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拡大する中国ビジネス郵便

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DMは,制作後に宛名印字,折り加工や封入・封緘,発送などの作業を経て送付される。これらの一連の作業はメーリングサービスと呼ばれ,専門企業が通常手掛けている。日本メーリングサービス協会では,2004年9月,中国のメーリングサービスの現状を視察した。中国は著しい経済発展に伴い巨大な消費市場が創出されたが,それは内外の企業にとって,まさに宝の山であり,注目の市場である。この消費市場の拡大により,中国の広告市場はここ数年毎年40%以上の成長を続けている。
また,これに伴って中国の郵便もDMなどを含むビジネスメールの伸びは著しい。視察に参加したピツニーボウズジャパン(株)マーケティングオペレーションズ 大新田納氏の講演より中国の郵便事情,ならびにメーリングサービス市場について紹介する。

中国の郵便市場

中国の行政区分は,4つの中央直轄市と23省,5つの自治区,2つの特別行政区から成り立っている。市場分析を行う場合には再整理して,東部(8省3市),中部(8省),西部(6省1市5自治区)とその他(台湾省,特別行政区)に分けて考える必要がある。

1.中国郵政の組織構造
中国郵政(China Post)は国家郵政局(China State Post Bureau)の管理監督下に営まれる郵便事業全体を指す。この国家郵政局の下に行政単位を基本に,全国31カ所に郵政局が存在する。

2.郵政局の機能
主な郵政局は郵便局のほかに,広告郵便物の制作や印刷,金銭関係郵便物の印刷や封入・封緘を手掛けるサービス会社(○○市郵政広告商函局)を抱えるところもある。従って日本の郵政公社と比較すると中国郵政が手掛ける範囲は非常に広い,という点が大きな相違点である。

3.市場規模の日中比較
普通通常郵便物数は日本の243億通(年間)に対し中国が103億通(年間)と日本の半分以下であり,国民1人当たりでは日本200通に対し中国は8通と25分の1の規模である。また中国では通信販売が育っていないこともあり,小包は日本の7億通に対し中国は1億通である。このように,中国市場は日本市場よりもまだ小さいが,注意すべきは市場成長率の高さである。最近の著しい経済発展の効果もあり,内国普通郵便物は15%弱の成長率を実現している。対する日本では第1種郵便は減少している。

4.個人郵便とビジネスメール
1999年には個人郵便が77.6%,ビジネスメールが22.4%と圧倒的に個人郵便が主力であった。しかし2002年には個人郵便は45.4%,ビジネスメールが54.6%とビジネスメールが著しく成長し,初めて個人郵便を上回った。このトレンドは今後も継続すると予想されている。
ビジネスメールについては,ダイレクトメール(金銭関係郵便物や広告郵便物)より郵政関連企業が制作する広告物や広告掲載冊子の比率が大きくなっている。ここで,日本と異なりダイレクトメールの分類に金銭関係の郵便物が入っていること,またビジネスメールの内訳に中国郵政自身が媒体製作を手掛ける広告郵便物が含まれることに留意する必要がある。いずれにせよ2002年で見ると,個人郵便の伸びが対前年で−2.8%であったのに対し,ビジネスメールは+55%と著しい伸びを見せている。

中国のメーリングサービス事業

中国のメーリングサービス事業は中国郵政がほぼ独占している。大企業の中には自社でメーリング業務をこなしている場合もあるが,大多数の企業は全国に約50ある中国郵政の子会社(一般に,○○市郵政广告商函局と呼ばれる)に委託している。この子会社は省や市単位で設立されている。請求書など金銭情報のコンピュータ処理,封筒やビジネスカードの製作,宛名の印字,請求書やダイレクトメールの印刷,封入封緘を実施し,主な顧客としては通信,銀行,保険会社がある。また,これら子会社で使用する設備機器は中国郵政が一括購入し,それを各子会社に割り当てる形を取っている。以下,北京市と上海市を例に報告する。

1.北京市郵政广告商函局
ここでは月に550万通(宛名印字300万通,封入封緘250万通)の処理を行っている。 北京市の郵便の半分がビジネスメールと仮定してもここでほとんどの処理が行われていることになる。主な顧客は通信,銀行,カード会社である。

2.上海市郵政广告商函局
ここも北京同様,月に2000万通の処理量があり,市のビジネスメールの大半を処理している。このほかに上海ならではのダイレクトメールや広告業務のデザインを含むコンサルティングサービスをネット上で提供している。主な顧客はモトローラ,中国移動通信,上海銀行など,携帯電話会社,銀行,流通業である。またこの会社の主な傘下企業として以下がある。

*上海市郵政客戸数据中心
企業データと個人データを保有し,企業に対するデータ入力や分析,抽出の業務を行っている。約1200万社の企業データを保有し,国家行政統計資料に基づき各企業に問い合わせてデータ内容を更新している。また,個人データは上海を中心として430万人(氏名,住所,郵便番号,性別,年齢,収入,職業,学歴など)分を保有。個人データは郵政から収集し,更新を月1回実施。また転居などの変更データも親会社である郵政から得ている。すべての個人データは本人の許可を得て収集しているとのことである。
メーリングサービスでは企業や個人のデータが必要であるが,日本では郵政公社のデータは公開されていない。一方,中国ではこれらデータは有償で市郵政广告商函局から提供されている。ちなみに東部地域のほとんどの郵政广告商函局ではこのサービスを実施しているとのことである。
以上のように,個人データが有償で郵政から入手可能であることは日本とは異なる状況であり,ビジネスメールが急増していることの一因がこの点にも起因しているように思われる。また東部地域では企業間競争が激しくなっており,バリアブルプリントを用いたDMの活用も進んでいる。

今後の中国市場について

今後の中国のビジネスチャンスについて最後に考えてみる。カギは3点ほどある。

1.中央政府の動向
最近,中国はWTOに加盟した。また第4世代の指導者も登場してきた。これらの指導者たちは非常に資本主義的である。従って,今まで資本主義的でなかった業界,例えば金融・保険,サービス業,公共部門などは,これから市場開放が進むと思われる。中国郵政の最大の顧客は金融・保険業である。この市場経済から遅れている業界の民営化が進むことはビジネスメール,特に金銭明細からDMへと関心が高まり,今後も大きな伸びを示すことにつながるのではないかと推察される。また,コミュニケーションツールが普及するにつれて通販ビジネスなども市場が拡大する可能性がある。ビジネスメールは今後も40〜50%の伸びが期待できる。

2.中国郵政との連携
中国郵政は非常に幅広いサービスを提供している。自社でバリューチェーンのどこか一つに強い部分をもっているのであれば,中国郵政に対して何らかの提案を行い,提携を進めることが有効である。また,中国郵政との有効な人脈保有もポイントとなる。 今の中国の現状は,人より早く行動を起こすこと(快魚喫慢魚)が成功のカギになっている。

3.情報の感度を良くしておくこと
以上がキーとなる。

(2004年12月 ポスタルフォーラム・プレイベントセミナー報告より)
(Printers Circle2月号より一部抜粋)

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2005/01/13 00:00:00


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