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年頭にあたり

社団法人日本印刷技術協会 会長 大鹿 洪司

明けましておめでとうございます。

長い不況からやっと明るさが見え始めた昨年の初めの頃,印刷業界も売上げが対前年同月比でプラスに向かっていました。
しかし,その後の度重なる台風,水害,記録的な長期にわたる高気温,さらに新潟県中越地震と続く天災が,その後の消費経済に大きな影響を与える結果となり,私達の期待も空しく景況悪化の現象が現れております。
こうした中でIT化が一層進展,技術も市場も融合化が更に加速,その対応に迫られております。
 一方,激しい価格競争による経営への影響が懸念されております。

このような情況の中で,PAGE2005が「メディアは循環型ビジネスへ」をテーマに開催が迫っております。この事業は,業界人から大きな期待をもたれていますが,その理由は,先を見据えた技術提案がなされているからであります。今年もJAGAT役職員が一丸となって,期待にそえるよう努力していきたいと思っています。

さて私は,地元岐阜県で15年程,デザインの関係団体会長として,印刷業界に貢献してまいりました。また,ワールドオリベ・デザインフォーラムの会長として,県内のデザイン力向上のため,120の会員及び会員会社のため努力をしております。
この組織は,岐阜県の目指すデザインによる産業振興の施策に呼応して,自らがデザインを切り口にした新製品開発や新市場開拓,新事業開発を進めていくためのもので,昨年2月には活動の拠点となる「オリベデザインセンター」を県によって,岐阜市内に開設していただきました。私たちの団体が自ら提案,行動して着実に成果をあげていきたいと思っています。
ここで思い出すのは,かつてアメリカのリチャードソン・スミス社の会長を講師に招いてスライドを見,話を聞いた時の強烈な印象です。その会社は,アメリカで一番大きなデザイン会社ですが,1つの注文が入ると5,6人のデザイナーが,その会社の持つコテージに集まって徹底的に討論します。
集まったデザイナーは,グラフィックからインダストリアルなど,さまざまなジャンルのデザイナーです。そして最終的には,例えば,花瓶のデザインであれば陶器のデザイナーが中心となって作業を進めるけれども,その過程でジャンルの異なる人の意見を聞いてデザインを仕上げる。このように,専門分野のデザイナーが持つ知識だけではなく,ほかの分野のデザイナーの意見も入れたデザインの制作をしているのです。

私は,緑いっぱいの那須の山間部へ行った時,看板の色は,こげ茶色と白と黒,それにオリーブ色しか使っていないのに気付きました。赤とか黄色はありません。使える色が規制されているので,非常に清楚な感じがして美しく見えました。フランスのシャンゼリゼ通りでも,色や照明が規制されていてとてもきれいです。これも環境デザインということで,皆が知恵を絞っているからなのでしょう。

2004年の2月20日から24日まで,ドイツ・フランクフルト市で国際消費財見本市(アンビエンテ)が開かれ,「ワールドオリベ・デザインフォーラム」のコラボレーションにより出展しました。この見本市は,家具,インテリア,雑貨,ハウスウェア,ギフト商品などを,常に新しい感覚で発信しているビッグ見本市で,会場敷地の広さは何と東京ドーム4つ分あります。今回は92カ国,約5,000社のメーカーが一堂に展示,126カ国,約14万人の来場者がありました。出展商品は,「ワールドオリベ・デザインフォーラム」の考えで開発した家具,インテリアなどで,それぞれがライフスタイルでの位置付けを明確にした提案型商品114点です。
私も出展された5社の代表の方々と一緒に,18日同見本市を見学しました。ブースでは「和」の演出を強調しました。その高級で落ち着いた雰囲気は,ブース周囲に並ぶアジアの雑貨品とは対照的に,突然開けた「和」の空間に,多くの来場者を立ち止まらせていました。
帰国後,梶原拓知事に出展報告。知事から「個々の企業がそれぞれ対応するのではなく,商社的な総合窓口,代理店窓口を設置してはどうか」というご提案をいただきました。

新年にあたり,一層身を引き締めて,デザイナーと企業,さらにマーケットへの研究開発に大きな希望をもって活動していこうと思っております。

2005/01/01 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会