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JGASに見る印刷業の環境対応の動き

環境関連の法律、規制遵守のために環境対応諸資材を使う動きは、再生紙の利用から始まり、以降、VOC(揮発性有機化合物)への規制やPRTR法(化学物質排出把握管理促進法)の施行に合わせて、印刷インキでは大豆油インキの利用、次いでVOC含有ゼロのインキの利用拡大と推移してきた。JGAS2005での出展を見ても、大豆油インキを前面に出す企業はなくノンVOCが標準品のような状況にある。
PRTR法に対しては、当初は湿し水に含有されるIPA(イソプロピルアルコール)を使わないという方向で湿し水の新製品が発表されてきた。JGASでは、湿し水に使われているVOCをゼロにした湿し水も参考出品された。UVインキ洗浄剤でVOC、PRTR法対応を謳った製品も出されていた。

一方、ここへきて水なし平版への関心が高まってきている。いろいろな環境対応製品がある中では、より強く顧客にアピールできる手段の方がプラスが期待できる。水なし平版については日本WPA(Waterless Printing Association :URL:http://www.waterless.jp)が発足し、メンバーにはそれを使用している証として「バタフライマーク」の使用を認めている。このような手法は大豆油インキの場合と同様に顧客へのアピールの点で有効なようだ。JGAS 2005では、水なし平版用のノンVOCインキをアピールするメーカーが多くあった。

再生紙、大豆油インキと変遷してきた環境対応材料利用の流れは、ひとつの形として水なし平版、ノンVOCインキ、再生紙を3点セットとして顧客にアピールするところにきた。この3点セットはそれなりに顧客にアピールして受注面で効果があるようだ。ここで興味深いことは、そのようアピールをしている印刷会社で使われている印刷用紙銘柄がかなり絞られていることである。各メーカーから再生紙として出されている紙が限定されているからだが、それが結果的には使用印刷用紙銘柄を限定することになり、環境対応以外のメリットをもたらしている。

日本グラフィックコミュニケーション工業組合連合会は、JGASにおいて同組合が主管団体となり、(社)日本グラフィックサービス工業会と製版印刷材料メーカーの協賛を得て、「環境保護印刷推進業議会(E3PA:http://WWW.e3pa.com)の発足と「環境保護印刷マーク」交付の認証登録制度を発表した。ノンVOC対応と廃液、排水におけるゼロエミッションを促進するために、「VOC使用ならびに廃液・排水について定められた基準を満たし、所定の審査に合格した印刷会社を認定し、オフセット印刷に関する営業およびその営業に関わる印刷製品に、マークの使用を認める」というものである。

認証基準として「刷版処理液に含まれるVOCが1%未満」、「湿し水の廃液を回収、焼却」、あるいは「刷版現像液を使用しない」というように、VOCや廃液・排水処理に関する材料の使用、使用設備あるいは各種処理について16項目を定めている。これらの基準は「各種印刷サービス グリーン基準」との整合性も考慮したものであるというが、認証においては3ランクの基準が設定されており、どのランクの対応がなされているかによって、「SILVER」、「 GOLD」、「 GOLDプラス」という異なる認証を付与することになっている。
「環境保護印刷マーク」の認証を受けたい企業は認証申請書を協議会に提出し、所定の審査を受けて認証された場合には認証番号を付与されて認証登録簿に記載され、同時に登録料を支払うことになる。

認定基準を提示することで、ある範囲での具体的な環境負荷軽減達成を促すとともに業界団体認定のマークを付与することによって顧客へのアピール効果も狙った制度である。
ちなみに、JGASでは、同制度の協賛メーカーである富士フイルムグラフィックシステムズ鰍ェ上記基準を満たす製品を一括して展示していた。

(「JAGAT info 2005年11月号」より)

2005/11/03 00:00:00


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