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InDesignを活用したXML自動組版ワークフロー

データベースを利用したInDesignによるXML自動組版システムを中心に,マルチメディア制作から印刷まで効率良く対応するワークフロー構築について株式会社リョーインの北村祐輝氏にお話を伺った。

新しいワークフロー導入の背景

 リョーインは設立当初,印刷・複写事業をメインにしていたが,最近はマルチメディア事業,情報通信事業,映像事業へと展開している。
 初めは紙媒体のみを扱っていたが,多様なドキュメントの製作工程において,あらゆる情報が集まってくるため,媒体にとらわれず顧客ニーズに合わせてさまざまな形で情報を加工し,提供する情報サービス企業として発展した。そのノウハウを活かし,蓄積された情報をマネジメントし,紙媒体,デジタル媒体といったクロスメディアを利用した企画デザインから制作・アウトプットまでをトータルに支援する。ワンソースマルチユースと言ってもいろいろな形があるが,本当に効率的なワンソースマルチユースの実現が目標であり,強みと考えている。

 ワークフロー構築のきっかけとなったのは,用品メーカーの商品総合カタログである。そのメーカーの問題点は,印刷会社にカタログを発注すると,カタログにはすべての商品の情報が盛り込まれているが,手元には紙でしか残らない。せっかく画像,スペック,概要などの情報があるのに二次活用できない仕組みになっている。そこを何とかしたいということであった。
 そこには4つの課題が存在した。1つはXML自動組版である。これには,組版作業の効率化とXMLデータの二次活用という課題が含まれる。今すぐ二次活用というわけではなく,2年後,3年後に,業界のデータ交換の形式としてXMLがスタンダードになるであろう。そのときにデータの蓄積をしていたのでは遅いので,今から取り組んでおきたいということである。

 2つ目は商品撮影のデジタル化である。撮影の効率化と,将来二次活用するに当たって,印刷用のCMYKとデジタル用のRGBデータを二重に管理したくないので,RGBで管理する。  3つ目はカラーマネジメントである。撮影時点でのカラーシミュレーションと,色校正の誤差を解消したい。その際,ジャパンカラーを活用したカラーマネジメントをしたいということであった。
 最後は,コンテンツ管理である。総合カタログになると,メーカーの下請けのメーカーがあり,そこからのデータ入稿を効率化する。

 従来,データも印刷会社が持っていて,その印刷会社に囲い込まれている形であったが,そうではなく,データはメーカーが持ち,そのデータを活用して印刷会社にも発注できるようにしたい。それが自動組版であり,ジャパンカラーを使ったカラーマネジメントであるという意図があった。それにより,納期短縮,コストダウン,さらにカタログを作った時点でコンテンツデータベースができるコンテンツ管理,そしてデータの二次活用,ワンソースマルチユースを狙っていた。

問題点を解決するワークフローの変化

 従来工程では,ページ数が多くなると入稿の手間がかかる。また,メールやFAXで入稿するデータを二重入力したり,成形し直したりする。画像補整ミスや入力ミス,さらに点数も多いため組版作業が非効率である。
 色校正での誤差や,校正時にメーカーまで遡って確認しようとすると,メーカーにFAXを送り,さらにメーカーから下請けのメーカーにFAXを送るというように,校正の手間がかかる。また,最新の情報がどう管理されるのかという点や,データの二次活用がしづらい。このような問題からコストや,納期,担当者の手間という部分につながっていく。

 これらの問題点を回避しようと考えたものが,XML自動組版による非効率な組版作業や二重入力,入力ミスの防止である。また,カラーマネジメントにより,画像補整ミスや色校正誤差をなくし,さらにコンテンツ管理によって,常に最新の情報を集め,二次活用をする。コンテンツ管理には,コンテンツデータベース,即ちネットワークで使えるデータベース付きのファイルサーバを活用する。また,そのサーバを使って校正や入稿のやり取りをする。それにより,納期,コスト,担当者の手間を軽減させるという取り組みである。

 具体的には,東京本社にリョーインコンテンツサーバがあり,ネットワークを経由して,各営業所に接続している。さらに,VPNを使って顧客に提供している。これを使用してメーカーからの製品の写真や仕様,商品名や価格情報のデータをブラウザから入力してもらうのである。
 画像はデジタルで撮影したものを,撮影時点でMacとカラーマネジメントに対応したプリンタを持ち込み,仕上がりのシミュレーションを行う。ただし,あくまでもシミュレーションなので,サーバには撮影したRAWデータを現像したRGBデータを格納しておく。したがって,サーバにはRGBデータだけを格納し,最終的にRIPに回す前に一括してCMYK変換を行うというフローになっている。

 自動組版は,サーバから商品ごとのXML,カタログで言えば1つのコマごとのXMLデータをエクスポートし,InDesignを使って自動組版する。XMLデータは構造化されているので,Webとの親和性,流用性が高い。
 従来,紙の印刷物は印刷会社に発注し,Webカタログはシステム会社,ソフトウェア会社に発注していたものを,XMLを活用することにより,クロスメディアに展開できることを提案している。これは,Webカタログ構築にかかるコストを低減するとともに,常にサーバに最新のデータがあるため,紙カタログの校了時点にはWebカタログも公開準備が完了し,顧客が紙カタログを配布するときにはWebもオープンという状況を作ることができる。

XML自動組版を組み込んだワークフロー

 InDesign+ProDixによるXML自動組版フローを導入した。ProDixというのはInDesignのプラグインソフトである。通常,InDesignのXML自動組版機能は1つのページまたは1つのファイルに対して1つのXMLデータを流し込むが,カタログをデータベースで管理するときは製品や商品毎に管理するので,組版時には複数のXMLデータを紙面に組版していく必要がある。そこで,XML上の構造変換など,いろいろと考えたが,ProDixを導入することで,製品毎のXMLデータを選択して必要なものを流し込むことができるようになった。

 テンプレートを作成し,コンテンツサーバから必要なXMLデータをエクスポートしてInDesign,ProDix側で自動組版処理する。次に画像のサイズや角度を調整し,カテゴリー毎に処理した複数ファイルを,最終処理にてページ番号を調整する。索引やインデックスを作る場合も,InDesign側で一括抽出する機能があるため,いろいろな切り口のインデックスを比較的簡単に作ることができる。
 今後,いろいろなパターンのレイアウトを持つカタログへの対応が1つ大きな課題である。  また,Webカタログへの展開として,通常のフローとは逆に,InDesignからXMLを生成することも可能である。

 リョーインが取り組んだのは,XMLをXSLTを使ってHTMLに変換し,それによってWebカタログを構築するという方法である。しかし,それでは変換する部分で手作業が入るので,より自動化したい。そこで辿り着いたものが,サーバベースのコンバートエンジンCocoonである。CocoonをApacheというWebサーバに実装して,そのサーバにXMLを投げると自動的にスタイルシートを見てHTMLを作るという取り組みを行っている。

(テキスト&グラフィックス研究会)

2004/11/13 00:00:00


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