しかし新人研修を終え,私の受けた配属は出力オペレータであった。入稿されたデジタルデータからパソコンを使い,印画紙,フィルム,カラー,大判カラーなどを出力する係なのであるが,それまでインターネットすらろくにやったことのない私にとっては,かなり意外に感じた。
うそみたいな話だが,そのころの私はモニタをパソコン本体だと信じていたし,MacintoshとWindowsの区別を付けることもできなかった。そんな状態でまず,Mac環境での出力に関する研修を1週間受け,新しい部署だという「Windows・面付け」コーナーに正式所属することとなった。
今となっては何の知識もないまま業務に就いたのが,逆に良かったのではないかと思う。当時は今ほど,Win出力は世間に知られていず,お客様の問い合わせはそのまま私の疑問でもあり,問い合わせに答えながら私も知識を得,またMac環境と比較して両者の違いを整理して覚えることができた。
現在,私の部署ではOfficeや一太郎など,DTPアプリケーションではないソフトで作成されたデータを,元データから直接出力をすることはほとんどない。一度変換ソフトを経てから作業するのであるが,その際に一番問題となるのが色の変化である。変換ソフトのカラープロファイルは,RGBデータをそのまま出力してしまう以上に色を変化させてしまうので,初めてのお客様にはまずカラーカンプを出力して,どの程度変わってしまうのかを確認してもらった上で作業を進めるようにしている。
また,データの作成方法についての問い合わせを受けた際に,お客様のほうで作業しきれないようなものは,入稿後にこちらでの作業が円滑に進むような誘導をする。修正を行う場合も多いので,お客様とは頻繁に連絡を取り,どのようなものを望んでいるのかをしっかりと把握する必要があり,内容によっては作業工程を変える場合もある。
Win版のDTPソフトについてだが,QuarkXPressやPageMakerに問題が多いように思う。出力作業に使用できるOSが制限されてしまったり,出力時に不具合が起こる場合がある。それらに比べると,EDICOLORやInDesignは問題が少ないように感じる。
そしてようやく作業にも慣れてきた入社2年目の夏,頼りにしていた先輩たちの移動による不安と,もっと自分自身で力を付けよう,という意識が重なって私はエキスパート認証試験を受験した。会社から資格手当てが支給されるということも強烈な後押しだったが,何よりも機械類に対する苦手意識を軽減したかったのだと思う。ただ本を買って読むのも目標がないし,勉強をするいいきっかけだと思ったのかもしれない。
結果,合格することができ,相変わらずメカへの恐怖は消えなかったが,自分の知識の確認や,今まで知らなかった新しい世界を少しのぞくことができたように思った。
月日の流れは早いものでそろそろ入社から3年が経とうとしている。印画紙やフィルムの需要が減っていき,CTPプレート出力や印刷そのものに会社のウェートは移行している。
時代の流れに敏感に,自分もこれからさらに新しい知識を身に着けていかなければならないと思う。立ち止まっていては置いていかれてしまう世界なので,日々努力を続けたい。
■月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2004年5月号
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2004/05/04 00:00:00