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デジタル印刷の今後の展開

印刷産業は2000年以降マイナス成長が続いているが,デジタル印刷およびオンデマンド印刷は,成長分野である。PAGE2006コンファレンス「デジタル印刷の今後の展開」では,各社の事例を通じてデジタル印刷の現状と課題について,主に印刷会社の立場から議論をおこなった。


資料マイクロにおけるデジタル印刷

資料マイクロは,1973年設立で,従業員95人の会社である。元々は電力会社のマイクロ写真,図面複写業務をおこなっていた。1995年にindigo E-print1000を導入し,電子ファイリング業務と図面のデジタル印刷を行うようになった。図面の印刷だけでは機械が空いてしまうので,新規顧客を開拓し,名刺やパンフレットの印刷を行うようになった。2004年にはHP indigo press3050を導入し,さらに,2006年には千代田営業所を開設し,HP indigo press5000を導入する予定である。小回りのきく体制と提案力で新規開拓を行い,500事業所ほどの顧客がある。

個人情報保護への取り組みをおこなっており,近々プライバシーマークを取得予定である。図面や個人情報など機密性の高い業務を行っており,情報の漏洩や改ざん等にも注意を払い,対策している。

文理のオンデマンド出版

文理は,小学生,中学生,高校生用の学習参考書を出版している。主力商品として,書店で個人向けに販売している店売学習書の他に,学習塾や学校の先生向けの採用教材がある。少子化の影響や塾業界の発展で,採用教材の比率が年々高くなっている。2000年より,東京書籍印刷の協力で,採用教材のオンデマンド出版を始めた。

データベースには,約5,000講座,2万ページの問題がある。注文に応じてTexで自動組版し,オンデマンド印刷,インライン製本,発送となる。注文から4,5日後には顧客の手元に届くようになっている。サービス開始から,受注件数,受注部数,ページ数とも順調に増えている。
2005年11月より,さらに「オンデマンドオンライン」としてWeb上での受発注を開始した。従来は,FAXで受注センターが受付け,入力業務をおこなっていた。ブロードバンド環境が普及し,Web発注も抵抗なく受け入れられるようになったことと,24時間受注が可能なことがメリットである。

東京書籍印刷では,文理向けの業務を通して,Total On-Demand Publishingシステムとして,自動組版,個品工程管理など,なるべく人を介在させない仕組みを構築した。
2003年には,オンデマンド事業部を発足させた。文理の仕事は,昭和情報機器の連続紙タイプのデジタル印刷機を使用している。その他に,大日本スクリーンやコダックのモノクロ機や富士ゼロックスのColor DocuTech,ホリゾンの小型の無線綴じ製本機等がある。他に,大容量のクラスターサーバーなどがある。
注文の受付から組版,印刷用データ作成まで,人が介在せず自動化されている。印刷データが印刷機に登録されると,オペレータが部数をセットするようになっている。人が中身を見るという検品は一切していない。連続紙の印刷機を使っており,落丁や乱丁は印刷機内でチェックされている。バーコードで数を管理しており,人が数えるということをせずに保証する仕組みとなっている。
 また,Web上で進捗状況や集計レポートなどの情報を公開し,文理の担当者や塾の先生等エンドユーザが見られるようになっている。

「デジタル印刷7つの心得」

モデレータのトッパンフォームズPDMセンター長,三上敦敏氏は,長年のデジタル印刷の経験からデジタル印刷に必要なビジネスマインドを以下のようにまとめた。

従来の営業スタイルは通用しない
従来の営業が駆けずり回るスタイルでは,利益は出ない。ネットを利用するなど,デジタルのメリットを享受する仕組みを顧客との間に構築することが大切。

トータルワークフローの最適化
見積り・受注・データ制作・印刷・加工・納入・代金回収まで,いかに人を使わないか。

ターゲットを絞ることが大切
デジタル印刷のアプリケーションは非常に幅広い。ターゲットを絞って差別化することが重要。

デジタル対応の技術者育成が必須
ネットワーク、データベース、システムなどデジタルに対応できる技術者の育成が肝心。

フルバリアブルはリスクも大きい
フルバリアブルはデータ制作・封入封かんを含めトータルの品質保証が重要。印刷事故を起こした場合,処理費用が受注金額の何倍にもなることがある。

フレキブルな製造体制
オンデマンドに対応するためには時間的制約を排除しなければならない。24時間受注などフレキシブルな製造体制をどのように構築するか。

セキュリティ体制の構築が基本
個人情報を扱う場合にはプライバシーマーク取得が避けられない。データ管理やセキュリティ体制の構築が不可欠。

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2006/03/14 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会