本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

デジカメで様変わりするレタッチの世界

2003年にはコンビニなどのフイルムを売る棚が急速に減少し、DPEの商売も「デジカメプリント」を大々的に行うようになったように、カメラの主流は販売のみならず日常の利用でも完全にデジタルに置き換わった。ただ印刷入稿される画像の主流がデジタルカメラによるものかどうかはまだいいきれない。おそらく20〜30%くらいがデジタルカメラで撮られているのではないかといわれる。

プロ用にも高画質・高速連写のカメラが出てくるなど、近い将来はデジタルカメラが印刷画像でも主流になることは明らかである。デジタルカメラのRGBデータを印刷する際にどこでCMYKに変えるのか? カラーマネジメントの環境つくりは? などの近年の議論もだいたい収束に向かい、工程全体にわたってRGBで扱い、しかもAdobeRGBなど基準となる色空間を決めてCMSは簡素化しようとしている。ただ現状ではアチラこちらに落とし穴があるので、やはりそれなりのスキルがないと信頼して仕事を任せられない。

ではこれからどのようなところが信頼のおけるところなのであろうか? はっきりしているのはCMSは問題でなくなるだろう。また画像の良し悪しを判断する目、昔流にいえば please color などレタッチセンスの重要さは、将来とも必要な人的資質であるだろう。しかしCMYKの網点を想像しながら行うレタッチの時代は終わり、画像の加工したい部分を頭の中で色空間の中にマッピングして、色空間の中でどのように色の座標を動かすのかというように、作業の理解が大きく変わる。それは色の仕事をする基盤となるカラーマネジメント技術の性質上、そうならざるを得ないのである。

実作業にはphotoshopを使うなど、大きな変化は無いかもしれないが、どのメニュー・ダイアログでどのように調整するのが良いか、悪いかという経験を積み重ねなければならない。これは近年のCMS議論で検討はずれの主張がよくあったように、これからレタッチにおいても誤解に基づくハウツーが多く出てくるであろう。しかも以前なら製版の人しか加わらなかったこの種の議論に、カメラマンからデザイナーまで加わって、自己理論で画像データのいじりまわしが始まるのだろう。

何年か試行した結果は、レタッチのアルゴリズムが出来上がって、人の意図を簡単な操作で実現するツールが誕生するかもしれない。それまでの間は、色彩について理論武装をしておかなければ、怪しいレタッチテクニックに振り回されてしまうだろう。今日、CMS論議が未消化のまま、色を扱う環境の方は整いつつあるようにもみえるが、ここで少々苦労してでも色のサイエンスに取り組んでおかないと、次の時代はリーダーシップを取れなくなってしまう危険性が高い。

幸い日本は世界に家電やカメラやプリンターを供給しているように、産業界に優れた研究の積み重ねがある。それらはCMYKの網点の仕事をしている時には縁遠いものであったかもしれないが、今やCMS時代を迎えたので印刷も同じ土俵に立とうとしている。6〜8色印刷、FMスクリーニング、画面とプリンタと印刷の色合わせなど、これら印刷の今日的なテーマの解決のためには、もう一度、色とは何か、色を見る人の側の特性はどうなっているか、産業界で色はどのように扱われているか、色がビジネスとどう関係しているのか、などを科学的に整理しておきたい。

関連情報 : 6/11(金)techセミナー 色の見え方の科学

2004/06/03 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会