ITやメディアに関する新しい技術が登場しても、金の流れというかビジネスの部分はすぐには変らない。新ビジネスの立ち上がりに一定期間のギャップがあるのはインターン生活のようなもので、それを潜り抜ける工夫や体力がないと、結局新しいビジネスには行き着けない。その間はいろいろな紆余曲折があるが、どんな場合でも似た段階を踏むように思える。
インターン生活では、新メディアが最初の居場所を見つけるために、最も関連の深い既存メディアの補完をしてお互いに得になることすることが多い。PDFの電子本や絶版本のオンデマンド出版などもそうである。これは新メディアのユニークなところを認知してもらうために必要なステップで、それだけしていても利益は上がらないから、別に本来の狙いの事業立ち上げのための活動もしておかなければならない。オンデマンド本でも著者の獲得に乗り出すなどである。
既存のビジネスとは一見すると友好的な提携をしていても、新メディアの新ビジネスが成功した暁には「ひさしを貸して母家を盗られた」という形になるようにビジネスプランは仕組むわけだから、すぐには既存ビジネスと関係悪化しないように徐々に変化するようなものとならざるを得ない。目先の自分のビジネスと中期的なビジネスは矛盾をはらむことがあるので、自分が自分にだまされないようにしなければならないし、特に働いている人の意識のコントロールは微妙である。ライブドアは今このような段階にいるのだろう。
そのうちに新メディアが攻勢をかけるタイミングがやってくる。eBookの立ち上げの時には、将来は紙の本の方が例外になるとまで断言した。少々ショックな宣言をした方がいいのだろうが、環境変化がついてこないのにあまり先走って言い過ぎると、本気か? 根拠は? ということでブレーキになってしまうかもしれない。タイミングの見計らいや、環境の変化予測というのが大事だ。また新ビジネスは既存ビジネスの顧客を獲得するのが目的であっても、傾きかけた母家を乗っ取るのが目的ではなく、母家を解体して別のものを建て直すわけだから、魅力的な設計図が必要である。それがないとホラ吹きで終わってしまう。
通信&メディア研究会会報 VEHICLE 192号より
2005/04/02 00:00:00