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ワンポイント受験ガイダンス

2月4〜6日に開催された「PAGE2004」の展示会場において,今回もDTPエキスパートコーナーを設け,多数の来場者でにぎわった。今年はDTPエキスパート10周年にちなんだ展示内容とし,10年間を振り返って,受験者の推移グラフなどとともに第1期の試験問題も掲示した。今となっては「こんなことが書いてある…」と思えるほどある意味陳腐化した問題文に,たかが10年と言えども進化してきたDTPの歴史を感じさせ,なかには感慨深く見つめる人もいた。
恒例となったワンポイント講座も,合格のためのヒントを得る場として知られるようになり,3〜4年前からは'通りすがったら何かやっているので聞いてみた'のではなく,'あらかじめプログラムを調べ,自分の聞きたいテーマに狙いを定めて聞く'方たちが明らかに増えてきている。また,昨年から実施した試験の優秀課題作品の展示は今回も目玉となり,普段あまり目にすることができない具体的な課題対策の情報を得ようと,熱心にメモを取ったりデジカメで撮影する人がひっきりなしであった。
当コーナーは受験予定者や企業の教育担当者などの方々が,受験情報を求める場として定着したようで,受験対策に関するさまざまな質問も受けた。本誌が出るころには21期試験は終了しているが,8月29日に実施する22期試験,あるいは以降の受験を目指す方々の参考までに,日ごろ事務局に寄せられる問い合わせなども加味し,受験ガイダンスとして以下にまとめてみた。

筆記試験のポイント
筆記試験で絶対に守ってほしいポイントの一つは,必ず問題の最後までたどり着き,すべてに解答することである。合格のためには5つのカテゴリーそれぞれにおいて80%以上の正解率が求められるが,試験問題は第1部グラフィックアーツ・第2部コンピュータ環境という区分けしかなく,受験者には試験中にカテゴリーを意識することはできない。つまり最後まで解答しないと,あるカテゴリーで大きく点数を落とすこととなり,それが致命傷となる恐れがあるからである。
第1部・2部合わせてマークすべき設問数は700〜720ある。これを延べ4時間で解くとすれば1解答(マーク)に掛けられる時間は約20秒であり,見直し時間などを考慮するともっと短くなる。従って筆記試験対策では,知識・理解だけではなく解答のスピード感覚を養うことも必要とされるのである。特に20期試験からは,長文を読んで答える文章題が出題されるようになり,今後も増やしていく意向なのでペース配分に注意するようにしたい。いずれにしても分からない問題で立ち止まっている暇はなく,筆記用具もシャープペンなどはマークに適さないので,柔らかい濃いめの鉛筆を多数用意すべきであろう。

次に重要なのは,不得意カテゴリーの克服である。各カテゴリーの設問数は期ごとに多少の上下はあるが,いつも最も多いのはC1(DTP関連知識)で,最も少ないのはC4(色の知識)である。これは別の見方をすると,間違えてよい数が最も多いのはC1であり,ミスを最小限にとどめなくてはいけないのはC4であるということを意味する。毎回,1カテゴリーのみで落ちる人が20%以上に達し,わずか1点で泣く人もいるので,「色はどうも苦手で…」という人は要注意である。
上記のように,受験対策として模擬試験問題に取り組む場合には,ただ漫然と問題を解いていくのではなく,スピードとカテゴリごとの成績を意識することが肝要である。
最後に大切なのは,解答用紙に名前と受験番号の記入を忘れないということである。当たり前のことであるが,会場の雰囲気などにのまれ,緊張し過ぎて忘れてしまう人が少なくないのである。また,分からない問題を飛ばした際にマークシートの記入欄を空けずに解答したために,最後まで解答をずれて記入してしまう例もあったので,難しいかもしれないが会場では落ち着いて取り組むことを心掛けたい。

課題制作のポイント
課題試験で絶対にやってはいけないことが3つある。つまり,これをやると不合格なるということである。その1は'筆記であきらめずに課題も提出する'こと。課題の採点は筆記とは全く切り離して採点しており,ここ数年,課題だけの合格率は85%程度の高率で推移している。毎回筆記で合格しているのに課題が不提出なために落ちる人が何十人という単位でいるが,次回の試験で筆記が免除になるということはなく,結果も作品と制作ガイドをそれぞれ3つのカテゴリーに分けて詳細に返しているので,今後の参考のためにも必ず提出してほしい。
2つ目は'提出期限を守る'ということで,締切後の提出物は採点から除外してしまうので要注意である。試験の公平性・厳正運営維持のため,例外は一切認められない。
その3は'人の作品を(過去も含めて)コピーしない'ことだ。不正コピーについてはそのつど警告を発してきたが,オリジナル制作者であっても無条件で失格となる。どれがオリジナルか採点官が判断できないからだ。会社の同僚や学校のクラスメートが同時に受験する際に,ある程度似た作品になるのは問題ではないが,だれかが作ったレイアウトデータをコピーして,パーツを少しずらせただけだったり,色や書体を変えただけのものも不正コピーと判断される。

上記の3つは絶対条件であるが,提出物の「作品」と「制作ガイド」で注意すべきポイントを挙げると,「作品」は印刷物としての品質(製造物としての設計,次の工程への配慮など)は無論だが,何よりもゲラとしてクライアントに通用するか?ということが肝心である。表や文字組みがまともでなかったり,網や画像に載せた文字が判読できないようなものをお客に持っていけるか,という視点をもってでき上がった作品を見直すとよいだろう。
「制作ガイド」の採点は,それに従って第三者が作業をした時に「ゲラ」が再現できるか?という観点で行っている。自分が制作した手順をダラダラと書き綴っただけでは全く不十分である。'「ゲラ」は「制作ガイド」の前提ではない'ということを肝に銘じておくべきである。

成績のポイント
DTPエキスパートは,筆記試験4時間に加え課題制作に2週間という試験であり,体力と気力の勝負といった面もある。しかし,きちんと対策を立て,十分に準備をした人たちは,年齢や業種・職種に関係なく合格ラインを大きく突破し,余裕をもって合格しているのはこれまで何度も報告してきたとおりである。これまで10年間の平均の合格率は40%を超えている。10人に4人は必ず合格しているということだが,このことだけを取り上げると,一般的な資格紹介本では'難易度中位'と評価されることが多い。ところが業界では難易度が高いと受け止めている方が比較的多いと思われるのだが…。

 
(JAGAT info 2004年3月号)

 
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2004/03/18 00:00:00


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