PAGE2006の2月1日のA2セッション「自動文書生成のフロー」 は、多ページの商品カタログの制作を自動組版しているデジタル・アド・サービスの松田孝氏と、医薬品申請や製造マニュアルなど何万〜10万ページの文書を自動的にまとめあげるデータデザインの深澤秀通氏、同じく医薬品申請の多量文書をXMLで再利用・再編集するディジタルメディアシステムの江本博治氏の3氏で行われた。タイトルの「文書」という言葉からして、今のDTPの世界からは違和感をもたれるかもしれないが、ある意味ではオフィス文書の世界と強引に結びつけたセッションでもあった。(その理由は後で説明)
最初に松田氏は現場の事例を通して自動組版がうまくいかない理由を説明した。かつてはテンプレートに自動的に流し込んでページを発生させることをデータベースパブリッシングと呼んでいたこともあったが、今もそのときとほぼ同じ状況だ。以前も「データベース」とはいってもノーマライズされた(校了で動かしようのない)データがあるのではなく、手書き原稿をExcelとかRDBに入れた程度のものだったり、レイアウトパターンのルールが不十分だったり、あるいは商業印刷にありがちなレイアウトと原稿が相互に関係し合うなどの理由から、自動的に流し込んだ後に通常DTPのような修正がつきまとった。松田氏のカタログコンポーザのアプローチは、完全自動化を目指すのではなく、繰り返し作業の多い部分のみに自動組版を適用させるもので、現実的だ。
自動組版のための前提がすべて揃っている場合については、それがどのようなものかを説明する必要はないだろう。うまくいくはずだから。しかし現実は前述のように自動化が困難なところがどこかにあるのでそこは避けて、かける労力に見合う対価がいただけるか、あるいは今後のリピートオーダーでコストダウンのメリットがでるか、などのバランス判断が問題である。平たく言うと、システムの能力を知って無理をしないで使うという運用のコツのような話だ。実はPAGE2006の出展でもさまざまなレベルの「自動組版」がでていて、結局はシステムの能力によって自動組版のレベルが変わり、どの自動組版がよいかという問題ではなく、使う人のシステムに対する理解力に応じて選べばよいので、システムを比較しても意味がないともいえる。
ただこんな話をしていては、いつも振り出しに戻ってしまう。松田氏はコストダウンだけでは面白みがないし、ニッチ戦略としては販促効果を考えていくべきだと話した。また自動組版にともなって作業管理をPC/netで行うことが全体最適に貢献するとも話した。自動組版に必要なルールの明確化やデータのノーマライズは、客の作業を増やすとか、印刷側がルール化やノーマライズをしても対価がもらいにくいなど、自動組版の前提条件を作るところが綱引き状態で、どっちにひっぱっていっても全体では同じようなものに見えてしまう。
一方医薬品申請書類では、申請が1週間遅れると発売が半年遅れて、売上何億円の機会損失になるので、10万ページをまとめるシステムが少々高くても必要になることを深沢氏は話した。医薬品開発にいたるまでは期間も長く、文書作成はいろいろな部署でMicrosoftOffice類で作成されている。以前ならワークステーションなどを使った文書管理システムの出番であったろうが、そういう専用システムはすでになくなった。それで今はWordなどで様式を決めて、Wordのバージョンも揃えて使っているという。ここでも結局はルールが明確になってちゃんと適用されているかどうかが課題である。専用システムであったら一貫した文書管理ができるかもしれないが、Officeでは管理の徹底化は難しい。そこですべてPDF化して、見た目だけ合わせてしまって何千ページでも電子的に「製本」して1文書のようにしてしまうようだ。
江本氏はそういった何千ページの文書が何十冊あるような多量ドキュメントの中を検索する仕組みとして、PDFでもXMLでデータベースのようにしてしまい、また情報の差し替えなど再編集もその段階で行う文書アーカイブシステムの話をした。これらから結局発注者の側でも文書について一元的なデータベース管理がされる様子はなく、情報を関連付けて使うにはXMLということになる。元の自動組版の話に戻って、流し込むためのデータの準備は、商品マスターなどデータベースからくるもの、さらにWEBのCMSや企業内文書であるWordやExcelから抜き出してくることになるのではないだろうか。
つまり自動組版の段取りとして受発注で綱引きになる分野自体が今、変わろうとしているともいえる。広告、番組表、イベント、人材情報、その他いろんな業界でそれぞれ情報交換のために何々MLというのが多く開発されているが、自動組版の主たる対象である分野においては、カタログや製品仕様などもそういうタグで情報交換する方向も考えられる。それで自動組版が一挙に解決するわけではなく、データのノーマライズという前処理が行いやすくなるだけだろうが、受発注どちらにとってもコストが軽減できそうなデータ交換の約束事に持っていくような努力もしてみるべきだと思った。
2006/02/04 00:00:00