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クロスメディアで重要なのは横にバランスをとること

クロスメディア通信教育講座の主任講師である田村明史氏に,クロスメディアパブリッシングのビジネスを展開する際に,キーとなる人材についてお話をうかがった。

JAGAT:JAGATとしては,クロスメディア分野の展開を進めるのに,パートナーとして十分な知識を持つ人間を育成したい。

田村:クロスメディアパブリッシングの分野ではプロデューサー的な人材と,技術的な知識を持つ人材の育成が考えられる。とくにこの分野では,プロデューサー的な要素は重要である。現在の問題解決のような過渡的な姿を考えることと将来あるべき姿を考えることは違う。そういうところをうまく考え合わせて提案していける知恵や知識が必要だからである。

JAGAT:DTPの分野でも今まで組版・製版だけを考えていたのとは違い,Webになるとセキュリティなど幅広く考えないといけない。

田村:今まで点で仕事を回していたのが,これからは面で回せるような人材が必要である。例えば中小企業診断士の試験は,8つの分野(経済学・経済政策/財務・会計/企業経営理論/運営管理/経営法務/新規事業開発/経営情報システム/中小企業経営・中小企業政策・助言理論)から出題される。しかし,これらを深く知っていることが必要なのではなく,いざというときは専門家を集めてチームを作って仕事をすることが必要となる。

知識の深さが問われる分野は業務独占はできるが,横に貫く知識は業務独占できない。例えば,弁護士や会計士など専門的な縦の知識が深いほうが収入になる。しかし,クロスメディアといったとき,横の知識,横のつながりを持ち,様々な分野に関する情報をある程度知っておかないとローコストで仕事はとれない。そのバランスが大事である。

確かにXMLの深い知識があるほうが収入に結びつく。しかし,ビジネス全体を育成するのならば,横に広く浅い知識がないと対応ができない。知っている範囲はできるかぎり広いほうが好ましい。そういう知識をもって,DTP,クロスメディアパブリッシング,データベース分野の人たちを組み合わせていかないといけない。

JAGAT:WindowsやLinuxのどちらがよいかなど具体的な技術の方向についてはJAGATではコメントしていない。

田村:テクノロジーは進化して陳腐化する。その行く先を読むのは難しい。見通すことができる人はいるので,そいういう人をみつけてるのも,プロデューサーの役目である。能力のある人を組み合わせるパズルの出来る人が必要である。

ただし,フリーで仕事をする個人の場合,コーディネーションの付加価値をお金に換算するのが難しく,なかなか収入に結びつかないことが多い。資格だけ取得しても、人的資源等がないとなかなか独立は難しいのが現状である。しかし,企業内ではプロデューサーの役割を担える人が求められている。

JAGAT:本当は企業内のクロスメディアセクションのリーダーはそういう人であってほしい。

田村:よくあるのが,仕事をとってきたが,社内でできなくて,外に丸投げしてしまうことである。企業に所属する人が,知識をもってクライアントに対していかに攻めていくか。業界の知識を取得して,社内のレベルを分析して,どのような手をうつべきか,という技能をもつことができればうまく仕事ができる。

JAGAT:客側も良く分からない状態で発注するケースがある。例えば,行政機関から文書の電子化の仕事がきて,全てをPDFデータにするように依頼された場合,果たしてそのとおりにするのがベストな解決方法だろうか?PDFのデータを開いてみたら,単なる文字だけの通達やニュースリリースだったということで驚くケースも多い。ドキュメントデータを作る側が適切なコンサルテーションを行ってきていないことがわかる。

田村:それをちゃんと整理して,相手が納得できる仕組みを提案できるとビジネスになる。半分コンサルティングになるのだろう。

■■田村明史氏プロフィール■■
ITコーディネータ。富士通、アスキー、インプレスを経て、独立。現在は、インプレス顧問、キャラクター・アンド・アニメ・ドットコム取締役ほか、複数企業の顧問および監査役を行っている。メディア業を中心に、経営戦略策定・戦略IT化等の助言や支援を行い、特に新規事業関連を得意としている。
JAGATのクロスメディアパブリッシング講座 必修知識習得 主任講師

2004/06/11 00:00:00


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