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XML複合文書技術の動向と取り組み

2006年2月3日PAGE2006コンファレンスで開催されたグラフィックストラックの「XML複合文書技術の動向」では,トライデントシステム 鶴岡仁志氏,W3C 石川雅康氏,ジャストシステム 浮川初子氏にWeb新時代のデジタルコンテンツの在り方やXML複合文書技術の動向と取り組みについてお話を伺った。



Web新時代のデジタルコンテンツの在り方

 インターネット上のビジネスモデルは,一方的にパブリッシングやブロードキャストする時代から,ユーザが参加する時代になっている。以前はプッシュやプルというコンテンツの話をよく耳にしたが,時代はもうプッシュでもプルでも双方向でもなく,ユーザ自身が参加するスタイルになっていく。
 例えば,ユーザはメーカーが発信する情報より実際に購入して体験した結果をブログなどで書いているユーザの言葉を信用する時代になっている。また,ソフトウェアの開発ルールがオープンスタンダードになってきている。

 また,情報は企業のものからユーザの手元になる。管理するのもユーザ,それを探し出すのもユーザになるので,こちらからある特定の価値基準を提供する時代ではなくなっている。ユーザが自分の欲しいものを,欲しい形で欲しいという,わがままな時代になる。
 アプリケーションに関しても,以前から言われているように,パッケージで売られる時代からネット配信が常識の時代になる。
 その場合には,ジャストシステム社のxfyのような,全部Javaでできていて,小さくコンポーネント化され,あるプラットフォームにそれが送り込まれる。その特定の機能を使い,使わなくなったらさようならできる。そのような技術は非常に重要になる。

 さらに,オープンな時代でなければならないので,XMLプラスJavaなどの環境で作られるのであれば,それは我々が支持していくべきアプリケーションと言える。
 そうではなく,独自形式のファイルにこだわったり,独自のアプリケーション機能にこだわったりするようなアプリケーションは,市場から退場していくような時代になる可能性がある。

XML複合文書の標準化動向

 XML複合文書には,大きく分けて2形態がある。1つは「参照」型の複合文書でありCompound Document by Reference,略してCDRである。XHTMLにはobjectという要素があり,SVGにも同じようにforeignObject,SMILにも似たようなメディアオブジェクト要素群というものがある。これは,外部のリソースをURIで参照することで,複数のボキャブラリを組み合わせる。これは従来のHTMLに近いので,比較的実現が容易であり,W3CではまずCDRの標準化から進めている。

 もう1つは,「埋め込み」型の複合文書がありCompound Document by Inclusion,略してCDIである。これはXMLの名前空間の仕組みを用いて複数のボキャブラリを直接混在させる方法である。
 この場合,混在させたボキャブラリは1個のリソースとして扱われる。例えば,XHTMLの文書の中にMathMLで数式を埋め込んだ場合には,直接XHTMLの中にMathMLを混在させることになるので,1つの文書中にXHTMLとMathMLが混在する。

 Rich Web Clientアクティビティは,CDFワーキンググループ,Web APlsワーキンググループ,Web Application Formatsワーキンググループからなり,XML複合文書に基づくWebアプリケーション開発を推進している。
 W3Cに関連するアクティビティとして,Mobile Web Initiative(MWI)がある。ここは携帯電話やPDAなどモバイル機器からのWebアクセスに関する諸問題の解決に取り組むアクティビティである。主な活動は,モバイルWebに関するBest Practice文書作成がある。
 また,モバイルに適したWebサイトにmobileOKというトラストマークを制定する動きがある。モバイル機器の属性記述,画面サイズ,色がどれだけ使えるか等の属性記述に関する作業も行っている。

 W3CではRich Web Clientアクティビティを中心に,XML複合文書の標準化に継続して取り組んでいる。Webアプリケーションやモバイルアクセスなど,従来の伝統的なWebブラウジングを超えた分野でもXML複合文書の重要性がますます高まっており,今後も継続してこのような活動を行っていく。

XMLコンテンツの有機的な統合活用を実現するxfy

 一般的にユーザのドキュメントやデジタル情報を扱う中で,オープンオフィスやMicrosoft Office等のアプリケーションの中に絞られた機能で書くというのが,従来のアプリケーションのXML対応であった。
 ジャストシステム社がxfyで目指しているのは,ネイティブなXMLアプリケーションであり,xfyのコアのコアまでXMLを扱っている。ここではそれぞれのボキャブラリをそのまま扱うことができる。それぞれのボキャブラリに必要な処理を追加して,今後増え続けていくであろうXMLの処理を,フレキシビリティに拡張性を持っていけるエンジンである。

 従来のアプリケーションは,A,B,Cのボキャブラリを扱おうとすると,それぞれモジュールがあり,それらをつけた処理系を作らなければならない。
 しかし,xfyではボキャブラリに対して処理系は1個である。A,B,Cを実行するときは,ダイナミックに組み合わせることができる。

 また,XMLボキャブラリの操作を2つの方法で拡張できる。1つは,Javaのプラグイン,もう1つはxvcdというXSLTコンパチブルの言語で既存のボキャブラリにマッピングすることにより処理系を手に入れることができる。XMLオブジェクト自身を使い回して,さらにインクルードしながら書くこともできる。それをxfyが保証するということのアプローチになっている。
 これらの実現のため,xfyはどのようなXMLでも読んだり書いたり組み合わせることができる可能性を保証する。

 XMLでは,再利用性を上げるためXMLをXMLの中に入れていくことを保証していかなければならないが,xfyのエンジンは無制限にネスティングを保証している。さらに編集も可能なネスティングも保証している。
 また,xfyの処理系はすべて1つのソースDOMの中にボキャブラリを持ってくるので,それらの活用局面はシームレスにデータを活用でき,ユーザインタフェースもシームレスに統合することができる特性がある。
 重要なことは,100%Pure Javaで開発しているので,ポータビリティが十分保証されていることである。

2006/03/23 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会