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中国の印刷業と日本への印刷物輸出

中国への印刷の直接投資は、同国のWTOへの加盟もあって盛んで既に10億USドルを超え、現時点で外資およびジョイントベンチャーが2200ある。このうち90%は香港企業からの投資によるものだが、アメリカ、日本等の先進国からの投資も増えており、2002年と2003年には新たに170の印刷産業への海外直接投資が認められた。
大規模な直接投資の例として、深センに進出した香港資本の印刷会社は、65ヘクタールの土地に180000平方メートルの建物を保有し大型の枚葉カラー平版印刷機40台を設備している。従業員数は10000人で、年間生産額は275億円である。ここで生産される印刷物の全てが海外に輸出されている。

このような海外からの直接投資の増加もあって,中国国内における製版,印刷設備需要も急速に拡大している。2003年における中国の印刷機械生産額は8.8億ドル(963億円)で、平版枚葉印刷機の輸入は2003年だけで933台、5.07億ドル、オフ輪の輸入は131台、1.26億ドルである。平版印刷機の需要は、輸入だけでもJAGATの推計による日本の平版印刷機の内需金額を越えている。 CTPの設置台数は250セットで韓国での設置台数の倍以上になっている。
このような中国の印刷業界の発展を見て、日本の印刷業界では中国への生産移転への脅威論が花盛りである。中国に進出する中規模印刷会社も増えている。

貿易統計による2003年の印刷物の輸入総額は前年比3.5%増の1051億円になった。中心とする労働力の安い地域からの輸入増加が増加の主要因だが、その主役はやはり中国である。中国からの包装資材の輸入は1993年に10億円強であったものが2003年には113億円と10倍にまでなっている。同期間における包装資材印刷物輸入増加量の81.5%が中国からの増加によるものである。このような状況は、例えば中国に先駆けて1980年代後半から増加してきた韓国からの印刷物輸入が、包装資材を中心に横ばいになるといった変化ももたらしている。中国からの印刷物輸入の増加は包装資材に限らずかなり幅ひろい分野に及んでおり、印刷物小分類33品目中18品目で輸入金額トップ3カ国に名を連ねている。

以上のように、中国からの印刷物の輸入は急増しているとはいっても国内需要の1%にも満たない。付加価値の小さい安価な日用品の輸入の増加をそのまま印刷物に当てはめたり、資材物印刷物が得意先企業が海外に工場を移転するとともに現地での調達になっていくことを商業宣伝印刷物一般に拡大して見ることが妥当なのかは今一度考えてみる必要がある。 もちろん印刷のグローバル化は進むだろうが、それは需要が拡大する地域での事業拡大、デジタルデータの処理・加工やコンテンツにからむ国際的なネットワーク作りを目指したもとの考えれるべきである。

印刷白書「2003−2004」より、抜粋要約)

2004/06/15 00:00:00


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