本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

コンプライアンスもセキュリティも、業務改善の引き金

事故やミスを完全に防ぐことはできないし、コストを度外視して完全に近いことをすることも、ビジネスの世界ではありえない。ビジネスをする上での信義としては、想定される事故やミスが最も起こりにくい環境を、他社に比べてもよく考えて築いていありますとか、そのための管理はされています、また事故やミスが起こった際には適切な処置をとりますというような信頼感を得るための情報伝達を顧客にしてあるかどうかだろう。当然ここで公約したことは本当にされていなければならない。

結局公約したことを実行しても割が合うように、コストがかからずに信頼できる業務プロセスを開発することが、ビジネスの競争の一要素として付け加わるのであって、次々とコストをかけて信頼性を上げるのは無能な策である。コンプライアンスもセキュリティも環境もエネルギーも品質管理も、業務改善の引き金として取り組まなければならない。

とりわけセキュリティ問題はデジタル化IT化の象徴のようなテーマである。デジタル化ネットワーク化したからこそ問題が広がるという面があるものの、ITでそれを防ごうというだけでは、薬の副作用に別の薬を投入するようなことになり、次第に根本的な問題を見落としになりがちだ。つまりヒューマンエラーとか人的な要素が解明されないまま、横道に逸れた対策をしがちにみえる。

例えば個人情報の含まれたファイルを顧客から受け取って帳票出力を行うような業務は、ファイルを受け取らなくても帳票出力ができるビジネスモデルを考えた方が手っ取り早いし、信頼性も高くなる場合がある。ネットワークが発達していなかった時代には、顧客先にプリンタを置いて要員を派遣しなければこのようなことはできなかったが、今日ではシステムの組み方の自由度は高くなったので、顧客側だけがデータを管理し、プリントする側はテンプレートの用意とプリンタの運用に分けることができる。

コンプライアンスやマネジメントシステムの導入時のドサクサに、相手の無知につけこんで高い買い物をさせようというようなことは今日通用しなくなっている。むしろそういう時こそ、顧客のビジネスプロセスをどれだけ理解していて、どんな根本的なソリューションを提供できるかが問われるようになるだろう。

通信&メディア研究会会報 VEHICLE 188号より

2004/11/27 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会