電子メールの管理には悩まされている人は多く,迷惑メールの防止ソフトが注目され,発達中である。メールの送受信システムは発達しても,受信後にメールをうまく扱うソフトはあまり出なかった。過去のメールも時系列に扱うのは簡単だが,どのメールとどのメールが関係しているかについては,人手でチェックしてフォルダに整理するしかない。これからは有用メールの管理ソフトが発達することになるだろう。この分野が個人のエージェントとして働く,操作を必要としないソフトのさきがけとなるかもしれない。
電子メールなどで一見するとファイル管理が複雑に思えるのは,デジタルで複雑な情報管理もできるようになった結果でもある。いったい,紙の手紙の時はどうしていたのだろうか。全郵便物を整理して保存することはありえず,郵便受けから取り出した段階でふるいわけ,封筒内を見た段階で,たいていは捨てていた。時系列に管理することも困難であった。電子メールが増えても重要なものはそう増えるわけでもないだろうから,管理の要点は変らないはずである。
実はマスコミの報道とは裏腹に,事態は困難な方向に進んでいるのではなく,より便利なものが求められているといえる。インターネットによって不正がはびこるようになり,個人が危険にさらされるという警鐘が無意味とは思わないが,若干の事件があってもyahooやNTTとの契約を破棄する人が続出してない。むしろ日本でも楽天を筆頭に,本家アメリカではさらに輪をかけて,インターネットでのショッピングは増えつづけているという事実と合わせて考えないと,観念的な判断になってしまう。
アナログの世界においてヘンな勧誘電話がかかってくるのに対策が立て難いのとは違って,デジタルの方が対策は立て易いはずである。実際は攻撃と防御はいたちごっこであろうが,「守る」仕事の方が付加価値が高く,大きなビジネスになり,技術力も上回っていく。ウイルス対策ソフト業界は成長を果たしマイクロソフトにつぐ地位にきている。インターネットの世界は,秩序,市民権,心地よさ,などがキーワードになって,開発テーマも変りつつある。
通信&メディア研究会会報 VEHICLE 191号より
2005/03/08 00:00:00