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日常生活に根付いた電子媒体の印刷需要への影響

世の中全体を見渡してみると、インターネット、モバイル、ECなど、IT技術と関連サービスは予測された通りあるいは予想以上のスピードで普及し日常生活にすっかり定着した。 B to C のEC(電子商取引)の市場規模は倍々で伸びて2002年には1.6兆円となり、B to BのECは予測より1年早く60兆円に達した。2003年のインターネットの利用者数は6,942万人、世帯普及率は予想を少し越える81.4%となった。ブロードバンドの契約も、あっという間に1300万契約を越えた。携帯電話は、既に自由時間内でのメディア接触時間、メディア関連家計支出のいずれにおいても最大のメディアになった。その利用も電話ではなくメール、ゲームといったものが増え、さらに高機能、高付加価値製品が、この1,2年で身の回りに溢れるようになった。デジタル家電の販売も好調で、2003年のGDP成長に貢献した。メディアの状況は、媒体を多様化しつつ刻々と変化している。
このような状況は、当然のことながら印刷物市場、主要関連産業に影響を与え、これからそうなるだろうと言われてきた変化が、いろいろな部分で誰にでも見える明らかなものになってきた。そのひとつが通信販売業界における各種媒体の利用状況と売上シェアに見られる。

社団法人日本通信販売協会の「第21回 通信販売企業実態調査報告書」によれば、2002年度の通販業の売上高は前年比5.6%増の2兆6300億円になった。2003年も3%程度の成長は間違いないという。しかし、通信販売の広告宣伝媒体としての印刷媒体制作費は減少傾向にある。通信販売業で使われるカタログ、DM、チラシ制作費は、それまではほぼ横ばいで推移していたものがインターネットが急速に普及しだした1997年以降は減少傾向が見られる。

図は、通販業が利用する各種媒体に関する売上高、広告費、利用度をまとめたものである。

図のとおり、カタログ(17ページ以上の綴じてある印刷媒体)による売上がダントツに大きく、売上全体の31.1%がカタログの配布によってもたらされた売上である。第2位はDM(16ページ以下の印刷物を直接顧客に配布するもの)による売上だが、インターネットによる売上は売上高全体の10.4%で、チラシを上回るDMに次いで大きな売上を上げる広告宣伝媒体になっている。媒体別の売上額の2001年から2002年への変化をみると、インターネットの伸びが非常に大幅であることがわかる。また、媒体利用率では、各メディア中トップの媒体になっており2002年時点では通販業の74.8%がインターネットを利用している。図にはないが、オンラインショップの月間トップページビューは、761,000件で前年に対して倍増し、受注数も5割強増加している。携帯電話による受注数はオンラインショップ全体の22.0%であるという。インターネットの利用を業態別に見ると専業者ほど伸びており、規模別には規模の大きい企業ほど伸びが大きい。

2004年5月20日発行「印刷白書[2003→2004]」より

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