デジタル時代になってから「コンテンツ」と言われるのは、その入れ物や、運ぶものや、フォーマットと中身を区別する意味があるようになったからだ。アナログの時代は書籍のサイズなり様式と、本文は一体のもので、紙面に合わせて組版の設計もされたし、編集・校正が行われた。例えば行頭に「る。」がくると、前行で文字数を調整して見た目を揃えるようなことが行われている。古典に複雑なルビをつける場合も校正刷りをみて調整する。
しかしWEBのように行の折り返しが読む人の設定に依存している場合は様式と内容を一体に作り込むことはできない。ゲームとかCGになるとキャラクタの形状定義データと背景とはバラバラでそれらを個別に操作し合成しながら視覚表現するようになる。情報のデジタル化とともに、情報伝達においてもバラバラの要素を扱うことが増えていく。
つまりデジタルコンテンツというのは、要素ごとのバラバラのデータからなり、それらを組み立てるための関係付けの情報、時間軸に並べる情報、が別にあり、バックでコンピュータがそれらの情報管理をしている。この処理の延長でメディアの付加価値を増大させることができる。CMS(Content Management System)あってこそのデジタルコンテンツであるともいえる。
例えばデジタルコンテンツで有料ビジネスをする場合に、デジタルはコピーしても品質が劣化しないので、コピーが増えて元が売れなくなるという話をよく聞き、コピープロテクトの技術開発もあるが、それはイタチゴッコである。むしろコピーは自由にできるが、暗号化されていて、正規の利用者しか扱えないような利用管理の技術に焦点が移りつつある。
この場合にメディアを大量生産してばら撒くだけでは利用管理は実現できず、チケットやトークンの購入など利用者一人一人とどこかでやり取りが必要になる。これはネットワークが未発達の場合は不可能であったが、大多数の人がインターネットやケイタイを使えるようになって、現実味を帯びた管理方法になりつつある。
そもそもデジタルコンテンツはバラバラの情報をCMSで管理するものなので、その処理の中に利用者の管理ももたせて、各利用者にパーソナライズできるようにすれば、使いやすいメディアにでき、メディアの付加価値も高めることができると期待されている。
「通信&メディア研究会会報194号」より
2005/06/03 00:00:00