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収益性が改善したJAGAT会員企業の業績

収益性は2年連続で改善

JAGAT会員企業を対象とした「印刷産業経営力アンケート調査」の2004 年度の結果がまとまった。有効回答企業209社の売上伸び率平均は単純平均で0.1%増(昨年度調査では3.7%減)、経常利益率は3.5%(同3.1%)、1人当たり経常利益額は706千円(同617千円)であった。1人当り経常利益額は一昨年の595千円が昨年度は617千円になって2004年度は706千円となり1999年度以降では最も高くなった。経常利益率は一昨年調査の2.7%から3.1%、そして3.5%と上昇してきているから、収益性に関しては全体としては改善されている。

過去5年で最高の高収益企業の割合

昨年の調査では、売上高前年割の企業が70.5%で最多になったが、今回の調査では、売上高前年割企業は52.9%でこの5年間では2001年調査に次いで少なくなった(図1)。売上を伸ばした企業の伸び率を見ると、その半分は伸び率5.5%未満だが、それより高い伸び率の企業割合も増加した。

本調査で各企業の収益性を見る指標としている1人当り経常利益額は(図2)、250千円未満の割合が前回調査よりは低くなったが、今回調査でも最も多い31.3 %になっている。この中には赤字企業(全体の8.8%)が含まれている。赤字企業の比率は最近数年間の調査であまり変わらないが、今回調査ではやや少なくなった。

先に紹介したように、1人当り経常利益額の平均値は706 千円だが、これより低い企業が6割ある。当然のことながら利益額階層が高いほど該当企業の割合は少なくなるが1250千円以上の高収益企業が21.2%になっている。本調査においては、1人当り経常利益額1250千円以上の高収益企業の割合は常に10%以上あるが、今回調査では過去5年の中で最も高い比率になった。

収益性が良い地方の出版印刷企業

業種別に売上高伸び率と経常利益率で見ると、出版印刷と総合印刷の売上伸び率がマイナス、写真平版、商業印刷、事務用印刷の売上伸び率は若干のプラス、包装・特殊印刷はほぼ前年並であった。証券印刷、写真製版、ソフト・サービス関係の企業業績は、いずれも回答企業数が少ないので業種グループとしての状況を推察することはできない。
出版印刷は各業種中で最もマイナス幅が大きくなっているが経常利益率は高い。地方の出版印刷企業の経常利益率が7.0%と高い水準にあるからである。地方の出版印刷企業は、売り上げ伸び率の落ち込みも少ない。

低迷が続く総合印刷

総合印刷が出版印刷についで大きな売上前年比マイナスになっている。また、経常利益率も2.4%で各業種グループの中では最も低くなっている。総合印刷企業の業績は、昨年調査においても売上伸び率、経常利益率いずれにおいても平均以下で悪かった。
総合印刷は、地方の比較的規模の大きな企業に多く見受けられる業態だが、東京の総合印刷と地方の総合印刷を比べてみると、いずれも売り上げは減少しているが収益性の面では地方の企業は健闘しており、悪いのは東京の総合印刷会社である。
売上伸び率に関しては、2003年に大きく落込んだ事務用印刷が2004年には前年をわずかだが上回り、経常利益率も高い水準にある点が目立つ。この分野も東京と地方の差が大きく、東京の事務印刷企業の経常利益率平均はマイナスになっており事務用印刷全体の足を引っ張っている。他の業種に比べて業績回復が芳しくない包装・特殊印刷でも、地方が良く東京が悪いという状況が見られる。

長年の有利な取引関係が変化した東京の印刷企業

地域別に見ると、東京と地方の対比が明確に出ている。東京は、売上伸び率が2004年にはわずかだがプラスに転じたのに対し、地方はこれも大きくはないが前年割であった。一方、経常利益率は地方の方が東京の企業群よりも良くなっている。同様の状況は2003年度にも見られた。本調査では「東京の企業は、成長性は低いが収益性が高い」という傾向が続いていて、これが東京の印刷会社と地方の印刷会社の基本的性格といっても良かった。しかし、この2年、そのような傾向状況は変化したようだ。
東京の印刷会社の収益性が良かったのは、大手企業と長年の付き合いがあって随契で受注できるといった有利な条件があったからである。しかし、経済情勢がそのような取引を継続することを許さなくなったということであろう。

健闘した20〜29名規模の企業

規模別に見ると、19名以下の企業が収益性、成長性ともに平均を大きく下回り、全体としてかなり業績が悪くなっている。
昨年調査では、成長性において規模が大きいほど売上伸び率が高いという規模相関が見られたが、今回は昨年のようなはっきりした規模相関は見られない。2004年度調査では20〜29名規模の業績が良く、特に売上伸び率の点では各規模階層のなかで最も良かった。50名以上の企業は、50〜99名、100〜299名、そして300名以上の3階層に分けているが、各階層とも平均を上回る業績になっている。
従業員規模階層ごとの業績を東京と地方のクロスで見ると、業種別のところで見られたような東京と地方の企業の鮮明な差は見られなかった。

(「JAGAT info 2005年5月号」より)

2005/05/20 00:00:00


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