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目の前が開け,自信につながった時

◆小池 真樹

今の会社に入って5年ほど経ちます。印刷を知らず,プリプレスだけを学んでこの業界に入りました。当時で言う「3種の神器」Illustrator,Photoshop,QuarkXPressを3カ月ほどスクールで学んで転職しました。
DTPは人気があり,実務経験のない私がこの業界に入れたのはとてもラッキーなことでした。
しかし配属されたのは,カラーもの,デザインものとはほど遠い,モノクロ大量ページ組版をいかに効率良くさばくかに力を入れた開発部署でした。プログラム,自動組版,データベースなどに早くから取り組み,商品化することを目標にして私の新生活が始まりました。
とにかく何も知らない中,しかも初めてのWindows環境で,大量ページ組版を得意とするレイアウトソフトのAdobe FrameMakerを覚えました。Windows特有のファイルの階層やドライブが理解できず,そこにLANも入ってきて……??と頭の中が大混乱したのをよく覚えています。

会社から「DTPエキスパート認証試験」の話が来たのは入社2年目ごろのことです。制作部としての仕事もこなしながら,新しい物件にも挑戦していたので,まずは模範となって会社に刺激を与える目的で,半ば強制的に初受験を体験することになりました。
結果は惨敗です。
その後,毎年の成長目標に「DTPエキスパート認証試験取得」とうたっていたものの,再挑戦には2年間のブランクを要しました。やはり,あの試験時間の長さは恐怖でした。
それからの再挑戦までの2年間は,私にとって転機になり,そしてとても充実したものになりました。

後輩もでき,印刷物以外にもHTMLやPDFの納品が増えてきました。そして,3カ年計画だったXML自動組版の受注が実現し,研究年報や大学の講義要綱を自動組版で行いました。
毎日忙しく,充実してはいるのですが,何か物足りないというか,腑(ふ)に落ちない状態でした。理解半分で仕事をしているのと,どこかでコンピュータに対する苦手意識があったのだと思います。
そこで,残業するより勉強するしかないと思い,1年間会社帰りにスクールに通い,パソコンの仕組みやファイルシステムなど基本的なことからネットワーク環境,データベース,プログラム言語,HTMLなどを学びました。今までは,理解をせず作業手順だけ丸覚えでやっていたり,既存物件の修正しかできなかったのが,ちょっと基本を学べたことですごくクリアになり,目の前が開けた感覚を覚えました。
私は不器用なため,このような方法を取りましたが,ちょっとしたきっかけでモヤモヤが取れて自信につながり,多少難しい仕事を任されても,自力で調べたり勉強してできるようになったので,とてもいい経験をしたと思います。

遠回りしましたが,ようやく「DTPエキスパート認証試験」の再受験の決心が固まり,直前の過去問題では平均90点を取れるほどになっていました。今度は落ちるわけにはいかない,社内で最初の合格者にならなければというプレッシャーに押しつぶされそうになりながら,何とか合格することができ,今や毎回挑戦者が現れ,現在では10人のDTPエキスパートがいます。このように,けん引できたことをうれしく思っています。
もちろん合格しなくても,このために勉強したことがとても意義があることだと思いますし,社内全員がDTPエキスパートの知識をもっていれば部門間での話しもスムーズで,お客様にとっても頼もしい存在になれると思います。でも受かった時の喜びと達成感はぜひ味わってもらいたいです。
今は勉強したことを私生活でも役立てようと,60冊以上の愛読書を内容から検索できるデータベースを趣味で作っています。社会人何年生になっても勉強することを忘れず,日々精進していきたいと思います。

 

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2005年6月号


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2005/06/02 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会