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ストレスの無いIT化が印刷物作りを変える

JAGATのWEBサイトはこの1年間で3千数百ページ生成されたが、ページ制作代という予算はなく、専任のホームページ担当者もいない。サイト管理は兼任で編集側に一人、システム管理も兼任で一人居るだけである。各ページはそれぞれの事業に携わるものが自分の仕事の一部として情報をupしている。情報のチェックはそのラインの上司の仕事であり、WEBの編集長が見渡しているわけではない。つまり業務が進むと同時にWEBページも出来ていく仕組みになっている。

こういうやり方にはいくらかのインフラが必要になる。とはいっても今日のコンピュータ環境からするとSQLもXMLも単なるパソコンアプリのひとつに過ぎない。だからIT環境は必須ではあるが、それよりも日常の業務の中にどうやって情報の編集や発信を組み込むかという、ビジネスプロセスの作り変えの方にウエイトがかかる。働いている人の教育も必要になる。

WEBでの情報発信のために何らかのシステム導入が必要で、その立ち上げ時には個々人の従来業務に負荷が上乗せされるが、ずっと負荷がかかるような無理は長続きできない。そのために、あまり一挙に理想的な機能を実現しようとするのではなく、人の学習・習熟速度の範囲で業務変革のロードマップをつくり、それに予算とか新テクノロジーを当てはめていくのが現実的だろう。こういう亀の速度のIT化であっても、数年経つと大きな前進になるし、たいていの文書はまずWEBなど電子フォーマットで最初から作られ、管理されるようになる。

今コンテンツ管理という言葉が多く使われ始めているが、従来は無管理状態であったところに新たな管理システムを導入して、従来業務と平行で走らせるのは、得てして負荷の増大になる。経費的にいってもコンテンツ管理のために予算がとれるのは、知的財産関係でライセンス料収入が見込めるものが先行しているように、収入に結びつき難いものは別の考え方が必要である。

つまりコンテンツ管理の前段階として、文書の生成から再利用までの日常の業務プロセスを一旦整理して、将来のコンテンツ管理を想定したものに切り替えることが重要である。これは上記のようにほぼ費用なしでもできることがいろいろある。しかもこれはSIerの仕事ではなく、利用者側の問題として、働いている人の学習速度と技術変化の速度をいかに折り合いがつくように自分で計画を建てる能力が問われていることでもある。

これが費用やストレスをかけずに行えると、それだけでも社内の情報の一元化とか共有化によるコストダウンのメリットが発生する。さらに印刷発注管理まで貫いたシステムにすれば、外注費の適正化にも使えるようになる。情報誌やカタログなど何らかの商取引の業務の中で情報が発生する世界は、そのような理由でWEBの制作が先行して、そこから原稿を再編集して印刷に使うことが多くなりつつある。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 218号より

2004/04/27 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会