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NewsMLの概要とIPTCとAdobe XMPとの連携

アドビは,クリエイティブスイート製品より各種のメタデータを収容するためのXMPという技術を採用した。XMPによって,標準化されたメタデータが利用しやすくなる。メタデータが標準化されると,様々なアプリケーションのデータを一元的に管理でき,また素材管理システムをカスタマイズする必要がなくなるというメリットがある。
IPTC(国際新聞電気通信協議会)のメタデータ策定の動向と,今後のDTPにおけるメタデータ活用について,イースト株式会社の藤原隆弘氏にお話を伺った。

NewsMLは新聞のXMLなのか?

NewsMLは,新聞紙面を表現するページ記述形式と誤解されることが,少なくない。しかし,NewsMLはニュース・コンテンツ(テキスト,画像,EPS等でできている)を管理・説明するためのメタデータの集まりでIPTCによって策定されたものである。
コンテンツを表すフォーマットはさまざまである。例えば,一般テキスト形式,JPEG等の画像形式,商況関係をXMLで表現するXBRL,その他に写真や記事を表すフォーマットがある。
NewsMLは,個別のコンテンツがどんなフォーマットで作られていても,統合して管理するための情報を付与することができる,個別コンテンツの外側の規格として用意されたものである。
JPEGにも一般テキストにも同じ形式のメタデータを付与することができ,コンテンツ管理に適していると言える。

NewsMLの最新動向

NewsMLは,2000年10月にバージョン1.0が策定された。国内では,日本新聞協会がNewsML1.0に対して国内利用のための拡張と制限を行い,2001年にNSK NewsMLレベル1としてリリースした。
また,NewsMLに画像を組み込むための画像伝送ガイドラインを用意した。その後,ラジオテレビ欄のメタデータ構造を定義するRadioTV-NewsMLを策定し,現在はJIS NewsMLを策定中である。
国内のNewsMLの利用状況は,2001年に毎日新聞社がNSK NewsMLレベル1を採用したのを皮切りに,共同通信,日経,朝日,毎日,読売,産経,中日が新幹線の電光ニュース送信形式に採用した。2003年には,山梨県がWebページの管理にNewsMLを採用した。また,業界紙(日本食糧新聞)がNewsMLを採用し,共同通信がNSK NewsMLレベル1での配信を開始した。共同通信の配信開始を受けて,国内のほとんどの新聞社が対応を検討し,中国・神戸・京都3新聞社統合データベースをはじめ,いくつかの新聞社では受信も開始した。
また,放送局では,実験段階ではあるが,佐賀大学とサガテレビが共同で,インターネットによるニュース配信のためのNewsMLを用いたビデオライブラリシステムを開発した。2004年〜2005年には,ブロック紙や県紙クラスの新聞社での採用や,地方自治体での採用検討が増加中である。また,放送局での採用も,幾つか出てきている。

NewsML2.0の新しい機能

IPTCでは,2005年10月頃リリース予定で,バージョン2.0の開発が進められている。現在検討されている新しい機能項目には下記がある。
(1)取材情報やニュースの予告情報を扱うEventsMLを策定中である。EventsMLは,「今日,○○から△△について発表がある。」というような予告情報を扱うものである。
(2)NewsML1.xは構造が複雑すぎるため,XMLデータベースでの利用に一部問題がある。そこで,構造を簡略化することを検討している。
(3)外部メタデータを,組み込めるようにする検討も行われている。例えば,写真系の新たなメタデータであるIPTC Coreを簡単に組み込めるようになる。
(4)大規模システムから小規模システムまで,NewsMLをどのように使うかを定義することができる用途別プロファイル機能も検討されている。

IPTCコア・スキーマ

米国アドビシステムズ社は2004年6月23日付のプレスリリースで「アドビシステムズとIPTCが報道機関向けメタデータ標準規格推進に関して協力する」と発表した。
Adobe Photoshop CSのメタデータ表示には,既にIPTCという項目が入っている。実は,IPTCのIIM(Information Interchange Model)がPhotoshopファイル情報のベースになっており,IPTCあるいはIPTCヘッダーと呼ばれている。Adobe XMPでも,IPTCヘッダーはそのまま使用できる。Adobe XMPはメタデータを流通させるプラットフォームを提供しているだけで,記入する内容についてはそれぞれの規格が決めることになっている。
新たなIPTCコア・スキーマは6月から検討を開始され,4ヵ月経った2004年10月に,IPTCはプレスリリースで「写真の説明にAdobe XMPを採用することを決定した」と発表した。6月から10月の間,毎週日本時間の夜中に1時間半ほどの電話会議が行われ,IPTCコア・スキーマの検討が行われた。メンバーはIPTCだけではなく,Adobe,IDEAlliance (International Digital Enterprise Alliance),デジタル画像会社のCorbis,アメリカの写真関係メタデータ関係者などである。IPTCコア・スキーマそのものはまだリリースされていない。現在,仕様書ができて,ユーザーズガイドを作成中である。更に,数社がアプリケーションでIPTC コア・スキーマに対応することを表明している。

Pageアセンブリ・メタデータ

Pageアセンブリ・メタデータセットは,2004年から検討を開始したXMLを用いたメタデータ形式の名称である。日本から発信する標準規格案として策定中で,NewsMLバージョン2.0やAdobe XMPにもメタデータの塊として含めることができるため,各種フォーマットにもこのメタデータを付加しようと検討を進めている。
Pageアセンブリ・メタデータは,ページ構成要素になる写真や記事などの素材に対して付加する,編集組版に関係するメタ情報である。新聞・印刷・出版系業界でページを編集するときに使うメタデータの標準規格として策定中である。編集の際に参考にする情報であることから,印刷物だけでなく,Webにも使用できることが大きな特徴である。
現在検討中の項目には以下がある
(1)原稿素材を識別する名称としてのタイトル
(2)編集デスクが判断する重要度,次工程はどこかを示す次工程名称
(3)レイアウト・印刷・発行などの予定日時
(4)該当記事をどのページに収容するかを示すページ
    (例えば,新聞の政治面・社会面などの仮想ページ名や物理的なページ数)
(5)版情報
(6)ページ内の位置
    (例えば,トップニュース扱いの場合は「トップニュース」というような仮想的な名称で位置を指定する)
(7)校正終了を示す校正ステータス
(8)素材を描画するときの基本となるフォント名,文字サイズ,行間をスタイル名で指定する基本描画スタイル
(9)適不適な隣接記事や適不適な隣接広告などを指定する項目

2005/03/11 00:00:00


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