インターネットのオークションと言えば日本では「ヤフオク」がポピュラーだが,世界的にははるかに巨大なebay(イーベイ)が君臨している。オークションと言ってもコンピュータが動いているだけだが,ebayでの取引額は年間2〜3兆円規模に達し,ebay自身の手数料売り上げも2004年第1四半期には約800億円にもなり,前四半期の5割増の勢いで伸びている。株価も絶好調で,ハイテク株が下がる中でebayが株式相場を上向きに影響を与えるほどである。
ebayの登録者数は世界で億の単位ほどいて,これも伸びている。その約4割が実際に売り買いをしているアクティブなユーザで,この比率も伸びている。この数は,昨年ebayが買収した決済の会社であるpaypalの登録者数と同じくらいである。要するにebayで売り買いをして,paypalで決済するのが主流になっているわけである。
日本人にはネットビジネスはリアルビジネスよりも一けた小さいものという感覚があるかもしれないが,ある人々にとってはまさにそこがビジネスの主戦場になりつつある。しかも個人が不要品を売るというところから,趣味と実益のサイドビジネス,店舗の販促のためのインターネット出店,B2Bなどなど,規模の小から大まで混在しているところであり,ebayの中でビジネスをスタートして成長させることができるほどになった。
昨年見た例では,パソコンの部品は2年のユーザサポート期間を過ぎると放出されるわけだが,ハードディスクが1000台100万円で出ていた。その後しばらくして同じ型番が10台2万円や3台5000円で売りに出ているのがいくつもあった,つまりebayで仕入れてebayで売っている人(店)がいるのである。廃業につき全商品を一括で引き取ってほしい,というようなものも時々ある。ビジネスのライフサイクルすべてがebayにはある。
もし売り買いのすべてをebay/paypalで行っていると,通貨も動かずカード会社も使わず,ただpaypalの口座の中で出納が増減しているだけで,どこにも税金を払っていないように思える。こんな法規外のことがなぜまかり通るのだろうか。今はまだアメリカはこういったネット経済の成長を放任しているのである。
第1四半期には3億以上の商品が載せられた。これも急増している。しかし個人の売り買いなどは,まだ世界的な広がりはあるにしても,そのうち飽和するだろう。だがebayの特徴は数にあるのではない。この膨大な数の取引量をこなすソフトやシステムが練られていっていることにある。ebayはシステム関係以外は,店員はおらず事務員もいない無人の会社のようなものだから,ここででき上がったビジネスのシステムは,今後さまざまなビジネスに波及するだろう。
今,大きな問題となりつつあるセキュリティや利用者保護という点でも,ebayなどは先端的な技術の開発をしているように思える。こういったことがECの障害になるなら,逆にebayがさらに伸びる要因にもなるだろう。
『JAGAT info8月号』より
2004/08/22 00:00:00