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新生企業立ち上げの背景と新たなる展開

コダック ヴァーサマーク社

2004年1月,世界屈指の高速バリアブル(可変)データのインクジェット印刷技術を有するサイテックス・デジタル・プリンティング社は,イーストマン・コダック社の買収によって,「Kodak Versamark, Inc.(コダック ヴァーサマーク社)」に社名を変更し,新たに市場展開を目指しております。JAGATでは,こうした動きに着目し,今回の買収に至った背景とその今後について,コダック ヴァーサマーク ジャパン株式会社セールス&マーケティング部統括マネージャー 南文輝(みなみ・ふみてる)氏にお話を伺いました。
聞き手:社団法人日本印刷技術協会 研究調査部 参事 松縄正彦

企業買収に至った背景

サイテックス・デジタル・プリンティング社は,周知のとおり大変業績も良く,一般的には,買収という形態を取らなくても,十分に経営状態は良好であったはずである。これは,カラープリンタやPC,デジタルカメラの普及により育ってきた新たな市場として,デジタル印刷市場に着目したことに起因する。
この買収は,新たな市場に素早く対応するというコダック流の成長戦略の一部でもある。サイテックス・デジタル・プリンティング社がバックアップとなる企業を探していたところ,デジタル印刷を展開する企業を探していた同社との思惑が一致したのである。コダック社の塗布技術やインク材料技術などの強みを生かせること,同社の販売・流通チャネルも生かせること,またサイテックス社の株主にとっても,メリットがあり,関係者それぞれが良好になれることを確信した上での合意であった。さらにホミ・シャミール氏がそのまま社長に迎えられたのは,同氏の商業印刷分野における経験を今後とも経営に生かせると考えたためでもある。
コダック社では,ハイデルベルグ社からネクスプレス・ソリューションズ社も買収しており,これでデジタル印刷業界において,中小ロット分野と大量ロット分野の双方を狙う体制が整ったことになる。特にコダック ヴァーサマークの製品は,高速バリアブル機能によって,請求書など個別のバリアブルデータを大量印刷するのに適し,日本市場においても金融・カード会社などを中心に展開を強める。

最新機種Kodak Versamark VX5000eプリンティングシステムの性能と市場戦略

今回drupa2004に出展した同機種は,印字解像度を上げ,印刷品質の向上を実現した。解像度は,300×1200dpiに上げ,印刷スピードは,毎分100mを維持している。高精度・フルカラー・大量高速印刷に加え,バリアブル機能も搭載し,欧米ではトランザクショナル・ドキュメント(請求明細書など)を中心に展開している。日本ではあまり例を見ないが,カラーのスポット広告や画像を入れて付加価値を高めることも可能になる。日本でも,こうしたバリアブルカラー印刷機能を活用することで,新たなビジネス展開が期待される。しかし当面は,既存の市場に対して,このような付加価値を高めるソリューションを提案していく。今後は,プロダクションプリンティング分野にも注力し,UVインクなどの開発を機に,紙以外のパッケージやダンボールなどの分野も視野に入れていく。オフィスユース・マーケットが飽和傾向を強める中,新たな市場としても注力する。
今後の構想として,長期的には既存のオフセット印刷機をデジタル機に置き換えていくことも目指している。現在,インクジェットのインクの最小吐出量は1ドット当たり,約15ピコリットル程度であるが,これが,4ピコリットル程度にできれば,デスクトップのインクジェット・プリンタと同等の品質となる。また,毎分100〜150mの高速印字を実現することにより,限りなくオフセット機に近づけることができると確信している。

JGAS2004出展に向けて

国内最大の印刷機材展JGAS2004(7月14日〜17日:東京ビッグサイト)では,上述のVX5000eをネクスプレスとの共同ブースとして出展する。このことで,イーストマン・コダック社のグラフィック コミュニケーションズ グループの存在感を強調したいとも考えている。今回出展テーマでもある「New advertising media with one-to-one customized communications -ワンtoワン・カスタマイズ・コミュニケーションで実現できる新しい広告メディア」とは,こうした今までにないメディア,例えば請求書を含めたビジネスメールをワンto ワンマーケティングの視点から,個別にカスタマイズされたコミュニケーションツールとして,さらにそれを発展させて新しい広告媒体として活用することを狙いとしている。また,ワンto ワンについては,顧客の購買傾向に合わせた情報を作成するため,情報セキュリティについても留意しなくてはならず,これに関連してデータ管理や処理までもがビジネスとして考えられる。今回の出展により,VX5000eの機能性はもとより,こうした派生ビジネスをも提示することで,印刷会社のみならず,彼らへの発注企業に対しても,その製品力と汎用性を啓もうしていく。

本ページに関するお問合せ先:コダック ヴァーサマーク ジャパン株式会社 セールス&マーケティング部
住所:東京都千代田区神田紺屋町15番地 神田TKMビル4F
TEL:03-3256-2613 FAX:03-3256-2616

2004/07/07 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会