に深くコミットした人達の考えや感覚に触れることができるという点で,オンライン書店は店頭やマス広告との差別化ができる。要は本に対する良質のコメントをいかに集めるかの仕組み作りなど,IT投資がなされればそれなりの成果が得られるようになる。

ITやECのバブルを潜り抜けて発展したgoogle,ebay,amazon などは,道具としてのコンピュータを人間以上のサービスが可能なものと考え,IT投資を重ねてきた会社である。すでにこれらのサービスのオススメは(場合によっては),どんな人間もかなわないものとなっている。私の想像だが,彼らは「所詮コンピュータは…」ではなく,「超人」を作り出して自分のビジネスの僕にしようという信念というか「信仰」のようなものがあるように思えるし,それが成果を現わしつつあるのが今日であるように思えるのである。

通信&メディア研究会会報 VEHICLE 178号より

2004/02/27 00:00:00


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