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全体最適を目指すMIS/CIMのモデル

現在、印刷業界においても各種情報をリアルタイムに、縦横かつ双方向に流通させるデジタルネットワーク化が進みつつある。中には、JDFの動向に相関して基幹系情報システムへの投資を本格化させる動きも見えてきている。情報システムは、これまでの局所的な活用や自動化から、印刷工程全体及び顧客や関係会社を含めたデータの流通を、実現していく段階に入ってきている。
 2004年度のJAGATにおけるMIS懇談会、JDFフォーラムジャパン等の活動を通じ、MISに関してEC/EDIを含めた「全体最適を目指す印刷CIM/MIS」として、一つのモデルに構築するに至った。そこで実現する重点ポイントは、以下の3点である。

 第1のポイントは、「迅速・正確な経営情報の把握と意思決定情報を提供する機能」が必要であること。ITインフラやJDFワークフローを活用して、各種作業や工程の進捗・実績情報に基づく、的確で緻密な意思決定や経営判断のための情報を、いつでもどこでも、経営者等に提供の仕組みが必要である。これは、@外部企業を含めたデジタルネットワーク化により、情報共有化や情報流通化の実現、Aデータ連携や自動化によるリアルタイム性の追及、Bデータベースの統合化による経営分析情報の一元管理、などにより可能となる。

 第2のポイントとして、「見積り・生産計画の最適化(事前シミュレーション)機能」が必要であること。生産管理で作成している標準工程手順の資料と製品仕様から、「手順計画」を自動作成し、さらにJDF/JMFから得られる負荷・進捗情報などとコンピュータのスケジューリング機能によって、日程計画のシミュレーションが可能となる。また、営業では手順計画と製品仕様、及び社内仕切価格から「社内基準売価」が事前にシミュレーションが可能となる。いずれも入力情報(製品仕様)の変更に対して、柔軟にかつ迅速に対応することが必要である。従って、ここでは、工程の「標準化」が前提となっている。従来、印刷工程における標準化は、個別受注生産という性格上、困難であると言われてきた。
 ここで議論すべき「工程の標準化」とは、以下の2点である。
@工程手順の標準化: 生産技術者や管理者の頭の中にある「暗黙知」として存在する熟練の知識を、表出化(知識を顕在化し棚卸すること)することで「形式知化」し、体系的な組織知にまとめ共有化可能とすることを云う。
A工数の標準化: これは受注仕様に応じて使用する資材や紙材、部品、人的能力、機械能力、工程難易度、などにより変動するものである。従って、個別受注形態のプリプレスの企画・デザインの一部では困難であると思われる。しかし、定型的なプリプレス工程や刷版以降の工程、など大量連続生産の形態を有している部分では必ずしも工数標準化は困難ではないと思われる。
 特殊な仕様や印刷技術を除き、定期、定型的な受注仕様など標準化が可能であり、そこではこの2点における「標準化」を前提としている。

 第3のポイントは、「生産の自動化と生産情報の有効利活用」が可能であること。 JDF/JMFは、各種生産設備間のデータ交換を連携するだけではなく、MISから生産設備へ、生産設備からMISへの情報流通を可能とすることで、生産工程そのものの自動化を進める。これにより、製造における生産性の向上、効率的な生産がより加速する。さらに、JDF/JMFによる生産機器からのフィードバック情報(工程の進捗・負荷状況、及び実績情報)の活用によって、@工程管理での計画精度の向上、A外部との情報共有化による受発注作業の負荷軽減、B納期回答の迅速・正確化、などが図れることになる。

 JAGATでは印刷企業が業界動向や外部環境の変化に対応し、CIM/MISの導入・再構築を適切な方向に進めていくため、MIS懇談会やJDFフォーラムジャパン等の活動を通じて、印刷企業や印刷関連ベンダーの方々とMISに関する情報収集・提供を進め、印刷業におけるCIM/MISのあるべき姿を議論しています。その様な活動から生まれた成果や重要な情報を基に、上記の機能を有するシステムモデルの開発に取り組み、ある程度具体的な部分まで作りこむことができてきました。それらの成果として「全体最適化」をキーワードに、昨年に引き続き 「経営管理システムガイド」Ver.2 を発行することになりました。印刷企業のあるべきCIM/MISを上記議論を核として、構築、運用、導入効果、周辺技術、などを網羅しています。(詳しくは、:こちら を参照下さい)

2005/05/25 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会