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学参のエキスパートとしてデジタルワークフローを追求

テキスト&グラフィックス研究会メンバーレポート)

株式会社明昌堂は,昭和41年に設立された学習参考書および関連書籍(以下,学参物)の組版を得意とする会社である。当初は,手動写植からスタートし,その後時代の流れに即して電算写植,DTP・フィルム出力へと進化してきたと言う。本社は,東京都大田区にあるが,生産拠点となっているのは新潟県南魚沼市にある新潟支社である。
現在の主要業務は,雑誌・書籍などの出版物のデザイン・レイアウトとデータおよびフィルム出力である。写真のスキャンや画像修整,図版の制作もおこなっている。本社には営業部門とプリプレスの工程管理部門,校正出力とフィルム出力の部門がある。新潟支社には,デザイン・レイアウトおよび図版などのデータ制作をおこなう部門がある。本社には約20名,新潟支社には60名弱の従業員がいる。学参物を中心に,さまざまな分野の雑誌・書籍を扱っている。
制作部長・営業部次長の佐藤敬一氏と制作部管理課課長の増田勇二氏に同社のこれまでの取組みと研究会参加の意義について,お話を伺った。

制作部長・営業部次長 佐藤 敬一 氏
制作部管理課 課長 増田 勇二 氏(写真)
学参物への取り組み(写植業からDTPへの進化)

株式会社明昌堂は写植業から始まった会社で,当初から学参物を中心に取り扱っていた。その後,時代の流れに即して手動写植からリョービ製の編集機,DTPへと進化していった。DTPが世間に注目され出した頃,MacintoshとQuarkXPress等のアプリケーションを導入し,徐々に中心的な編集システムとして移行していった。フィルムセッターも導入し,フィルム納品へと進んでいった。

DTPに移行した当初から,QuarkXPressによる学参組版に取り組み実現していった。学参では,国語や古文,漢文などの縦組みもすべて,QuarkXPressにて編集レイアウトをおこなっている。また,数式組みも得意である。特殊なXTensionはできるだけ使用せず,アンカーボックスを駆使するなど工夫している。写植時代から培った学参組版に対する経験とノウハウを,QuarkXPress上でも実現できるようにさらにノウハウを重ねたことで,DTPによる学参組版を確立したと言えるだろう。
以前は写植メーカーの専用システムによって学参物の編集レイアウトをおこなう印刷会社が多かったが,最近は少なくなっている。DTPでこなすところは多くないので,他社との差別化になっている。

主要得意先が大手教育出版社であり,参考書や問題集などが得意分野であるが,その他に旅行ガイドや一般書籍,ムック,雑誌など出版印刷のさまざまな分野に取り組んでいる。
また,製版用スキャナが6台あり,写真集を手がけることもある。しかし,現時点ではデジカメデータ入稿が5割程度に増えている。RGB/CMYK変換については,専用ソフトを評価・検討しているところであるが,現時点では自動化することは難しいと感じている。

現在,新規に受注した業務は徐々にInDesignで制作をおこなっている。InDesignは,日本語組版機能が非常に充実していること,PDF出力やその他のアプリケーションとの連携にも優れており,将来性もあることから,徐々に移行したいと考えている。

新潟支社とのコミュニケーション

支社のある地域は,ADSLしか使えない通信環境である。したがって,大きなデータの送受信はしていない。商業印刷ではなく出版物が中心であり,ある程度まとまった分量を期限内に作成すれば良いので,それほど影響はない。
また,ある程度の規模の出版物については,責了以降の時点で支社の制作担当者が東京本社に来て,仕上げをおこなうこともある。制作内容が複雑で細かいことも多く,品質レベルを上げるために,このような対応をおこなっている。
教育面では,たとえば新規採用時に数ヶ月間東京で研修することもある。業務の全体工程を知ってもらうこと,人的な交流面でも,たいへん効果的である。

研究会参加の意義

テキスト&グラフィックス研究会に入会したのは,1年数ヶ月前である。DTP,文字処理関連の情報収集が目的である。ミーティングやセミナーにも出席したいが,なかなか時間がとれずあまり出席していない。
会報はよく読んでおり,気になるところはマーキングして回覧している。特に,InDesignやデジカメ入稿関連の情報に注目している。昨年,中国上海でのDTP制作についてのレポートがあり,興味深かった。画像のキリヌキ作業など,日本語を使う必要がないので将来増えるかもしれないと思う。
JAGATのWebサイトの情報も参考にしている。

人材教育

書籍と組版レイアウトについての基礎知識,社内標準ルールを社内向けにマニュアル化している。組版技術が一番の強みであるので,徹底的に教育している。また,支社の社員をなるべく機会を作って東京に来るようにしており,全体工程を理解させるように努めている。ただ,自社内に印刷・製本はないので,その部分は知識が少ない。本当は印刷や製本まで,見る機会を作りたいと思っている。
DTPエキスパート試験は,会社としては取り組んでいない。現時点では組版からフィルム出力が中心であり,社内教育である程度の知識レベルを保持している。むしろ営業部門の教育のためには向いているかも知れない。

今後に向けて

増田課長に今後の展開について伺った。
「従来はフィルムによる納品が主流であった。徐々にCTPを前提とした仕事が増えており,データ納品と変わっていくだろう。当社の強みは,学参など難易度の高い組版レイアウトの出版物である。この分野では,常に高い技術力で対応することを守っていきたい。DTPアプリケーションや扱う機器が変わっても,これは変わらない。」

2005/07/16 00:00:00


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