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校正業務を効率化するソリューション

印刷物製作のデジタル化はDTPやCTPの導入によってほぼ完成に近い領域へ到達しつつある。しかし,複数の企業が関係する校正作業は,デリバリーや回覧の手間が必要であったり,リモートプルーフをおこなうにはカラーマネジメントのノウハウや多大な設備投資が必要となる。したがって校正のやり取りは,旧態依然のフローに留まっていることが多い。このような背景のなか,クライアントやデザイン会社自身のプリンタを利用したリモートプルーフを実現するサービスが提供され始めた。富士ゼロックスの清須徹哉氏と大矢高也氏に,inter-Graphicsのサービスについて話を伺った。

印刷業界の変化とクライアントの変化

近い将来の印刷業界の方向性は3つある。コンテンツがフルデジタル化していくこと。すべての工程がネットワークにつながっていくこと。TPOに応じたマルチメディア化,クロスメディア化という流れである。
また,クライアントサイドにも変化が起っている。例えば,トヨタ自動車はコストや時間・品質管理を重視して,JMPAの基準を採用し広告出稿のやり方を変えた。ここでのポイントは,クライアントから動き始めたということである。トヨタだけではなく,ホンダ,日産,花王などでも,同様の動きが始まっている。クライアントが属している様々な業界自体でも,これからの時代を生き抜くというサバイバルに向け試行錯誤しており,印刷発注に対する考え方も変わりつつある。
印刷業界の中でも,国外にプリプレス業務や印刷そのものを移管する動きも現実に起きている。このような環境のなか,印刷業にとって重要なのは,クライアントから見たワークフローの全体最適化をおこない,クライアントの満足と信頼を得る事である。

プルーフの定義と品質への評価

富士ゼロックスでは,「校正」を色校,念校から上流のラフ原稿の確認やカンプも含めて,「コンファメーションプロセス(確認工程)」という定義をしている。この工程は,複数の人間が確認してOKをもらうという作業であり,その確認作業に非常に時間とコストがかっている。それに対して有効なシステムを作りたいと考えた。
また,品質に厳しい印刷会社の視点で見ると,プリンタのプルーフでは印刷の校正として相応しくないと考えるかもしれない。しかし,クライアントや雑誌・カタログを見る読者の視点で見ると,それで十分だという部分が大勢だろう。
現在の平台校正は品質は高いが,スピード・コストの面でクライアントを満足させているとは言えない。「使える品質」にすることで,スピード,コストというクライアントの要求をより満足することができる。それを手助けするサービスが,inter-Graphicsの「カラーマッチングRIPサービス」である。

カラーマッチングRIPサービスの全体像

広告・出版物制作のプロセスでは,デザイン制作から印刷までの一連のワークフローを,複数の企業によるコラボレーションによって進行する。しかし,企業ごとに作業環境が異なっていたり,関係する企業もその都度異なるケースが多い。標準的なデジタルワークフローを構築して,関係する会社間の整合を取ることは現実には困難である。個々にデジタル化されてはいても,関係者間の全体のワークフローから見ると効率的とは言えない。例えば多くの人間が関わる校正・確認作業においては,依然として校正刷りをバイク便で運ぶといったことが取り残されている。

このような問題を解決するソリューションとして,富士ゼロックスはカラーレーザプリンタとカラーマネジメントソフトウエアを利用したリモートプルーフソリューションを提案してきた。しかし,このような考えのリモートプルーフを行うには,ワークフローの関係者全員が,色合いの整合の取れた出力環境があることが前提となる。つまり,同一メーカー,同一機種のカラープリンタが必要であると同時に,それを運用するノウハウも各関係者が持っていなければならない。環境整備のための投資も大きく,ノウハウ取得や教育には時間も必要である。関係者が環境と知識を一斉に整えるのは,現実的とは言えなかった。出力はデジタル化されても,その結果をバイク便を使ってわざわざ運ぶことが依然として多いことが示すように,「色」という情報を関係者間で共有することは非常に困難であったと言える。

inter-Graphicsでは,広告・出版物制作に関わる関係者が保有している印字方式やメーカーの異なるカラープリンタを利用し,各々のプリンタに適したカラーマッチングの処理をセンターサーバで集中的に行う。このことで,コラボレーションの妨げになっていた各企業間で異なるカラープリンタの出力問題を解決し,色に関する情報をスピーディに共有することができると考えた。

カラーマッチングRIPサービスの利用手順

校正・確認用データの制作者が,「Adobe PDF JobReady」というソフトウエアを利用して,DTPアプリケーションで制作したデータから送稿用のPDFを生成する。このソフトは,inter-Graphics専用に標準化および暗号化したPDFを生成し,センターサーバへアップロードするもので,ユーザに無償で配布される。 PDFを生成した後,データ送信先のチェックを行い,センターサーバへデータをアップロードする。この際,「Adobe PDF JobReady」により自動的にセンターサーバにアクセスし,データを送信することができるので,原稿をプリントアウトするような簡単な操作のみでよい。センターサーバは,データがアップロードされると自動的にデータのチェックを行い,データ送信先のプリンタに適したカラーマッチングとRIP処理を行い,処理が終了すると各送信先メンバーへメールで通知する。通知を確認したメンバーはセンターサーバにログインして,自分宛のカラーマッチングRIP処理済みのデータをダウンロードし,プリントアウトを行う。

サービス利用するには,プリンタカラーデータの登録が必要である。各利用者が使用するプリンタごとにカラーマッチング処理をおこなうため,プリンタ個体の基礎情報とプリンタのカラーデータをセンターサーバのデータベースに登録する。同一プリンタ,同一個体でも,必要な用紙の種類ごとに登録を行う。プリンタの経時変化や部品交換などによる色味の変化の程度によっては,再登録が必要である。
このサービスによって,印刷完成時のイメージをそれぞれの環境にあるプリンタを使用して,より早い段階からクライアントに色の状態を確認してもらうことが可能なので,コストと時間の大幅な削減が可能となる。

今後の展開

このサービスは,ある種の「標準」を提供し,共通のプラットフォームとなることを目指している。そのため,富士ゼロックス製のプリンタに限定しないオープンなサービスとした。また富士フイルム,アドビ,大日本スクリーン,モリサワ,エプソンといった強力なパートナーと連携をおこなう。さらに,オープンでネットワークを活用したコラボレーションのための,さまざまなサービスの準備を進めている。

(JAGAT Info 10月号より)

2004/09/06 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会