製本技術の最新動向
小ロット,スキルレス,省力化への対応
製本加工は、中綴じ機,無線綴じバインダー等を中心に、多岐に渡る加工工程が存在している。一部では印刷から一貫ライン化も行なわれているが、一品目毎に製本・加工内容が異なり、それぞれの品目に対応する為、設備構成も多種多様とならざるを得ない。また、消費者のニーズも多様化し、市場流通在庫の適正化もあり、益々、多品種・小ロット化が加速している。
大ロット対応の高速化やインライン化から、ここ数年は、自動プリセット化による、セット変え時間の短縮、スキルレス化が進められている。また、作業負荷軽減の為、付帯作業の機械化や手作業の機械への置き換えが加速してきた。
品質の向上
乱丁事故は、製本工程としての致命的な欠陥であり、以前よりヒューマンエラー対策として絵柄検知器が導入されてきた。
従来は絵柄の濃淡を検知する方式が主力で、文字物やインキ濃度の影響を受けるなど、検査精度には限界があった。昨今の品質要求度の高まりからCCDカメラ方式の検知器が開発され、現在は高性能,低コスト化が進み、導入事例が増加している。
付加価値商品への取組み
雑誌関連では、付録綴込みの規制緩和以降、通常の本紙に特殊な付録をつける仕様が増加している。
以前から普及してきた、CD−ROMを含めて、様々な形態のパッケージを綴じ込める様な工夫や専用設備の導入が進められている。アタッチャー貼り装置や通常の丁合機でフィードできないものの補助装置などである。 また、本年度は条例改正に伴う、成人図書の立ち読み防止対策が必要となり、これに対応する設備の開発も急がれてくる。
ICタグの動向
新たな動きとして、ICタグが上げられる。現在は一部書店や図書館などで使用されるに留まっているが、万引防止対策として書店からの出版業界としての導入の要望は高まっている。同種の磁気タグや高性能で書き込み情報が大きいICタグなど種類も様々であるが、現在流通の分野での実証実験や規格の統一化が進められていて、今後の動向に注目したい。
接着技術
現在、無線綴じは、比較的安価で高速処理に適しているEVA系(エチレン酢ビ系)ホットメルト接着剤を使用している。製本にEVA系ホットメルトを使用し始めたころに比べ、各段に接着剤の性能がアップし、多様な用紙,印刷物に対応し、接着トラブルも目立たないようになってきている。しかしながら、耐熱・耐寒,耐候性では完全と言えず、耐インキの残留溶剤での劣化促進等も危惧されている。
現在、ヨーロッパを中心に広がりを見せている湿気硬化型PUR接着剤(ポリウレタン系反応性ホットメルト)が、国内でも徐々にではあるが普及の兆しが見えてきている。このPUR接着剤は、EVA系ホットメルトの弱点である、接着力・耐熱・耐寒・耐候性や耐インキ溶剤にも強いとされているが、半面現状での接着剤単価,専用塗布装置の設備導入,固化時間など一部デメリットもある。
現在、設備メーカーと接着剤メーカーがタイアップしながら塗布装置の改良が進められている。ノズル塗布タイプと従来のロール塗布タイプに二分されているがどちらも一長一短であり、今後の更なる設備改良と低コスト化が普及へのキーとなるものと思われる。
環境対策
商業印刷物を中心に環境対応が強く求められる様になってきている。
製本・加工では、紙がリサイクルし易くなる方向での規制が強まり、エコマークの認定には、樹脂加工(PP貼り)や通常のEVA系ホットメルトが禁忌品に指定されている。この為、先述のPUR接着剤、又は難砕裂化の認定が取れたEVA系ホットメルトの使用が必要となってきている。
購入者が家庭で分別がし易い加工を求められており、カレンダーについては、金具留めからインキ熱圧着加工や紙とホットメルトによる固定する方式にシフトしつつある。
(執筆:大日本製本株式会社 北野 誠之氏)
2004/09/07 00:00:00