ブロードバンド市場が拡大していくと,その環境に対応するビジネスモデルが重要になってくる。消費者のライフスタイルも変化していき,企業側は新たなコミュニケーション手段を考えなくてはならない。
今回は,アルファブリッジのコンテンツ営業部の町塚栄介氏と金子抄恵子氏に次世代のブロードバンドビジネスについてお話を伺った。
ブロードバンド総合マーケティング事業を展開
住友商事のグループ会社で,ブロードバンド総合マーケティング事業を展開するアルファブリッジは,2001年2月に事業企画会社として設立され,2002年4月に事業会社に移行し,コンテンツの配信,企画・制作,流通支援の3つの事業領域でサービスを提供しており,凸版印刷,大日本印刷も株主となっている。
インターネットの普及により,双方向のさまざまなコミュニケーションが可能になってきている。タイムリーな情報提供がコミュニケーションスピードのアップにつながり,アプローチの方法が変化すれば新たな顧客層の開拓も可能になる。
同社では,売上拡大,顧客維持,Webアクセス増加といった課題にこたえるべく,ブロードバンドをキーとして次世代の各種ソリューションを展開している。
コンテンツ自動配信サービス「PuCa」
コンテンツ配信分野では,2002年2月にコンテンツ自動配信サービス「PuCa(プーキャ)」の試験サービスを実施,11月より本サービスを開始した。ブロードバンド環境を活用し,さまざまなコンテンツをユーザのパソコンにダイレクトに届けるサービスである。ユーザは,同社が無料で提供するクライアントソフトPuCaプレーヤーをインストールすることにより,自分の選択したコンテンツを,好きな時に閲覧することができる。コンテンツが届くと,デスクトップ上にアイコンを自動生成,新着ポップアップが知らせてくれる。
従来のメールマガジンは,メールアドレスの取得が必須で,メールの開封からWebサイトに誘導するまで,たくさんのステップが必要になる。PuCaはメールソフトを使わないためメールアドレスなどの個人情報が不要。ブロードバンドならではのリッチコンテンツ配信が可能で,開封と同時にワンクリックで見たい情報ページに誘導できる。同社の調査では,メールマガジンに比べて,5〜8倍の開封率を実現しているという。
既に流通,サービス,学習コンテンツなどの教育関連,エンタテインメント分野等の大手企業に利用されている。
またB2Cのサービスだけでなく,B2Bの案件も最近増えている。例えば企業の拠点,本社から全国の営業所,支店や外部パートナーや代理店など限られたターゲットへの情報配信のニーズが高まっているという。この企業向け配信サービスでは,紙の資料や映像などを一括してブロードバンドを使い,パソコンに届け,管理することができる。資料製作費用や配送コストの削減にも役立つし,何より情報配信の即時性が大きなメリットである。
デジタルカタログ企画・制作サービス「ebook Lab.」
コンテンツ企画・制作分野では,2003年4月に印刷資産活用企画・制作サービス「ebook Lab.(イーブック・ラボ)」を開始した。
既存の印刷物を新たな形で活用したいというニーズにこたえて,印刷資産をデジタル化し,ブロードバンドコンテンツへと進化させるサービスである。印刷物用デジタルデータがない場合には,印刷物を同社でスキャニングしてブロードバンド化する。その際一からHTMLを組み直す必要がないところが,今までの電子カタログと大きな違いであろう。
紙面のイメージをそのままパソコン上で再現しているため,紙をめくる感覚で閲覧できる。そこに電子カタログならではの動画や音声などが加わり,紙媒体では表現し切れない多彩なコンテンツ表現が可能になる。拡大,リンク,ページ検索,アクセス解析機能など多彩な機能が用意されている。しおり機能等の付加価値機能も順次追加されており,さらなるサービスの充実を目指している。
同社では,電子カタログの制作にとどまることなく,企画からプロモーションまでの一環サービスを提供していきたい考えである。
また「PuCa」を活用することによって,電子カタログを閲覧者のパソコンに直接配信することもできる。その結果会員として囲い込みをして,より付加価値の高いサービスを提供できる。Webサイトでの情報公開というプル型の戦略とそれによって得られたPuCaによるプッシュ型の戦略をうまく組み合わせていく仕組みになっている。
活用事例としては,流通・通販関連会社向けの製品カタログ・パンフレットから新聞・雑誌,IR情報までさまざまな業種・分野に採用されている。
ブロードバンドカタログ総合サイト「Mintmall」
コンテンツ流通支援分野では,2003年12月に国内初のブロードバンドカタログ総合サイト「Mintmall(ミントモール)」を開設した。
ebook Lab.でデジタル化した通販各社のカタログをカテゴリーごとに一堂に集め,ワンストップでの閲覧を可能にしたサイトである。競合する会社の電子カタログが隣に掲載されるケースもあるが,新規顧客の獲得につながると評価されている。
デジタルカタログは年輩のユーザにも好評で,検索サイトからサーチするより簡単に,いろいろな会社の通販カタログが見られるので,楽しみながら買い物できる。また,注文ページへのリンク設定でスムーズに商品購入に誘導できる。
Mintmallでは今後カテゴリーを増やしていき,新しいカタログショッピングの形を提案していきながら,カタログ掲載企業の売り上げアップに貢献していきたいという。
印刷会社とのパートナーシップを推進
今後も印刷物需要は減らないだろう。ネットで確認してからカタログ請求をするユーザも多く,その場合の購入率が高いというデータもある。
今後は大手ISP,携帯,クレジットによる課金・決済サービスを通じたブロードバンドコンテンツの流通支援のサービスや,次世代携帯コンテンツとの連携,テレビなどの情報家電向けサービスなども視野に入れてビジネスを展開していく予定である。
印刷会社のビジネスがソリューション提案型へと転換していくならば,例えばPuCaやebook Lab.とアライアンスを進めるのも一つの選択であるかもしれない。
カタログやパンフレットの製作において,付加価値を付けた2次利用を提案できるのも印刷会社ならではである。印刷物のデータをもっている印刷会社に強みがあるのは当然であろう。現に印刷会社からの問い合わせも多く,同社とパートナーシップを組んでクライアントに電子カタログの制作から配信まで提案していくケースも増えている。