IPEX93でインディゴ社E-PRINT1000やザイコン社クロマプレスが登場してから、はや10余年が過ぎた。モノクロではそれ以前からゼロックスのドキュテックがあり、印刷機ではハイデルベルグ社GTO-DIも小ロット・ショートランに使われ始め、その頃からPODやオンデマンド印刷が大きな話題になった。しかし新たな技術に対する関心や、こういうことが出来るはずだということで、プロトタイプ的なソフトが作られたが、それがそのままストレートにビジネスになることは少なかった。
つまりPODの最初の10年はプロダクトアウト的なフェーズであって、技術的可能性の話や、従来印刷に比べてのPODのシェア目論見など、サービスプロバイダの今後のビジョン的なものが検討されて固まっていった時期であったといえる。しかし残念ながらというか、マーケット側にはそれほど真剣に考えてもらえなかったかもしれない。それはPOD側のサービス開発が不十分で顧客に満足度の高い提案をできなかったという面もあろうが、マシンの方も性能・価格ともに、まだ見ぬマーケットに合わせることは難しかったようだ。
そんな悪条件の中で、グラフィックアーツ業者の中では、有意義な経験を積んで次ステップを画策するようになったところと、PODから撤退するところに分かれた10年であった。全体的には気持ちが退いてしまった感がある。この間にPODでがんばってきたモデルは、CANONのPixelDioのころからあった結婚式場アプリなど古典的なものが多い。しかし日本でもオンデマンドプリンティングのアワードの応募社などを見ていると、第2ラウンド目の試みをして再応募するところも出てきていた。
がんばってPODで食いつないでいるうちにPODの環境は大きく変わりつつあり、今までの硬直状態の均衡は破れそうになっている。21世紀に入ってから、電話など大規模契約者を抱えるところの利用明細や、近年のクレジットカードの明細書など、バリアブルプリントには弾みがつき、トランザクションから広告メディアへと位置付けも変わっていった。またネットワークの進展で社会全般に個人情報保護・コンプライアンス・セキュリティなどの意識が高まり、かつてのように安直にOneToOneなどを語れないようになった。
出力装置も10年たつと状況は大きく変わり、パフォーマンスも品質も飛躍的に伸びた。インクジェットの高速機も先行するVersamarkを追っていくつもの選択肢があるようになった。またヘッドのユニットを柔軟に組み込むものも増えている。枚葉/連続紙、フィニッシング、いろいろな面で多様化し、考えるべきは点は多くなっている。どうもPODはなにもかもがもう一度考え直すところにきているのではないか。
2005年12月14日(水)に開催されるJAGAT トピック技術セミナー 2005では、JGASで注目を集めた大日本スクリーン製造のフルカラーバリアブルインクジェット印刷機「Truepress Jet520」や、印刷もハイブリッド時代で紹介したキヤノンファインテックの印刷機システムに組み込むインクジェット方式のプリントモジュール、その他最近のPOD製品をマーケット側の視点で一望するトッパン・フォームズからのプレゼン、イー・エフ・アイの印刷とプリントの両方にまたがるワークフローなど、日本を除く世界的には盛り上がっているPODの確実に進展している状況を知ることができる。
2005/12/01 00:00:00