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もっと社会的責任意識を持つべき環境対応

環境問題に対する行政からのアプローチはますます厳しくなっている。業界団体としては、各企業の取り組みを促進するために、環境優良工場の表彰やネットによるISO14000の認証取得機会を提供してきているが、業界の取り組みは全体としてはまだまだ不充分である。
取り組みには斑模様が見られる。地方の企業は積極的に取り組んでいるところが多いが、大都市部での取り組みがもうひとつである。ISO認証取得への取り組みでは、全印工連全体としては300社ほどあるが、東京での取り組みは数十社に留まっている。地方の場合には、取引先として官公庁が多いために、行政のグリーン調達への対応が都市部以上に意識されるという状況があるようだ。

また、オフ輪保有企業とそうでない企業にも取り組みの差が見られる。最近は、VOC(揮発性有機化合物)の規制が厳しくなってきており、印刷業界にも現在の水準の30%、年間150万トンの排出量削減目標が出された。最も大きな影響を受けるのはグラビア印刷だが、当初は平版印刷も対象となっていた。しかし、行政との話の中で、平台の平版印刷機は対応除外にするように要請して了解されたが、オフ輪は対象として残された。このようなこと以外に、オフ輪保有企業は企業規模が大きいということもあって環境問題にはしっかり取り組んでいる企業が多い。

それに対して平台のオフセット印刷機のみの企業の取り組みは少ない。しかし、PRTR法(Pollutant Release and Transfer & Register)出てきて湿し水中のイソプロピルアルコール濃度にも規制が設けられるというように、環境に対する規制は厳しくなることはあっても緩むことはない。製本関係では難細裂化ホットメルトの利用もより強化されるし、UVインキのVOCなど、現時点では裾切りによって規制は免れているものの本来対応しなければならない課題は多い。今年は、国のグリーン調達の内容として「CTPを使うこと」という言葉も出てきた。

環境問題への取り組みは、損得だけの問題ではなく、企業として社会的責任を果たすことが基本である。また、その取り組みは、できるところから一つひとつ取り組んで継続していくことである。
当初は、電力や資材の無駄を省くこと、あるいは工場環境の改善から取り組むことになるが、それらを10%程度削減することができる。リサイクル分別による収入といったプラスもでてくる。重要なことは、それらが成り行きのまま放置されるのではなく、管理担当者が意識してきちんと処理されるようになることである。

いま、組合として取り組んでいるのがインキの1キロ缶の問題である。インキの残肉がかなり入って缶を家庭ごみと一緒に捨ててしまう企業がかなりあるが、印刷業界の社会的責任という観点から問題である。組合としては、廃紙回収業者に缶を回収してもらい、少なくともゼロ円回収を目指す方向で進めている。しかし、少なくとも残肉の塊は除去してもらうことが前提である。費用を払えばいいということではなく、リサイクルに貢献することを当然のことして行うような印刷業界であってほしい。
印刷組合として、より多くの企業に環境ISOの認証取得を勧めているが、グリーン調達基準をクリアーするといったことだけではなく、その取得によって経営者、従業員の意識が変わって継続的な環境対応への取り組みができるようになると考えるからである。工場周辺の植栽を進めて周囲から評価されるということも、意識面でプラスになる。
環境問題は、規模の大小を問わず、物を作って商売をしている企業の社会的責任として、経営者、経営陣がもっと意識して取り組むべきである。

(「JAGAT info 2005年7月号」より)

2005/07/03 00:00:00


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