本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

既存の印刷物を利用した新たなビジネス展開が進む

インターネットのブロードバンド化が進み、イメージのような大きなデータを送れる環境が整いつつある。しかし、いろいろなサイトで見るインターネット上のコンテンツはまだHTMLを利用したWebデータがほとんどである。
Web環境がこのような状況の中で、今新たなコンテンツ表現で見せる技術を利用したコンテンツ配信による、新しいビジネスの創出が起きてきている。

紙への印刷イメージのデジタルコンテンツ配信

一つはアルファブリッジが提供している「ebook Lab.」がある。3月3日にJAGATの通信&メディア研究会のセミナーで話をして頂いたが、紙面イメージをそのままパソコン上で表現し、高画質なebookを低コストで提供できるようようにしている。
通販カタログ、新聞、IR/会社概要、雑誌、パンフレットなど従来の印刷物である紙イメージをそのままインターネット上へ乗せて配信できる仕組みを提供している。
配信されるコンテンツのナビゲーション機能には、ページめくり機能や、高速拡大機能、リンク機能、検索機能などコンテンツを閲覧しやすく、検索しやすい機能が実現されている。これらを実現するには、専用の閲覧用ソフトが必要になるが、データと一緒にダウンロードをするなどして、コンテンツのインデックス部分を見せながら、後はネットワーク上のサーバからアクセスして見るような仕組みが提供される。今このような機能を実現するソフトウェアが多く出始めており、それらを利用してコンテンツの作成・配信のサービスを行っているのがアルファブリッジである。

2004年1月27日の日経産業新聞に掲載された「商品カタログ電子化支援」記事では、加賀電子が会員情報配信システム構築事業を始めた。大量配布する紙のカタログに代わる情報提供手段として、コンテンツの制作・配信、そのためのシステム構築などのサービスを提供する。
これも本のカタログをめくるようなイメージで、拡大機能や検索機能、リンク機能などを利用した電子カタログを提供する。最初はCDでリーダとインデックスに相当するページデータを配り、それをインストールしておくと、こちらは自動的にカタログが配信されて見れるようにする機能になっている。
自動的に送るか否かは別として、どちらも共通しているのは、紙のカタログを高品質な状態のデジタルコンテンツとしてインターネットから提供し、紙をめくるようなイメージで見たり拡大したり、リンク先に飛んだり、印刷したりすることができる点である。
今このようなツールが出始めているが、アルファブリッジや加賀電子はこのよなツールを利用してサービスを提供する企業である。

ツールやソリューションの特徴

この方式は、紙の印刷物をそのままスキャンなどを行い圧縮したイメージにしインターネットで配信できるようにするため、従来のWebでのコンテンツ配信での作業にあたるHTMLコンテンツの作成の手間は大幅に減らせるだけでなく、デザイン的な見せ方は紙イメージそのままなので問題は無い。
このツールを利用した場合、クライアントのパソコンにすべてのコンテンツがあるのではなく必要に応じてサーバからダウンロードしながら見せるため、Webと同じ運用ができる。

このようなソリューションは印刷会社には非常に向いているが、逆にツールの提供している企業側はコンテンツ制作は不得手なところが多く、ツール提供者とコンテンツ制作・配信する会社が共同して提供するソリューションとして、期待できる。

このようなツールが出現してきている状況の中でエージェントという会社はツール提供を行っており、先の加賀電子へのツール提供だけではなく、幻冬舎コミックでのebookとしても利用されてる。コミックの「Under the Rose (1)〜冬の物語〜」の32ページを無料でダウンロードさせて読めるようにするためにこのツールを利用している。

このようなツールは、紙イメージをそのまま利用するが、見せ方の部分でいろいろカスタマイズして専用のナビゲーションの仕方を提供する。ページのめくり方、拡大の仕方、リンク、検索、その他ナビゲーションのためのメニューなどをテンプレートとして作り込む。このようにしてデジタルコンテンツを作り込み配信する。
またコンテンツの中には、さらには2次元コードを埋め込んで、紙のカタログから通販の発注をできるようにする仕組みをそのまま組み込んで、携帯電話を利用して通販の発注をできるようにするなど、電子カタログから発注、決済など一連のECとしてのシステムとしても利用することが可能になる。
このようなツールの利用はアイデアにより、いろいろなソリューションを提供するための道具となり、そのコンテンツの部分に印刷会社がカタログビジネスの一環として入り込める。
このような仕組みを自社ですべて構築してもいいが、コンテンツの配信やナビゲーションのためのツールのカスタマイズの部分などはアライアンスビジネスとして共同することも考えられる。
また紙のカタログを受注している印刷会社が顧客へ先に提案していくことでビジネスチャンスにもなるが、逆に顧客から先に言われて後から行う場合では仕事を失うことにもなる。

ツールの機能や使い方、ソリューションの提供の仕方などについては、3月23日の通信&メディア研究会のセミナー「デジタルコンテンツ活用のビジネス戦略ツール」で取り上げ、先のエージェントが扱うツールの紹介と印刷会社ができるソリューションの提案などについてのセミナーを行います。

2004/03/15 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会