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実用化が進展するバリアブル印刷のための編集ツール

 InDesignのプラグインとして動作し,高度なページレイアウトをサポートするバリアブル編集と,パーソナライズされた電子メール,Webパブリッシングが特徴のPersonal Effectについてサカタインクスの池田芳仁氏にお話を伺った。

オンデマンドによるバリアブル印刷の提案

 インキメーカーであるサカタインクスでは,XEIKON社のオンデマンド印刷機や,Oce社のデジタル印刷機を販売している。オンデマンド印刷機やデジタル印刷機の用途の1つに,バリアブル印刷がある。
以前のオンデマンド印刷機市場は小ロット印刷一辺倒であった。しかし,ロール紙を使用するXEIKON社のオンデマンド印刷機は大量のバリアブル印刷を行うことができるため,弊社では販売開始当初からオンデマンド印刷機によるバリアブル印刷を提案してきた。

 バリアブル印刷を行うためには,バリアブル印刷データを作り出すためのシステムが重要である。そこで,顧客とともに各種システム構築を行ない,その作業の中でXMpie(エックスエムパイ)社との出会いがあり,2002年にPersonal Effect(パーソナルエフェクト)の日本国内独占販売権を取得し,販売を開始した。

Personal Effect開発の経緯

 XMpie社では,ホームページなどのインターネットの世界で,バリアブル印刷の知見を使えないかと考えた。IT企業が主導のインターネットの世界では,良いデザインをグラフィカルに作ることが難しい。そこで,グラフィックアーツのテクニックを用いたクリエイティブな作業から,プログラムレスで良いデザインを作り出すためのソフトウェアを開発した。
 また,企業では顧客情報や商品情報などをデータベースに蓄積している。ワンソースマルチユースのために商品データベースを一元化する動きも出てきた。一方,顧客への情報発信メディアも,デジタル印刷機による印刷物,E-mail,ホームページ,モバイルなど各種存在する。

 しかし,企業側の蓄積した情報と,各種情報発信メディアとをうまくつなぐツールがなかった。企業側が蓄積している情報を利用して,立案者の意図通りに,DTPのような容易さで,各種の情報発信メディア用に1to1のバリアブルデータをWYSIWYGで作り出すツールが,Personal Effectの目指す姿である。

効果的な1to1マーケティングをするために

 個人向けのDMやE-mailなどは,1to1マーケティングに使われる道具である。企業としては個々の顧客にアプローチするために,E-mail,DM,提案書,ホームページ,モバイルなど各種のメディアを使用する。しかし,従来のシステムではメディアごとに異なった仕組みやデータベースを使用するため,本来の1to1にならないという問題が生じたり,またDMも住所と氏名が差し替えられている程度で,どの顧客にも同じ内容であり,レベルが低いパーソナライズであった。

 1to1にとって個人に対応した情報を提供することは当然必要なことであるが,最も重要なことは顧客との対話,インタラクティブ性である。顧客にDMを送付したら,そのDMに対する顧客のレスポンスを把握し,レスポンスに対応した次のステップに進むということが本来の1to1である。しかし,以前はそのためのツールが存在しなかった。
 また,従来の印刷業界では,単に紙に印刷して送るだけで,そのレスポンスを把握して対応するサービスまでの考え方はなかった。印刷業界が本当の情報サービス産業になるためにはこの考え方が必要であり,レスポンスを把握し対応できるサービスを行うためのインフラを準備する必要がある。

 しかし,顧客ごとの紙メディアを制作するだけでもハードルが高いにもかかわらず,各種メディアごとのツールを使用して,E-mailやホームページなども含めたクロスメディアパーソナライゼーションを実現するには,時間,コスト,複雑さ,コミュニケーション問題等が絡まり合い,非常に複雑な仕事の組み合わせが必要であった。このような問題を解消するツールが,Personal Effectである。

3つの製品で構成されるシステム

 Personal Effectはクライアント・サーバ型で,3つの製品で構成されている。クライアント側はuPlan,uCreateの2つのソフトウェアに分かれ,サーバ側はuProduceという構成になっている。  uPlanは,プランナーが商品データベースや顧客情報等をもとに,各種のビジネスルールを作るツールである。
 uCreateは,ビジネスルールで作られたものを,紙メディア,ホームページ,E-mailなどにどのように表現するか,レイアウトやデザインを手助けするデザイナー用のツールである。

 uPlanで作ったビジネスルールのファイル(プランファイルという)と,uCreateで作ったデザインファイルが,キャンペーンの設計図になる。これをuProduceサーバにアップロードする。uProduceはこの設計図をもとに個人情報,商品情報などのデータベースを参照して,顧客ごとの各種メディア用データを生成する。

 uProduceはインタフェースがWebブラウザのため,デザイナーやプランナーが遠隔地でもインターネットを使用してアップロードすることができる。また,企業と印刷会社の協業を促進することもできる。
 さらに,1システムで顧客ごとの各種メディア用データをすべて生成するため,統一性のとれたクロスメディアの運用ができる。

クロスメディアに対応するPersonal Effectの特徴

 この製品は,完全なクロスメディア対応であり,紙メディアだけのバリアブルパーソナライゼーションではない。Web,E-mail,モバイルを含めたすべてのメディア用データを1システムでパーソナライズするものである。

 プランナー用のuPlanとデザイナー用のuCreateという利用者に合わせたツールを持っている。従来のバリアブルデータ作成ソフトウェアは,両者を一つにしたソフトウェアのため,組版機能やデータベースの取扱機能が低いという問題があった。uCreateは単独のソフトウェアではなく,一般のDTPソフトウェアのプラグインとして提供している。紙メディアの場合はAdobe InDesignのプラグインになっており,ホームページの場合はAdobe Golive,MacroMedia Dreamweaverのプラグインになっている。このため日本語組版機能が強力で,プロのクリエイティブなデザインをそのままパーソナライゼーションできる。

 また,入力系としては一般企業で使用されているMicrosoftのSQLやACCESS,IBMのDB2,ORACLEなどのRDBに対応しているとともに,CSV形式やEXCEL等にも対応している。
 さらに,マルチデータベース,マルチテーブルに対応しており,顧客住所はEXCEL,商品情報はORACLEデータベースでも,それらを同時にアクセスして1つのルールにすることができる。また,顧客情報は顧客テーブル,商品情報は商品マスター,売上情報は売上ファイルというように,データベースの中が幾つかのテーブルに分かれている場合でも,串刺しのようなルールを作ることができる。
 また,紙メディアのパーソナライゼーションからスタートして,クロスメディアにアップグレードするなど,小規模からスタートして順次機能アップすることができる拡張性を持っている。

(テキスト&グラフィックス研究会)

2004/10/08 00:00:00


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