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DTPエキスパート試験への過程 それが今の私の礎

◆沢井 美江

「さて!? 印刷会社で働くことになったものの何をどうすればいいのやら??」。大学卒業後,地元のテレビ局に入り報道部に配属。取材やリポートに飛び回っていた私は,結婚を機に退職して家業を手伝うことになりました。その時の感想がこれです。それでも,美術館や展覧会の取材などをとおしてデザインやカラーに興味をもっていたのも事実で,「自分の考えたデザインやアイデアが商品になるなんて,なんて楽しいのだろう」とぼんやりとした想像だけがありました。
始めは言われるがままに版下を用意したり,コピーを取ったり,製本の手伝いをしたりしていました。しかしそのうち1カ月もすると,トータル的に印刷とは何ぞや? 印刷の仕組み,流れ,コーディネート,最新の技術は? 本当にこのやり方がベストなのか? といった疑問がふつふつとわいてきました。DTPという言葉を知ったのもその時でした。

会社の人に紹介してもらい専門学校に通い始めました。超アナログ人間だった私はIlustratorやPhotoshopなどを初めて触り,デジタルの世界は何て賢いのだろう! 何て楽しいのだろう! と毎回通うのが楽しみでした。教室は空いている時間であれば自由に使っていいということでしたので,ほぼ毎日のように会社が終わると出向き,違うクラスの先生でもつかまえては質問攻めにあわせていました。
デザイン・レイアウトソフトがある程度使えるようにはなったものの,印刷に関する専門的な知識はまるでゼロに等しいものでした。いくらいいアイデアが浮かんでも,いくらこんなデザインを紙面上で表現したいと思っても,印刷工程や製本工程でリスクが高くなっては,自己満足ばかりでなく「安くていい商品を」というお客様のニーズにこたえられるものではありません。
そこで印刷技術の基礎的な知識を身に着けようと受験を決意したのが,DTPエキスパートでした。決意というと大げさに聞こえるかもしれませんが,実地経験の少ない私にとってはそれほどの気持ちでした。何といってもDTPという言葉自体を知ったのが試験の半年前,その試験は3カ月後,テキストをめくってもチンプンカンプン,合格ラインは全カテゴリーで80%の正解率というのですから…。

奈良県印刷工業組合にDTPエキスパート試験に向けた講習会を企画・提案したところ,何とか開催にこぎつけていただき,県内の印刷会社から10人が受講しました。仕事の合間を縫っての試験勉強はかなりきついものでしたが,単純な私の質問に親切に答えていただき理解できるまで根気強く教えてくださった先生と切磋琢磨(せっさたくま)し合える仲間とのお陰で,無事,「サクラサク」の報告を受けることができました。成績優秀者として合格できたこともうれしい限りでしたが講習をとおして,試験への過程をとおして,技術革新に果敢にチャレンジする姿勢を身に着けられたことは,何よりの収穫でしたし,今の私の礎にもなっています。

現在は主に営業活動でのプレゼンテーションや,新規開拓に向けた企画書やカンプ作成などを行っています。よく「弊社はデザインが得意です。HPが作れます」などといった「〜ができます」をうたい文句にしたPRがありますが,お客様のニーズはそういうことなのでしょうか。印刷業界の外にいたからこそ思うのですが,パンフレットにしろ,チラシにしろ,自伝本にしろ,いかに消費者がそれを手に取り,購買意欲につなげられるか,いわば利益につながる印刷物なのかがお客様の欲しているところなのではないでしょうか。ですから私は事例を紹介する時には,「このダイレクトメールはこういうところを工夫し,年間何人の集客につながった」「このチラシでいくらの利益につながった」といった数字を明記し,また納品後のリサーチも重要視しています。
今後は印刷の受注から,商品ができ上がるまでのトータル的なサポートができるよう,お客様の企業の売り上げが伸びるとともに弊社の売り上げも伸びるよう!! あらゆる技術革新に果敢にチャレンジする姿勢で取り組んでいきたいと思っています。もちろん楽しみながら…。

 

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2004年4月号


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2004/04/01 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会