印刷物のメディアとしての機動性を考えると、速報性では電子メディアにはかなわない面も確かにあるが、TVでは番組枠があらかじめ決まっていて、それ以上の情報は流せないとか、WEBでは自分でプリントをとって保管しないと情報が変化してしまうなど、電子メディアにも印刷にかなわない面もある。
結局はどのようにメディアを組み合わせて使うかの問題になるので、印刷も機動性を上げれば上げただけ利用される機会は確保される(減り難いという意味)。だから印刷の生き残りはプリプレスのプロセスの自動化がどれだけ進むかに大きくかかっているともいえる。
プリプレス自動化の限界を最初に突破したのは情報誌などデータベースからの自動組版であるが、そのキーポイントはページアップした以降を校正レスにしたことである。この技術はその後各方面に広がって、原稿を常時アップデートしておいてオンデマンド組版とでもいうべきことも行われているし、バリアブルプリントにも展開できる技術となった。
WEB制作も同様なことを実現するようになってコンテンツ管理ということばも使われるが、言葉の定義は曖昧に思えるかもしれない。DTP素材や完成ページデータレベルの管理をするのはアセッツ管理と呼ばれ、それとコンテンツ管理は重なる部分もある。本来ならば制作のワークフローの変化とともにアセッツ管理がされた上で、その発展的なシステムとしてコンテンツ管理が考えられるべきであるが、日本で制作側でのシステム的なアセッツ管理は新聞などを除いて進んでいない。
これは制作業務だけのコストやパフォーマンスを考えれば、あらためてアセッツ管理のシステム化をすることの意味が見え難いからであろう。しかしコンテンツ管理の方がメディアの活用につながることであるので、WEBとともにコンテンツ管理が先行して、それに歩調をあわせるためにアセッツ管理をせざるを得なくなるようにも考えられる。
今はリアルタイムなコンテンツの更新が必要なWEB報道とかWEBカタログなどでコンテンツ管理が取り組まれている。こうすることの狙いは単に制作のオンデマンド化だけではなく、有料コンテンツの購買管理とか、知的財産権関連の支払いの自動化、アフィリエイトプログラム、などなどメディアのビジネスにまつわるさまざまな処理のIT化をする上で、コンテンツごとに管理することが必要だからである。
つまりコンテンツ管理はトランザクションに結びつくので、メディアビジネスのPOS化のようなものでもあり、同時にそれは原稿料やライセンス料の自動支払いなど編集側の事務処理の無人化であり、編集の人的能力をもっと本来業務に使えることでもある。メディアビジネスの強化のために導入するコンテンツ管理でないと意味が無いし、これによって印刷メディアの機動性も向上すると考えられる。
テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 219号より
2004/06/06 00:00:00