メディアの制作方法がすべてデジタルになって、次は流通、表示、利用面に変化が現われる番となった。20世紀にはアナログの電子メディアが、ラジオ・TV・ビデオというように大発展したように、21世紀にはWEBでもモバイルでも新たな機能をどんどん増やして、生活やビジネスに更なるインパクトを与えようとしている。まだ見ぬメディアも起こってくるかもしれない。専門の放送機器を用いるアナログ放送と違って、デジタルメディアは汎用のコンピュータをベースにしている分だけ、つぶしが効くし変化自由なところがあり、従来のメディア産業よりも厳しい競争が予測される。
しかしある日突然見たこともないメディアが登場することはない。それについてはデジタルメディアに連なるビジネスの変化も同じである。印刷においてはデジタルによる制作の延長に、プリンタ校正とかリモート校正があり、それらを通して印刷作りの過程にネットを使うことの利便性が認識されると、次は印刷のECにつながっていく。今でも「それは、ちょっとウチでは…」と印刷営業マンに見捨てられた顧客はネットの印刷サービスに頼っている。
「捨てる神あれば拾う神あり」ではないが、発注し忘れてもう印刷営業に連絡がとれなくなったり、納期が間に合わないといった半端なものでも、ネットで発注できるケースが多い。それを受注している会社は、それを機会に仕事を増やしている。ネットでの隙間ビジネス自体はそれほどの売上ではないかもしれないが、これによって顧客の発注の考え方が変わることが、次なるビジネスモデルにつながっていく。顧客が最初からネットのコラボレーションで、最短でメディア制作をするプロジェクトを考えるようになるのである。
またデジタル素材を制作し、うまく管理することの延長に、WEB制作を含めたクロスメディアのビジネスがあり、さらにデジタルメディアを媒介としてた顧客のビジネスサポートサービスがある。パソコンでメディアを加工するくらいは素人でもホームページを立ち上げているように、金にはならない。そういった作業が延々と続くところに対して、どのようなソリューションを提供できるかがビジネスのポイントである。
まず制作現場でデータ管理のノウハウを高めておいて、それが顧客の管理能力よりも高くなればビジネスにつながるかもしれない。金でDAMやコンテンツ管理のシステムを入れても運用ノウハウがないと、ミスの多発や手間がかかって利益を生むところまではいかないだろう。
要するに自分の足元を固めておくことと、時代の流れの間違いないところをつかんでおくことが重要だ。一見すると印刷とは飛び離れた技術やビジネスモデルでも、これからの印刷ビジネスに結びついてきそうな要素を嗅ぎ分けて、自分のビジネスシナリオに反映させることができる人が、次世代のリーダーになるのだ。まだ印刷ECにしてもクロスメディアにしても、隙間ビジネスのようにしか思えないかもしれない。しかし今のうちから、例えば印刷とWEBとは本質的に、どこが同じで、どこが違うか、というようなことを考える訓練をしておかないと、これからますますデジタルでメディアが渾然一体となって、自分の進むべき方向を見失うことになるのだ。
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2005/02/01 00:00:00