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印刷機をプリンタのように使う〜いよいよ本質に迫るCMSの流れ

文祥堂印刷株式会社 制作部 部長 吉川昭二

印刷業の環境変化と「解」の在りか

 今日の平成不況は全く先がみえず,印刷業にも大きな打撃を与えている。日常業務のなかでは「良い話」「希望のもてる話」など皆無で,経営的にもほとんどの会社が危機的状況にある。その大きな要因が印刷料金の引き下げ(単価の引き下げ)である。電話料金などの低価格競争と異なり,規制がない分だけ「底なし」の様相を呈しており,「同業者間の体力勝負」という場面が展開している。一方,買う側の視点では,用紙はやや落ち着きをみせているものの,インキや製版フィルムは値上げしている。まさに「前門の虎(値下げ),後門の狼(値上げ)」といった状態で,印刷業界は「虎」や「狼」などが横行する「暗黒大陸」になりつつある。
 また,今回の不況はこれまでの不況期と異なり,じっと首をすくめていれば嵐が過ぎ去るほど,生やさしいものではない。自ら立ち向かって乗り切らなければならない。バブル崩壊後10年で,成長期にはみえなかった多くの経営的ロスやムダ,矛盾が顕在化し,それらが大企業では不祥事,中小企業では経営危機となって現れている。そのため,多くの企業は「変化すること」に全力を挙げて取り組んでいる。そして,そのポイントが「ビジネスモデルの変革」と「IT革命」である。
 この2つの言葉は,印刷業が生き延びていくための「解」でもあり,重要な内容を数多く含んでいる。「変化しないことはリスク」と言われる現在,特に変化を嫌う印刷業にとって,ビジネスモデルの再構築が急がれている。これについては「JAGAT info 6月号」に述べているので,参照されたい。また,IT革命はSCM(サプライチェーン・マネジメント)などとともに,ビジネスモデルと密接にリンクしている。この点も印刷業にとって重要なポイントである。
 ここでは「ビジネスモデルの変革」と「IT革命」の要素を含めて,CMS(カラーマネジメント・システム)を捉え,印刷業の次世代への戦略となる,ひとつの「解」に触れてみたい。

印刷会社の「構造改革」としてのCMS

 「色合わせのためのCMSが,なぜ『解』につながるのか?」という疑問もあるだろう。これまでCMSは技術的な側面からしか語られてこなかったが,もうひとつの別な側面に着目することがポイントである。それは,CMSを業界・クライアントまでを含めた効果的なシステムとして構築するためには,まず全社的な活動が必要であり,そのためにも経営面でビジネスモデルの再構築という課題を避けて通れないからである。
 これまでプリプレスを中心に構築されてきたCMSは,デジタル技術の進化により,いよいよターゲットである「印刷物」にマッチングさせる環境が整った。しかし,技術や理屈の上では可能なCMSの構築は,クライアントを巻き込んだ校正の在り方,印刷機の管理,印刷オペレータの考え方などを再構築した上で,「標準」を確立しなければ,真の達成は不可能なのである。つまり,CTPやDI機の登場の際に提起されたプリプレスと刷版・印刷工程のブリッジ──フラットでバリアがない組織の必要性,デジタルに無縁だった刷版室・印刷現場へのデジタルの啓もう,そしてクライアントも含めた校正の在り方などが,CMSでも同様に問われているのである。
 従って,印刷会社のビジネスモデル再構築のひとつの手法として,ISOへのチャレンジ,CMSやCTP,CIP3などの導入を契機とした構造改革が有効になるといえる。しかし,中小印刷会社は外圧がない限り,不要不急と思いがちで,ISOへのチャレンジは難しい。一方,CMSは生産面では生産性向上,販売面では利益の向上を生み,品質安定化をもたらす。そのため目標になりやすく,具体的に取り組みやすい。営業から生産現場まで,CMSを基軸とした品質安定化によるクライアント満足度達成を目標に,社内改革を進めるのである。
 本稿ではCMSをこのような観点で捉え,成熟しつつあるプリプレス分野ではなく,印刷工程を取り上げ,課題とポイントを提起してみたい。

月刊プリンターズサークル2001年6月号
特集「印刷機をカラーマネジメントせよ」より抜粋。
詳細は本誌をご覧ください。

2001/06/09 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会