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インターネット広告の最前線

既存の広告メディアが伸び悩む中で,今インターネット広告が伸びている。電通総研の試算によれば,2009年には5000億円を超える市場となり,5年間で3倍以上に成長する見通しである。2004年のインターネット広告費は1814億円,前年比53.3%増を記録し,2005年は2722億円,同50%増が見込まれる。その中でモバイル広告費は2004年の180億円から,2005年は300億円,2009年には775億円と予想されている。

モバイルマーケティングの現状

モバイルビジネスの柱は,課金,広告,コマースの3つである。最近急成長しているコマースは,今年に入ってから出てきている。先日,NTTドコモと楽天が会社を作ると発表したように,各企業ともこの分野に力を入れていて,KDDIも同じようにモバイル上でコマースをしようとしている。
インターネットと同様無料のため,広告により収入を確保しコンテンツをユーザに届ける。また有料コンテンツを提供するコンテンツプロバイダーは,今は値引き合戦のため,その収入減を補うために広告ビジネスを考えているところが多い。

モバイル広告は,大きく,広告メディアとソリューションに分かれる。広告メディアの中も,ユーザが見に行くプル型と,勝手に送られてくるプッシュ型に分かれる。ソリューションは,印刷物も含めてクロスメディアに関わるいろいろなメディアと連携するためのツール群である。

今のモバイル広告は,インターネットと同様なことができ,Flash,動画像,メールも送ることができる。モバイルにはキャリアがメニューに載せる許可をした公式コンテンツと,自分たちが自由に作る一般サイトの2つがある。
販売手法として,インプレッション保証型は広告となる文章や画像が何回表示されるかを保証するパターン,掲載期間保証型は回数に関係なく1カ月間はずっと月末まで出すパターン,成果報酬型はクリック保証というパターンである。表現手法は,インターネットと同じことができるが,画面が小さいので精度の高い,もしくは容量の重いものはできない。

モバイル広告の種類

ル型の広告メディアでピクチャー型と呼ばれるのは,いわゆるバナー,横長のものである。右側に「CLICK!」が付き,インターネット広告推進協議会の標準フォーマットで,広告を示すルールとなっている。ディーツーコミュニケーションズ(D2C)では,去年12月から携帯電話向けテレビ番組表サービス「Gガイドモバイル」を開始している。ドコモの第3世代携帯機種(FOMA)に標準搭載されているアプリによるサービスで,番組表の下に広告スペースを設けている。

同じくプル型の広告メディアでコンテンツ型と呼ばれるものとして,D2Cが企画・運営するサイト「とくするメニュー」がある。どのキャリアにも「とくする何々」というものがあり,それぞれドコモ系,KDDI系,ボーダフォン系に,キャリアレップという広告代理の販売店があり,そこで共通規格として作っている。「とくするメニュー」に出せる原稿を作れば,そのままほかのキャリアに原稿として流用できる。

プッシュ型の広告メディアは,普通のメールである。最近迷惑メールは減ってきたが,メール広告はダメージを受けてしまった。そこで出てきたのが,受信料無料で専用フォルダに届くNTTドコモの「メッセージフリー」である。ドコモ以外のキャリアにはない仕組みで,Webと同じように絵を付けて送れる。フォルダが違うところにあるので,迷惑メールとは混じらない。

ソリューション系のダイレクトアクセスツールには,QRコード,空メールなどがあるが,D2Cが提供しているのが「とくナンバー」である。3キャリア以外にも広げてヤフーとも提携し,PCからも利用できる。携帯電話は,キーボードと違い打ちづらいため,URLではなく代わりに数字を入力する仕組みがある。プル型コンテンツの「とくするメニュー」のところに「とくナンバー」の入力口があり,そこに番号を入れるとそのままクライアントのページに飛ぶ。2次元コードは,カメラを起動したり読み取りをしたり操作が大変だが,これは普通にキャリアのサイトメニューから入って数字を打つので,ステップが少なくて済む。
また,ソリューション系では,キャンペーンのプレミアムとして提供する着メロや着うた,アプリなどがある。D2Cでは,今年4月からNTTドコモの携帯電話料金に適用できるデジタルプレミアム「ドコモコイン」のサービスを開始した。

インターネット広告の現状と特徴

インターネット広告が伸びているのは,インターネットの普及率自体が大きな要因になっている。世帯への浸透率が80%を超えた今,広告メディアとして一般的にも浸透し,メディアパワーも現状のマスメディアに劣らないようなパワーをもちつつある。こういう状況がインターネット広告の増加に寄与している。
さらに,インターネットに対して,各ユーザがどれだけの時間接しているかがある。インターネットはテレビを除けば,各年代で性別を問わず,非常に接触率が高いメディアになりつつある。

また,最近では単純に調べ物をするだけでなく,テレビCMや番組に出た物・人・情報について,その後ネットで検索するという状況も増えている。テレビや新聞のようなメディアの使い方とは別に,インターネットは能動的にユーザが情報を得るためのリソースとして伸びているようだ。このように,インターネットおよびインターネット広告は,非常に認知され,かつ規模も増加している。

インターネット広告は,どういう活用目的,可能性をもっているのか。大きな特徴としては,スピーディでかつインタラクティブがある。また明確なターゲティング,セグメントが可能である。さらにダイレクトで,そしてシームレスである。例えば,見て,申し込みをするという動きまで,インターネットでは一連の動作で行うことができる。
さらに,マーケティングデータとして,単純にテレビや新聞で広告を打つだけでなく,インターネットの場合は広告の出稿後,広告が何回表示され何回クリックされ,ホームページに何人誘導し,何人申し込みがあったのかまで,すべて後々データとして取ることができる。
以上が,インターネット広告が伸びている要因であり,特徴的な点でもある。

プロモーションのフローは,Web広告,メール広告,検索エンジン広告といった手法からクライアントのECサイトに飛んできた後,例えば,メールマガジンやポイントの会員になってもらい,会員データベースを集めた後,メールマガジンを配信したり,ホームページ上にユーザが気に入りそうなコンテンツを用意し,頻繁に来てもらう仕組みを作る。接触回数を増やした上で,最終的に購入に至る。このように一連のサイクルで行うのが,現状のネットプロモーションでのフローである。

今インターネット広告で注目されているのは,特にリスティング広告とアフェリエイト広告である。リスティング広告は検索エンジンを利用するため,キーワードを登録し,そのキーワードが検索されると広告が掲載される手法である。アフェリエイトプログラムは,成果報酬型の口コミのような仕組みで,買った人が商品の評価などを自分のホームページに掲載し売れた場合,紹介してくれた人にインセンティブを払うような仕組みの広告である。このように仕組みはいろいろだが,どのレベルでターゲティングを考えるか選んで利用されている。(通信&メディア研究会)
出典:社団法人 日本印刷技術協会 機関誌 JAGAT info 2005年12月号

2005/12/17 00:00:00


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