航空券やホテルの予約はインターネットで行った方が安いようになった。それは店舗のない方がコストがかからないとか、人件費がかからない方が安く提供できるからだが、もうひとつはギリギリ間際にまで商取引ができて、売れ残りが少なくなるという理由もある。旅行代理店の営業マンの拘束や営業時間の制約がないことが、受発注の関係をスムースにしている例である。また顧客側が少々努力を惜しまなければ、営業マンが不要になる領域があることも意味している。
一方印刷業界ではやはり営業はフェイスtoフェイスでならないという面もある。とはいっても顧客側からすると営業マンの顔が見たいわけではなく、仕事の相談相手を求めているのであって、自分の要求を分かってもらいたいからフェイスtoフェイスの機会が意味を持つ。この役割を果たしている営業マンは、ネットワーク化で仕事がなくなることはないであろう。しかしそういう仕事がどれくらいあるのか、試算してみなければならない。ひょっとしてフェイスtoフェイスの必要性がほとんどない分野も出てくるかもしれない。
なぜなら印刷物はマニュアルから販促物まで、たいてい繰返し発注される中で、外観上はそれぞれ様式化されるものだからだ。書籍など永く残す目的のものを除くと、印刷物の情報が活性である期間は短い。それで一定期間ごとに情報を更新して印刷再発注するような使われ方になる。名刺は、肩書きや部署名が変更になれば作り直すが、この程度だと既にネット経由で無人で受発注から制作までするシステムが使われている。これは印刷の自動販売機のようなものだが、次第に案内状やペラのカタログなどが、やはりネット経由のイージーオーダーとして広がりつつある。
かつて印刷のECとはオークション的なものを考えがちの時代もあったが、今は受発注双方ともの共通の利害である「営業レス」というスタイルも印刷ECに加わっている。しかし営業マンが不要なわけではなく、こういったネット上での制作システムの売り込みや、発注者側のトレーニングなど、開拓的な仕事に営業の比重がシフトするわけである。さらにこういったシステムを永く使ってもらうためには、印刷物の営業というよりも、顧客がシステムを使いやすいように、また受注側の作業も合理化になるように改善点を見つける役割を営業マンが担うことになるだろう。
それも人的に頑張るのではなく、テンプレートによる自動組版技術を高める一方で、今まで気の利く営業マンが行っていた注文履歴管理や、現場の方の作業履歴管理などトランザクション・ログ解析などもネットワーク上でデータが活用できるようにしていかなければならない。つまり営業や制作現場を無人化していくのに応じて、MISと連動した生産管理のシステムも必要になっていくのである。
テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 224号より
2004/10/29 00:00:00