JDFというと、CIP3における印刷機のプリセット情報を発展させたCIP4とか、オンラインの作業指示とか、生産データの集計とかを連想する場合が多いだろう。印刷機を使ってモノを作っている以上、工場の生産性向上は永遠の課題であり、ネットワーク社会では当然IT側の技術革新に対応し、かつMISのような経営管理と連動できるJDF/CIP4のような形で工場内の情報管理システムが進化していくことは間違いない。
しかしJDFは工場の生産性向上だけではなく印刷の営業のスタイルをも変えようとしている。それは印刷物は単価が安いだけが勝負どころではなく、発注の受け付けや納品のタイミングも重要なサービスのひとつだからだ。このことがどれくらいサービス価値を高めるのか、競争力になるのか、または印刷会社の戦略にするのかは、あまり議論がされていない。
例えば商業印刷物の発注者はまず、印刷物をある長い期間の使用分まとめて発注するか、短い期間ごとに小分けして発注するかという判断をしなければならない。当然多部数まとめた方が単価は安くなるが、その間は印刷物に記された情報の更新はできない。だから部数を多くした方が発注者=印刷物を配布する人には不便を強いる場合がある。
パッケージ印刷物などは、パッケージに入れるべき中身の生産計画に沿って印刷物も納品して欲しいと考えているだろう。このようなリピートオーダーの印刷部数最適化は、印刷工務にとっては悪夢でもある。小ロットの工程がいっぱい入ってくることは工務が工程を組立てるという仕事の生産性を下げるからだ。
JDFではそういう工程設計のデータも実績のデータも格納できるために、どの仕事をどのようにやったかというワークフローを保存できることになり、再度注文が来た時にはうまくいけば以前に作った全く同じワークフローが使えるか、あるいはそれをベースに手を加えて工程の設計から指示までが容易に行えるようになる。
また印刷物の量は発注先の仕事の盛衰で変わるもので、相手のビジネスが伸びている時には次回のリピートはもっと生産量的に対応できるものを想定し、逆の場合には小ロット化でも割の合う方法に切替えなければならない。このようなリピートのシミュレーションもできることが望ましいが、今は工務の人手をそんなことのために割くことができない。
仕事の増減をリアルタイムに捉えて、先回りして生産方法の改善や外注先選定などの見直しをするような工務の戦略化ということが、工程設計のルーチン化の先にはあるはずだ。これをみておかないと、今オンデマンド印刷でしていることがオフセット印刷に変るタイミングを捉え損なったり、オフが減る時にPODで受け皿を用意することができないからだ。印刷手段の多様化に合った工務に変るためにもJDFは必要になる。
テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 2005年7月号より
2005/07/25 00:00:00