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ICCプロファイル作成カラーマネジメントソフト

 ICCプロファイルをベースにしたカラーマネジメントは,業界にかなり定着した。今後,JAPANカラーやJMPAカラーなど標準印刷色への対応という観点でもCMSツールの重要性は増してくる。ICCプロファイルを作成するGretagMacbeth社の「ProfileMaker5.0」について,きもとの伊藤 健氏にお話を伺った。

ProfileMakerの開発コンセプト

 GretagMacbeth社のProfileMakerシリーズが,日本市場に登場して約8年が経過した。初期リリースはVer.2.0であったが,このころの日本の印刷工程は,デジタル化が普及し始めたころであり,ユーザの感覚には「ICCプロファイル」という言葉はまだなかったようである。しかしGretagMacbeth社では,将来のカラーマネジメントを見据えていたかのように汎用性のある「ICCプロファイル」作成ツールを開発・改良してきた。基本は,あくまでもオープンな環境で使用可能なプロファイル作成である。

 ProfileMakerは,ICCプロファイルを作成するソフトウエアであるが,ファミリーソフトとしてICCプロファイルを編集するProfileEditorなどがある。バージョンアップを重ねる度に,作成するプロファイルの精度,ガモットマッピング,色分解設定などが向上してきた。もちろん操作性やGUIの改良も行われている。
 ICC(International Color Consortium),CIE(Commission Internationale de l'Eclairage)などの国際的な機関・団体の色に関する研究結果をソフトウエアに反映させることを基本として開発に取り組んでいる。

 前バージョン4.1のデジタルカメラプロファイル作成モジュールの部分的にあった課題を改善し,さらにプロカメラマンからの意見を取り入れることで,写真業界のデジタルカメラプロファイル運用を提唱していくことがこのモジュールを大きく改良した狙いである。  また,色再現域の広いAdobeRGBデータなどをオフセット印刷によって,できる限り再現させる目的として「ヘキサクローム」が注目されている。この6色印刷プロファイルを従来のプリンタプロファイル作成モジュールに標準装備させることで,さらなるICCプロファイルの運用を広げることがもう一つの狙いである。

大きく進化したプロファイルモジュール

 Ver.5.0になって大きく進化した部分は,デジタルカメラプロファイルとプリンタプロファイルの部分である。
 前バージョンは,デジタルカメラのプロファイル作成手順を,撮影したチャートの画像データ(RGB)とチャート基準データ(Lab値)を照合して作成していたが,Ver.5.0ではこのプロファイルを作成する前に撮影環境情報をフォトタスクとして設定できるようになっている。

 屋外撮影・ポートレート・製品撮影・白黒などを設定すると,グレーバランス・露出補正・彩度・コントラストが自動的に変更される。さらにこれらをカスタマイズすることも可能である。
 また,撮影用のチャートについても従来の「ColorCheckerDC」から「ColorCheckerSG」に変更されている。「ColorCheckerSG」は全パッチを半光沢に変更し,パッチ数も従来のものより少なくしている。これもバランスの取れたプロファイル作成に反映されるよう改良されている。さらに,撮影環境の光源情報をプロファイルの作成時に反映させることも可能になった。

 ICCプロファイルの考え方として一つのデバイス特性を常に使用するという考え方があるが,特にデジタルカメラの場合,撮影コンディションに応じてプロファイルを複数作成する必要性があるという認識に変わりつつある。このモジュールは,プロカメラマンからの意見を大きく反映し大幅に改良されたものである。
 プリンタプロファイルのモジュールについては,インクジェットプリンタなど高い彩度を再現するためのガモットマッピング情報をもたせる「LogoColorful」が追加されており,より鮮明な色を有効的にマッピングできるようになっている。

 また,色分解設定のブラックの幅を調整する際に,グレースケールの画像が表示されるので,ビジュアル的に変化が確認できるように改良された。さらに,標準でヘキサクローム・CMYKRB・CMYKRGの6色プロファイルの作成が可能になっている。
 前バージョンでは,「MultiColor」モジュールを追加しなければ,これらのプロファイル作成はできなかった。しかし,近年の印刷業界では,ヘキサクローム印刷が数多く見られるという背景があり,今回のバージョンから標準モジュールになった。
 特筆すべき事項として,色分解設定の中で各チャンネルの分解優先度を3段階で変更できる。また,各インキの使用量を設定できる部分も変更された。仕事の内容によって特色を重視するのか,あくまでも補色として,オレンジ・グリーンを使用するのか設定できるようになっている。

 このほかに,Adobe Photoshop用の色分解プラグインとプルーフ用プラグインも用意されているので,DTPアプリケーション上での特色分解とプルーフィングが可能である。  プロフェッショナル向けソフトウエアパッケージは,印刷業界向け「ProfileMaker5.0 Publish Pro」,写真業界向け「ProfileMaker5.0 Photostudio Pro」,パッケージ印刷向け「ProfileMaker5.0 Packaging Pro」の3種類に分類された。

入力から出力までカバーするカラーマネジメント

 印刷品質の安定のため濃度管理やLab値での色管理を行うことによって,ターゲット(印刷)プロファイルができ上がる。そこで他社との差別化を検討すれば,ヘキサクロームなど多色印刷の採用となる。ProfileMaker5.0を使用することで,自社の内容に合った6色プロファイルを作成し,多色印刷に挑戦していただきたい。
 このステップが把握できれば,「ORIS ColorTuner」の特色テーブル機能を流用してプルーフ出力も可能である。さらに,印刷・プルーフが整備されることにより,製版・制作側ではモニタキャリブレーション・プロファイル作成を実施することで,画面上での印刷色のシミュレーションが可能である。

 あとは,入力されるデジタルカメラのRGBデータをいかに被写体の色に近く再現させるかがポイントである。これもデジタルカメラモジュールでプロファイルを作成して,ターゲット印刷のプロファイルでCMYK変換処理することにより作業がスムーズに進む。これらの一貫したカラーマネジメントには必須のアイテムである。
 また,ヘキサクロームなどの既定6色ではなく,パッケージ印刷などすべてが特色,Hi-Fiなどの7色以上の多色印刷が必要なユーザには,「ProfileMaker 5.0 MultiColor」も用意している。最大で10色までのICCプロファイルが作成でき,各チャンネルの分解優先度などを設定できるようになっている。

 さらに,新しくなった「MeasureTool5.0」では,新規でプロファイルチャートが作成できるようになっており,使用している測定器などを選択するだけで自動的にプロファイルチャートが作成されるものである。
 濃度管理の提唱から始まった当社のカラーコントロールおよびカラーマネジメントであるが,今後も時代の流れに沿った形で継続する。時代はアナログからデジタルへ変革したが,最終製品が印刷物であることに変わりはなく,従来の品質管理に加え,今後もICCプロファイルを運用したカラーマネジメントの提唱を実施していく。

(テキスト&グラフィックス研究会)

2004/12/07 00:00:00


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