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クロスメディアにふさわしい技術基盤を考える

不思議なことに、1990年代以降のCPUパワーの爆発以前にオブジェクト指向は大いに話題になっていて、実際の応用の適用ができるようになってからは、Windowsのモジュールとか割と限られたところの話に終始した感がある。コンピュータ界全体がマイクロソフトの戦略に振り回されすぎてしまって、中立的な議論が弱まったのかもしれない。

しかしインターネット時代になってWEBサービスのようなことが実現し、もう一度トータルにオブジェクト指向を考える必要ができてた。オブジェクト指向でないものは、処理の手続きに従ったデータを用意することになるが、XMLでメタデータを記述することが多くなっているように、データそのものにデータの素性がわかる情報をつける基盤ができつつある。

データが処理手続きからの独立性を高めると、オンデマンド何々のような必要な時に必要なデータをかき集めて一気に処理することがやりやすくなる。このレイトバインドの考え方は、一つのデータを多様な出力形態に作り変えて出すクロスメディアには必須のものとなっている。クロスメディアとは、オンデマンド何々という処理の集合体のようなものと考えればよいし、そのためのコンテンツはメタデータをもったものにしておかなければならないといえる。

またSGMLの時はCALSのような官僚型のモデルがどうしても念頭にあったので、あらかじめ定義をきちっと決めておいて、そこのルールの中にコンテンツを閉じ込めるような見方をしてしまったが、インターネットともに発展したXMLでは、業界ごとなど個別にルールが決められて発展するシステムの間同士でも、将来は処理をまたがって行えるような技術を確立しようという考えになり、セマンティックWEBのフレームにあわせた開発の方向が見えてきた。

テッドネルソンが「リテラリーマシン」を出した1987年にはSFのように思われていたことが、今日ではかなり実現してしまったように、次々と新たな技術が個別に出てくるように見えても、(多くの人には)見えざる大きな一貫した流れに沿う技術のみが蓄積されて大きな仕事をするように動いていることがわかる。コンテンツは永続的に利用できることが望まれるものなので、こういった大きな流れに沿った技術でシステムを考えることが重要である。

通信&メディア研究会会報 VEHICLE 183号より

2004/07/06 00:00:00


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