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印刷・製版業に勤務するDTPエキスパートは5440人,企業数1254社

1万人を超えるDTPエキスパートではあるが,実は印刷・製版業で見るとその半分以下である。また工業統計から見ると,所属社数で全体の6.4%,有資格者で全従業員の1.5%である。都道府県別ではかなり格差がある。印刷業界全体のワンランクアップのため人材として今後も普及に努めたい。

人材育成の資格制度として定着
DTPエキスパート認証登録制度は23期の試験を終えたところで12年目を迎えた。スタートの1993年という年を振り返ると,ハード環境ではQuadra800/840AVが発表され,ソフト面ではQuarkXPress3.11J,Photoshop2.5Jが市場に出た。CEPSとMacの連携が緊密になり,当時,融合型画像処理としてワークフローの一つとなった。印刷業界としてはDTP化が本格的に進み始めた年であった。当時印刷産業の出荷額は,約8兆5000億円で,バブルがはじけ下降気味とはいえ,まだアナログ製版健在,単価の下落がそれほどではなかった。
しかし,この10年で印刷業界を取り巻く環境は大きく変ぼうした。そのような中,DTPエキスパートは時代を象徴する新しい人材育成の制度として誕生し,成長を遂げた。22期試験(04年8月)までで受験者数3万2290人,合格者数1万3107人(合格率40.6%,男性合格者8440人,女性合格者数4667人)。もちろんこの数字は印刷業界だけではなく,関連業界(印刷関連,デザイン,広告,出版),一般企業を含めた幅広い分野に及んでいる。このような幅広い分野の人たちが,印刷メディアの知識を共有しようといった動きはかつてなかったことである。これからもDTP,印刷メディアは進化し続けることは明らかである。

製版・印刷のDTPエキスパートは全体の41.5%
さて,11年間を振り返ってみて,DTPエキスパートが全国でどこまで浸透したか工業統計と比較しながら見てみたい( 表:PDF参照)。まず,印刷会社に所属するDTPエキスパートの人数は2005年3月現在(1〜22期)5440人で,全合格者数の41.5%。半分以下である。意外に思う人もいらっしゃるであろう。しかし4年ほど前までは,製版・印刷業以外の業界(印刷関連,デザイン,広告,一般企業,出版)の人々が受験者も合格者も多かったことを考えればうなずける数と言えよう。
所属企業数は1254社である。1社平均4.3人となる。企業によってかなりの差がある中で,平均値を取る意味があるかどうかは別にして,この4.3人をまあまあと考えるか,少な過ぎると見るか,判断の分かれるところである。デジタルに関するさまざまな問題に対応するリーダーであるとすれば,十分とは言えないがある程度役割を果たせる数字とも言える。ところがクライアントと現場をコーディネートする印刷メディアの基礎知識を有する者と捉えれば,1社4人では心もとない。もう少し人材としては欲しいところである。おのおのの企業が目指す人材像とこの制度がどう位置付けられるかで違ってくる。人数の多少ではない。

多くの企業に広がっている
都道府県別にDTPエキスパートを有する企業の割合が多いところを見ると(厳密には,工業統計のデータは事業所数なので,社数との比較はできないが),トップが5年前同様,島根県で17.2%。以下,奈良,新潟,東京,宮城,京都,宮崎,長野,山口,秋田,石川,神奈川,広島,山梨,富山といったところが上位に入っているが,東京,京都,長野,石川,広島,山梨以外は,5年前には20位以下の県であった。
同じように,県全体の従業者数に対するDTPエキスパートの割合の多いところを見ると企業数に比べると変動が少なく,5年前の企業群の横滑りが多い。都道府県別と言っても事業所数に格差があるので,単純に比較はできないが,企業数で見るとデジタル化の裾野がかなり広まり,リーダー的企業群以外の企業が熱心に取り組み始めていることがうかがえる。一方,有資格者人数では早めに取り組んだ規模の大きい企業の人数が相対的に多いので,変動が少ないのであろう。
にもあるように,有資格者がゼロ,あるいは1桁の都道府県が散見される。印刷業界を支えるパワーある人材として不均等な形でなく発展・普及してもらいたい。今後とも広報活動をきめ細かく行うと同時に,学習や受験環境を整える努力を続けていきたい。

 
JAGAT info 2005年5月号

 
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2005/05/27 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会